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ライバル
6寒い日は人恋しい
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芙吹は雑誌の取材に12月24日生まれだと答えた。
しかし、その日生まれたのかは本人も知らない。
幼い頃、まだ母親が生きていた頃、季節が冬へと移り変わると母親は口々に言っていた。
貴方が生まれたのもこんな寒い日だったのよ、と。
その日その日を生きるのに必死な中、過去の裕福であった日々に思いを馳せている母の事が、芙吹は嫌いだった。
なんでも父親と離婚してからは火の車のようで、頼れる人間もおらずあっという間にスラム街へと追いやられるような形で転がり込んだらしい。
もっと早くに自身のことを産んでくれていれば母を養えたかもしれないのに。
そう考える事が日の半分を占めていた幼少期は怒涛のようだった。
雨上がり、水溜まりの泥水をすすり、物乞いをしたり、パン屋や果物屋から食料をくすねては食べる生活だった。
母親が死んだのはちょうど十回目の冬を迎えたあたりだったと思う。
十歳を過ぎれば靴磨きや店の手伝いで子供の駄賃程度には日銭を稼げた。
ある日、靴磨きをしているとある少女がおずおずと近寄って、顔を赤くしながら言った。
綺麗な顔ですね、と。
自分の価値はそこにあったのだとようやく気がついた。
それから数年。
顔である程度稼げるようになれば日本に来た。父親は日本人だったからだ。
自分と母を捨てた男に、いわゆる復讐をするために。
しかし、その日生まれたのかは本人も知らない。
幼い頃、まだ母親が生きていた頃、季節が冬へと移り変わると母親は口々に言っていた。
貴方が生まれたのもこんな寒い日だったのよ、と。
その日その日を生きるのに必死な中、過去の裕福であった日々に思いを馳せている母の事が、芙吹は嫌いだった。
なんでも父親と離婚してからは火の車のようで、頼れる人間もおらずあっという間にスラム街へと追いやられるような形で転がり込んだらしい。
もっと早くに自身のことを産んでくれていれば母を養えたかもしれないのに。
そう考える事が日の半分を占めていた幼少期は怒涛のようだった。
雨上がり、水溜まりの泥水をすすり、物乞いをしたり、パン屋や果物屋から食料をくすねては食べる生活だった。
母親が死んだのはちょうど十回目の冬を迎えたあたりだったと思う。
十歳を過ぎれば靴磨きや店の手伝いで子供の駄賃程度には日銭を稼げた。
ある日、靴磨きをしているとある少女がおずおずと近寄って、顔を赤くしながら言った。
綺麗な顔ですね、と。
自分の価値はそこにあったのだとようやく気がついた。
それから数年。
顔である程度稼げるようになれば日本に来た。父親は日本人だったからだ。
自分と母を捨てた男に、いわゆる復讐をするために。
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