七虹精神隔離病院~闇は誰もが持っている!!~

白雪 鈴音

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穏やか(?)な日常

診療

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午後は海陽の診察と白暗と黒明と一緒に隠れんぼをする予定だ。
バスケットを自分の部屋の寝台に置けばそのまま新初へ向かう。
海陽は雪成がこの病院に医者として初めての担当患者であった。
そのため目覚ましい回復を続ける海陽を見ると雪成自身も心がふっ、と軽くなる。
先日のフォーク騒動もまだ大人しくなった方だ。
病室に着くといつもの調子で中に入り話し掛ける。

「海陽君~!こんにちはっ!お昼ご飯は食べられたかなぁ?」

「あ!先生!!凄いんだよ!僕が好きなアイドルが逢いに来てくれたんだ!」

アイドルという単語にふと、自分の兄である今売り出し中のアイドル、桃江桃里の無駄に綺麗な顔が思い浮かんだ。

「そうなんだ!よかったね!」

今日のカウンセリングの主な内容は将来について。
ここを出た時に海陽が何をしたいかを問うものだ。
雪成はベッドサイドに置いてある椅子に腰掛けると小さなメモ帳とペンをポケットから取り出す。

「じゃあ今日はなにかしたいことは無いかを考えてみようよ!」

「先生って凄くいきなり始めるよね……まぁ、そんな話し方でも真面目は隠せないね」

既に気心知れた中の海陽相手にも雪成は他の患者と同じように接する。
そうしなければ、自分の弱みを患者に見せてしまうことになるからだ。
病みは伝染する。
一人が暗い気持ちになれば周りも自然とそういう空気になってしまう。

「僕の事はどうでもいいんだよ!ほらほらー、なにかしたいことは無いの?彼女欲しいとかさ」

海陽の年齢を考えるとそれは当然な夢。
彼女と色々な所に出かけたい、そんな事を考えてる事は心が健康の証なのだ。

「……俺は……ここを退院したら……好きな人と一緒に暮らしたいんだ。けど、その人もここの病院の患者だから、出来ればその子と一緒に退院したい。」

枕を抱き抱え、顔を隠す。

「好きな人がいるんだね!それは僕にも叶えられるね」

内心ホッとしている。
そんなに明るい未来が見えているのならば彼はもう大丈夫だ。
よしよしと海陽のことを抱きしめ、頭を撫でる。
海陽たっての希望でカウンセリング、診察の後はこうして抱きしめて欲しいそうだ。
確かに自傷癖の事を考えれば、肯定されたいという思いを体現して居るのだろう。
”暖かい”
海陽はそう零すとゆっくり離れた。

「毎回ありがとう。やっぱり先生は生きてて良い人間だよ。僕もそんな人に慣れるように頑張るから!」

そう笑う海陽を笑顔はこの日の晴天のように輝いていた。
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