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穏やか(?)な日常
ねぇ、先生
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「……先生。ごめんなさい……。」
雪成自身の病室へと着けば意識の戻った彼をベッドの上に降ろす。
こうして見ると昔と何ら変わりのない雪成なのだと認識させられる森末。
全く身体ばかり大きくなって……。
喜ばしい事ではあるが少しは言動に気をつけて欲しいものだ、と森末は今回の事でつくづく思った。
「別に君が謝ることじゃない。……何があったか教えてくれるかい?」
原因は何となく分かっている。
秋良先生だろう。
前々から実直な性格の彼ならばやんわりと患者自身に行動し、理解してもらおうという雪成の性格は到底理解出来ないと考えていた。
いつかこのような事態になってもおかしくはなかった。
しかし尚も二人を離さずに行動させていたのには訳がある。
それは秋良先生が雪成に惚れているからだ。
それに森末が気がついたのは半年ほど前。
当時も言い合いをしていた二人だが秋良の目には紛れも無い恋慕の想いが見え隠れしていた。
それから意識をして見ていればまるでマーキングかのように雪成の傍にいる。
嫌いな人間には決して近付きたくは無いだろう。
秋良は雪成の過去を知っている。
その上でこのような行動をして考えられるのは”警戒”だ。
けれど今回雪成を泣かせてしまったのは秋良だという。
これは少し話を聞いてみた方が良さそうだ。
「雪成君。秋良先生はきっとその犯人に会うことで最悪の事態を想像したんじゃないかな?」
「最悪の事態……?」
首を傾げ、森末の瞳をまじまじと覗き込んでくる雪成に、やっぱり変わってない、と思いながら話を続ける。
「そう。きっと秋良先生は影森君が犯人と会って話したら心を壊してしまうのではないかと思ったんだよ。今まで依存していた相手に必要無いと言われれば……その苦しみは君なら分かるんじゃないかな?」
雪成はハッと気が付いたような顔をした。
どうやらこの荒治療の利点ばかり考え、マイナス点は見えていなかったようだ。
それも仕方が無いことだろう。
影森は最も雪成に近い環境で生活をしていたのだから。
「先生……僕、なんて事を……。」
落ち込んだように俯く雪成の肩に、ポン、と手を乗せる。
「大丈夫。秋良先生もきっと君が本気でぶつかれば分かってくれるはずだよ。」
もう大丈夫そうなのを確認すると森末は”じゃあまた何かあれば呼んでね”と精神安定剤を一つ置いて部屋を後にした。
雪成自身の病室へと着けば意識の戻った彼をベッドの上に降ろす。
こうして見ると昔と何ら変わりのない雪成なのだと認識させられる森末。
全く身体ばかり大きくなって……。
喜ばしい事ではあるが少しは言動に気をつけて欲しいものだ、と森末は今回の事でつくづく思った。
「別に君が謝ることじゃない。……何があったか教えてくれるかい?」
原因は何となく分かっている。
秋良先生だろう。
前々から実直な性格の彼ならばやんわりと患者自身に行動し、理解してもらおうという雪成の性格は到底理解出来ないと考えていた。
いつかこのような事態になってもおかしくはなかった。
しかし尚も二人を離さずに行動させていたのには訳がある。
それは秋良先生が雪成に惚れているからだ。
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それから意識をして見ていればまるでマーキングかのように雪成の傍にいる。
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秋良は雪成の過去を知っている。
その上でこのような行動をして考えられるのは”警戒”だ。
けれど今回雪成を泣かせてしまったのは秋良だという。
これは少し話を聞いてみた方が良さそうだ。
「雪成君。秋良先生はきっとその犯人に会うことで最悪の事態を想像したんじゃないかな?」
「最悪の事態……?」
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