13 / 18
13.夢魔アイドルは甘えたい③
しおりを挟む「零くん、夢魔の力使ったでしょ」
眉間に皺を寄せる遥希の睨みに、零斗はシュルシュルと小さくなる。
只今、都外のコンサート会場でリハーサル中である。
正座をしている零斗に、透矢が寄りかかるように座る。
「それで今日、動き悪いし顔色悪いんだ」
ぐりぐりと首の横を透矢の後頭部が刺さって痛い。
すみませんと言うほかない。
遥希の大きなため息に、零斗はびくりと身体を震わせる。
「誰にどう使ったのか知らないけど、活動に支障が出るのは許さないって、いつも言ってるよね」
「はい...ほんとにごめんなさい」
「ご飯は?」
「満月ちゃんの夢を食べてきました」
「1人に固執するから、回復が遅いんでしょ。...誰か人間の女の子スタッフ、何人か呼んで来て」
遥希の指示に、巳也が探しに行く。
零斗は慌てて立ち上がり、よろめいた。透矢が腕を掴んで転ぶことは回避させる。
「不味いのは食べない方がマシです」
そう訴えるが、遥希から激痛デコピンをくらった。
「いいから、精気だけでも食べろ」
デコピンの勢いで大の字に転がった零斗の周りには介抱と称して、ハーレムが出来上がった。
様々な好みでない味に、零斗は現実逃避を始め、気絶するように眠った。
すっきりしない心は置いておいて、多めの精気摂取のおかげで頭はクリアになり、リハと演出決めは無事終わった。
今すぐにでも帰って満月を直接味わいたいのを我慢して、数日ホテル暮らしだ。
せめて夢だけでもと満月の夢を食べて過ごしたが、あのセクハラ男はあまり出てこなかったので、懲りたのだろうと安心していた。
たまに帰っては家事をこなすツアーの日々が終わり、最終日のコンサート会場近くで打ち上げが行われていた。
零斗は早く帰りたい一心だったのだが、前回も捕まった女のお偉いさんに、絶え間なく飲まされている。
(すでに吐きそう)
顔を引き攣らせながらも、粗相をしないよう努めて、笑顔をキープする。
「私が介抱してあげるから、好きなだけ飲んでいいのよ」
零斗は押しつけられる胸の感触と、独特な女性用香水の匂いの気持ち悪さに、意識を手放しかけた。
もう限界だと、にっこりと彼女に笑いかけ、見惚れさせている隙をついて立ち上がる。
「明日も仕事があるので帰りますね」
女に背を向けようとしたが、手首を掴まれた。
「明日がお休みなことは知っているわ。帰るなら、あなたの家で飲みましょう?じゃないと、これからのアイドル活動...どうなっちゃうかしら」
零斗は青筋の立つこめかみを落ち着かせ、ゆっくりと座り直す。
「あら、お家に連れていってくれないの?」
「スキャンダルは御法度なので」
「残念」
唇を突き出し肩を落とす艶美な女は、こうして気に入った若手に手を出しているのかと、嫌悪する。
その後もグラスが空になるたびに酒が注がれ、朝日によってうすら明るくなる頃にようやっと解放された。
満月からの帰ったというメッセージは4時間も前に届いていた。
零斗は自宅トイレに座り込む。
(...気持ち悪い)
便器に頭を突っ込もうとすると、スマホが鳴った。満月から今日は休みですと、メッセージだった。
了解の返事をして、気合いだけでシャワーを浴びる。
ベッドへ身体を放ると、数時間気を失っていた。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
国宝級イケメンとのキスは最上級に甘いドルチェみたいに、私をとろけさせます
はなたろう
恋愛
人気アイドルの恋愛事情① 国宝級イケメン、人気アイドルとの秘密の恋。長身、イケメン、態度はそっけないけど、優しい恋人。ハイスペ過ぎる彼が、なぜごく普通な私を好きになったのか分からない。ただ、とにかく私を溺愛して、手放す気はないらしい。
甘いキスで溶ける日々のはじまり。
★みなさまの心にいる、推しを思いながら読んでください
◆出会い編あらすじ
毎日同じ、変わらない。都会の片隅にある植物園で働く私。
そこに毎週やってくる、おしゃれで長身の男性。カメラが趣味らい。この日は初めて会話をしたけど、ちょっと変わった人だなーと思っていた。
まさか、その彼が人気アイドル、dulcis〈ドゥルキス〉のメンバーだとは気づきもしなかった。
毎日同じだと思っていた日常、ついに変わるときがきた。
◆登場人物
佐倉 美咲(25) 公園の管理運営企業に勤める。植物園のスタッフから本社の企画営業部へ異動予定
天見 光季(27) 人気アイドルグループ、dulcis(ドゥルキス)のメンバー。俳優業で活躍中、自然の写真を撮るのが趣味
お読みいただきありがとうございます!
本作品の関連作品もぜひご覧ください。ドゥルキスの最年長、アラタの物語です。こちらはBL要素のあるストーリーですが、ちゃんとアイドルと主人公の女の子くっつきますw
「美容系男子と秘密の診療室。のぞいた日から私の運命が変わりました」
【完結】私たち白い結婚だったので、離婚してください
楠結衣
恋愛
田舎の薬屋に生まれたエリサは、薬草が大好き。薬草を摘みに出掛けると、怪我をした一匹の子犬を助ける。子犬だと思っていたら、領主の息子の狼獣人ヒューゴだった。
ヒューゴとエリサは、一緒に薬草採取に出掛ける日々を送る。そんなある日、魔王復活の知らせが世界を駆け抜け、神託によりヒューゴが勇者に選ばれることに。
ヒューゴが出立の日、エリサは自身の恋心に気づいてヒューゴに告白したところ二人は即結婚することに……!
「エリサを泣かせるなんて、絶対許さない」
「エリサ、愛してる!」
ちょっぴり鈍感で薬草を愛するヒロインが、一途で愛が重たい変態風味な勇者に溺愛されるお話です。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる