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穏やか(?)な日常
急げ白兎!
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雪成が目を覚ますと、見慣れない風景が広がっていた。
頭はもちろん身体も気だるく覚醒していないようだ。
そんな体を無理やり起こし、辺りを見渡す。
「あ、起きた?よかった、起こそうとおもっとったんよ」
暁が缶コーヒーを片手に隅の椅子に座っていた。
あぁ、そうだ、泊まったんだっけ……。
ようやく覚醒してきた頭を動かし記憶を手繰る。
すると昨日の事が脳裏をかけめぐり顔が熱くなる。
「なん百面相しよん。昨日の事が言いたいんならそれは俺が好きでやったって言ったやろ?」
苦笑しながら暁にペットボトルを差し出され、雪成はそれを受けとる。
「……あの、一体いつから起きてたんですかぁ?」
少し考える素振りをしたあと暁は言った。
「そんな事よりいいん?もう8時になりそうなんやけど……」
「あ!え?!嘘っ!」
急いでスマホを手に取り時刻を見て
「うわっ!まずい、海陽君との朝ごはん!!すいませんがお先に失礼します!」
そう言って身支度を調えすぐに出ていった。
「はぁー……やっぱり言えんやった。」
一人残された部屋でそう呟き先程まで雪成が寝ていたベッドに寝転がる。
まだ雪成の体温が残っていて温かい。
こんなに温かいのに……。
こんなにも思いやれる子なのに……。
どうしてこの子ばかり不幸な目にあうんだろう。
監禁されて二年間も性奴隷なんて……。
それに迎えに来るということは今、帰らせたのは間違いだったかもしれない。
「あぁ……!どうすればよかったんやろ!」
わりと大きな声でいって声がこだまする。
雪成は無事に帰れたんやろうか……。
蛍はホテルをチェックアウトすると、自身の受け持つ小児科へ出勤した。
電話の件は森末へとメールで連絡を入れておいた為、明原辺りに連絡が行くだろうと思っての事だ。
「はっはっ!海陽君!ごめん、少し待ったよね!!」
病院につき、走って来たため立花の部屋の扉を開ける頃には息が上がっていた。
「あ……先生おはよ……」
待っていてくれたのだろう、立花の前には朝食の和食が置かれているが一口も食べた様子はない。
「待っててくれたんだねぇ!先生嬉しい!」
自分の朝食も机におかれているのを見て立花のベッドの横に座った。
「いただきます!ほぉら、海陽君も!」
手を合わせ立花にも食べよう、と促す。
「…………い、いただきます……」
立花も同じように手を合わせて言った。
それを聞いた雪成は魚に箸をつけた。
「ねぇ……先生が昨日言ってたことなんだけど.……やっぱりどうしても僕にはそんなこと思えない…………」
立花の箸を握ったままの手が震える。
「そっかぁ……まぁ少しずつわかってもらえればいいんだよ」
やっぱりまだ無理だったかと心のなかで落ち込んでそれを笑顔で隠す。
「……でも……僕、少しは頑張れるかも……」
予想外だった。
立花とはもう何年も接しているがこんな反応は初めてだった。
これはとてもいい傾向にある。
「うん!ありがとっ!」
思わずありがとうと零してしまった。
そんな雪成を不思議そうに見て
「ありがとう?そこは頑張って……とかじゃないのか?」
今まであまり見せなかった笑顔が見られた。
立花の退院はもうすぐかもしれない。
頭はもちろん身体も気だるく覚醒していないようだ。
そんな体を無理やり起こし、辺りを見渡す。
「あ、起きた?よかった、起こそうとおもっとったんよ」
暁が缶コーヒーを片手に隅の椅子に座っていた。
あぁ、そうだ、泊まったんだっけ……。
ようやく覚醒してきた頭を動かし記憶を手繰る。
すると昨日の事が脳裏をかけめぐり顔が熱くなる。
「なん百面相しよん。昨日の事が言いたいんならそれは俺が好きでやったって言ったやろ?」
苦笑しながら暁にペットボトルを差し出され、雪成はそれを受けとる。
「……あの、一体いつから起きてたんですかぁ?」
少し考える素振りをしたあと暁は言った。
「そんな事よりいいん?もう8時になりそうなんやけど……」
「あ!え?!嘘っ!」
急いでスマホを手に取り時刻を見て
「うわっ!まずい、海陽君との朝ごはん!!すいませんがお先に失礼します!」
そう言って身支度を調えすぐに出ていった。
「はぁー……やっぱり言えんやった。」
一人残された部屋でそう呟き先程まで雪成が寝ていたベッドに寝転がる。
まだ雪成の体温が残っていて温かい。
こんなに温かいのに……。
こんなにも思いやれる子なのに……。
どうしてこの子ばかり不幸な目にあうんだろう。
監禁されて二年間も性奴隷なんて……。
それに迎えに来るということは今、帰らせたのは間違いだったかもしれない。
「あぁ……!どうすればよかったんやろ!」
わりと大きな声でいって声がこだまする。
雪成は無事に帰れたんやろうか……。
蛍はホテルをチェックアウトすると、自身の受け持つ小児科へ出勤した。
電話の件は森末へとメールで連絡を入れておいた為、明原辺りに連絡が行くだろうと思っての事だ。
「はっはっ!海陽君!ごめん、少し待ったよね!!」
病院につき、走って来たため立花の部屋の扉を開ける頃には息が上がっていた。
「あ……先生おはよ……」
待っていてくれたのだろう、立花の前には朝食の和食が置かれているが一口も食べた様子はない。
「待っててくれたんだねぇ!先生嬉しい!」
自分の朝食も机におかれているのを見て立花のベッドの横に座った。
「いただきます!ほぉら、海陽君も!」
手を合わせ立花にも食べよう、と促す。
「…………い、いただきます……」
立花も同じように手を合わせて言った。
それを聞いた雪成は魚に箸をつけた。
「ねぇ……先生が昨日言ってたことなんだけど.……やっぱりどうしても僕にはそんなこと思えない…………」
立花の箸を握ったままの手が震える。
「そっかぁ……まぁ少しずつわかってもらえればいいんだよ」
やっぱりまだ無理だったかと心のなかで落ち込んでそれを笑顔で隠す。
「……でも……僕、少しは頑張れるかも……」
予想外だった。
立花とはもう何年も接しているがこんな反応は初めてだった。
これはとてもいい傾向にある。
「うん!ありがとっ!」
思わずありがとうと零してしまった。
そんな雪成を不思議そうに見て
「ありがとう?そこは頑張って……とかじゃないのか?」
今まであまり見せなかった笑顔が見られた。
立花の退院はもうすぐかもしれない。
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