啼いて僕らは息をする

白雪 鈴音

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禿編

授業

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身を清め、朝食を済ませると僕らは水無月に霜月の部屋に呼び出された。
葵と別れ、霜月の部屋に入ると中には霜月、水無月、葉月が各々の事をしていた手を止め、こちらを見た。

「いらっしゃい。さぁ、そこにお座り?」

優しく微笑みかけた霜月は、僕らが座った手前に用意していたお菓子を置いた。

「霜月。禿をそうやって甘やかすのは辞めろ。後で泣くのはコイツらだぞ」

厳しい言葉を投げた言葉はぶっきらぼうだったが、どうやら僕らのことを考えてくれているふうだ。

「揃いましたね。夕霧、朝霧、貴方達は二人の元に着いて勉強をしていただきます。夕霧は葉月。朝霧は霜月の組み合わせでお願いします」
 
こちらも暇ではないというように強行し本題に入った水無月は他の仕事もあるのだろう。
どうにも早く事を済ませてしまいたいという様子が見て取れた。
指名された霜月と葉月は特段驚く様子もなく、霜月はよろしくね、と微笑み葉月も面倒そうによろしく、と言った。

「よろしくお願いします。」

「よ、よろしくお願いします!」

僕が頭を下げれば朝霧も慌てて頭を下げる。

「んじゃ、夕霧は着いてこい。俺の部屋でやる」

「はい」

怖そうな葉月と一緒、と思うと少し先が思いやられるが、短く返事をすれば立ち上がり、朝霧の頭を撫でると僕は部屋を出た。
朝霧は僕も頑張るね!と息巻いた表情で、行ってらっしゃい、と言った。


「………………」

「……」

舞台を葉月の部屋に移し、正面向かい合って座ってどのくらいが経っただろうか。
数分?
数十分?
いや、本当はさして経っていないのだろう。
この無言の時間に気まづさを募らせながら、外を駆け回る先輩禿の楽しそうな声と言ったらそれはもう憎らしいほどに感じる。
それはそうと、この部屋が花魁の部屋だというのか?
霜月の部屋とはえらい違いだ。
ふと、沈黙を破ったのは、葉月の方だった。

「……俺は、彼奴らとは違ってお前を甘やかすつもりは無い。お前がこれからここで不自由なく生きていけるように躾けるだけだ」

そんな冷たい呟きもないよりはマシで、僕はよろしくお願いします、と改めて畳に頭を近づける。

「お前、もう耳のしまい方を習得したのか。優秀だな」

「ありがとうございます」

頭を上げ、そういえば葉月はフッ、と鼻で笑った。

「今日からお前に教えるのは何もここの生活のことだけじゃねぇ。外に戻っても生きていけるように勉強も俺が見る。しばらくは勉強だけだろうからそのつもりでいろ」

「はい」

葉月はやはり思ったよりも怖い人では無いのかもしれない。
その思いは核心へと変わり始めていた。
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