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1章

邂逅

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《ガラク視点》

「まずは、前衛・中衛・後衛に分かれてくれ! 前衛がこっち、中衛がこっち、後衛がこっちに来てくれ!」

 俺はマサキの言葉ですっかりやる気になった冒険者達の指揮をとる。

 一部の冒険者はまだ興奮状態で手がつけられない。

 俺が冒険者達をまとめるのに苦心しているのに対して、この状況を作った当の本人はギルドの端っこに座ってジュースを飲んでいる。

 おいっ! お前がこんな状況にしたんだぞッ! 少しはコイツらをまとめるのに力を貸せよ!

 俺の気も知らず、【万魔剣】は妹とイチャイチャしながらジュースを飲む。

 妹の方もパフェ食ってるし、まったくコイツら兄妹の胆力には驚かされるぜ。

 俺はマイペースな兄妹達にイライラ半分、感心半分の気持ちを抱きながら、冒険者達をまとめる為に動く。



ーーーーーーーーーー



「おいっ、オチアイ兄妹。冒険者共をまとめたぜ」

 俺は冒険者をまとめるのを終えると、おそらく今、この都市で一番悪魔の動向に詳しいだろう冒険者に今後の動向を暗に伺う。

「ああ、お疲れさん。それよりガラクさん、そんな鎧着て、あんたも戦うつもりか?」

 マサキは俺が鎧を着ているのを見て、突っ込んでくる。

「当たり前だ! 元Aランク冒険者舐めんなよ。引退してもまだBランク冒険者ぐらいの力はあるわ!」

 俺は腕の力こぶをマサキに見せつける。

「……あんま無茶すんなよ。それじゃ、まとめたヤツらを2つのチームに分けてくれ」

「2つ? 潜伏中の悪魔は2カ所にいるのか?」

 マサキは軽く頷き、俺の言葉に肯定する。

「ギルド長が冒険者をまとめてる最中にこの都市をくまなく調べたが、悪魔どもは1区と4区に潜伏してるみたいだな。ほいっ、地図に潜伏場所をマークしといた」

 マサキは悪魔の潜伏場所をマークした地図を俺に渡す。

 こいつ……イチャつきながらそんなことしてたのか?

 チッ。遊んでるように見えて、やることやってんだからコイツには文句が言えねえんだよな。

「それじゃ、俺は冒険者を2手に分け次第突撃するが、お前たちはどうする?」

「それじゃ、俺たちもそろそろ敵の親玉に会いに行こうかな」

 マサキは軽い調子で公爵級悪魔と相対することを伝える。

「お前ら、気をつけろよ。おそらく、公爵級悪魔が率いる悪魔は1区や4区の悪魔とはレベルが違うぞ」

「フッ……そう思うんなら、さっさとそっちの悪魔を倒して援軍に来てくれや」

 マサキは妹を連れ、ギルドを後にする。

「おう! さっさと終わらせて、援軍に行ってやっからよぉ! ちゃんと俺の分も残しとけよー!」

 俺はSランク冒険者の男気に、精一杯の虚勢を言い放ち、報いる。

 死ぬなよ……【万魔剣】の。



ーーーーーーーーーー



《公爵級悪魔視点》

 公爵級悪魔、ゼルエルは激怒していた。

 生まれながらにして異界の名門貴族家に生まれた彼にとって、誰かにバカにされるという経験はほとんどなかった。

 人間相手なら尚のことである。

 どんな人間も自分を前にすれば、恥も外聞もなく逃げ回り、たまに勇気を出して自分に立ち向かった人間も圧倒的な実力差を知れば、泣いて命乞いをした。

 敗北など同種の悪魔以外からしたことのない彼にとって、人間とは少し放っておけば勝手に増える都合の良い魔力供給のための生物でしかなかった。

 人間に対して生かしてやっているという意識しか無かった彼の思考は、今すぐにでも手紙の差し出し人を殺したいという思考で埋め尽くされていた。

「マサキとやら、この俺をコケにした事を泣いて後悔させてやる! 体を少しずつ削いで、泣いて命乞いするまで拷問してから殺してやる!!!」

 ゼルエルは服従させた【鋼殻竜メタリック・ドラゴン】に騎乗し、怒りに身を焦がしていた。

 現在、ゼルエル率いる魔物と悪魔の混成軍はコルトーを目指して森の中を突き進んでいた。

 ゼルエルは最後尾で服従させた魔物達の指揮を執る。

 しかし、普段は多少暴れる魔物達もゼルエルの怒りに怯え、少しでもゼルエルと離れようとするように森を一心不乱に駆ける。

「よしっ、この森を抜ければコルトーは目と鼻の先……。待っていろよ、下等種族ども!」

 ゼルエルは今か今かと森を抜ける時を待ち、遂に森を抜ける。

 森を抜けた先の平原。

 ……そこには無数の魔力で出来た剣が浮かんでいた。

(マズイッ!!!)

 目の前の非現実的な光景に目を一瞬奪われていたゼルエルだったが、すぐに地面を蹴り、前へ飛ぶ。

「【悪魔之咆哮ディアブロ・バースト】」

 マサキの魔力とゼルエルの魔力がぶつかる……!

 ぶつかった魔力が爆発し、平原は土煙に包まれる。

 土煙が晴れた後、ゼルエルの目に倒れた数千体の魔物が入るのだった。

 俺が何ヶ月も費やして集めた魔物を殺しやがって~~~!!!

「許さんぞーーー!!!!! 下等種族がー!!!」

 ゼルエルは遠くにいる冒険者を睨みつけ、咆哮する。
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