七虹精神隔離病院~闇は誰もが持っている!!~

白雪 鈴音

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蠢く闇

夜分遅くにすみません

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病院に着く頃にはすっかり日も落ちていた。
正面玄関で明原と別れた後、数人のお見舞い人とすれ違い、挨拶を受けたがそれに答える余裕は今の雪成には無かった。
かつて雪成を誘拐した男が今この東京に居ると聞いて、冷静で居られるほどトラウマ回復出来てはいない。
上へのエスカレーターを通り過ぎ、階段で二階へと上がっていく。
足は自然と重くなる。
一階の踊り場で足を止める。
数歩上がれば二階だというのに一向に登る気には慣れない。
壁に背を預け、別れ際、明原に貰った缶コーヒーのプルタブに人差し指の指先を入れるとカシュ、という簡素な音が廊下に響いて蓋が開く。
今秋良の元に行って何をするのか。
なぜ自然と秋良に会いに行こうとしているのか、と、ふと思ったのだ。
自身のこの恐怖心を向けるのは何も秋良でなくとも良い。
暁でもいいし、森末、なんなら明原でも良かった筈なのだ。
それなのに、何故秋良の元に真っ先に向かっていたのか……。
珈琲を飲み終わり、ふぅ、と一息着けば上に上がるか、と上に視線を向ける。
その時雪成の心臓がドクン、と跳ねた。
階段の上。
二階には秋良が雪成を見つめていたからだ。

「お前、何してるんだよ。」

「あ……えっ、と……」

言葉に詰まらせ、思わず俯いしてしまう雪成に、秋良は階段を降りてきて、”こっち来い”と自身の診察室まで腕を引いてきた。
やはり二人の間に会話はなかった。
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