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1章
宣戦布告
しおりを挟む《公爵級悪魔視点》
「クックックッ。思ったより順調に準備が整ったな」
そう言って、公爵級悪魔【ゼルエル】は玉座に座り、眼前に広がる服従させた魔物を満足そうに見つめる。
ゼルエルがいる場所は、かつて盗賊が使っていたと思われる洞窟で、洞窟内にはびっしりと魔物が居並んでいる。
(しかし、この都市の冒険者のレベルの低さには呆れてものも言えんな。)
ゼルエルは玉座に座り、地方都市コルトーの冒険者について一人考える。
地方都市は簡単に滅ぼせると部下に聞いたから来たが、これほど弱くては守られる民にも同情してしまうな……。
だが、これならば我が力を蓄える場としては上等だ。
大した力も使わず、【魔王選】の為の力が蓄えられるのだから。
人間どもには感謝してもしきれんな! ガッハッハッ!
実はこの公爵級悪魔【ゼルエル】は、悪魔がいると言われている魔界でも指折りの実力者であった。
しかし、悪魔の中の王を決める為の戦い【魔王選】でライバル悪魔に負け、全盛期に比べ、大きく力が削がれしまった。
今回、この地方都市、コルトーへ来たのは人間の魂を食べ、魔王選の為の力を取り戻す為である。
「ゼルエル様~! ゼルエル様~!」
ゼルエルが心の中で高笑いをしていると、一匹の悪魔が魔物の間を縫って、ゼルエルの前に跪く。
「……なんだ?」
ゼルエルは楽しい気分を邪魔され、ぶっきらぼうに目の前の悪魔に語りかける。
「ご報告いたします! 冒険者ギルド付近で潜伏していた偵察用悪魔が全滅しました!」
「なにぃッ! 全滅だと!?」
報告を聞いたゼルエルは、玉座の手すりに勢いよく拳を叩きつけ、報告してきた悪魔を問い詰める。
「誰がやったッ! 原因はなんだッ!」
ゼルエルは部下の悪魔の肩を掴み、激しく揺さぶる。
「げんっ……いんは……わかりまっ……せんが……てがみがっ……ありました!」
ゼルエルに揺さぶられながらも、部下の悪魔は途切れ途切れに答える。
「手紙だと~!」
部下の悪魔は懐から一枚の便箋を取り出し、ゼルエルに差し出す。
便箋には『公爵級悪魔さんへ』とデカデカと書かれている。
「はっ、はいッ! ここに!」
「よこせッ!」
部下の悪魔から勢いよく便箋をぶんどったゼルエルは、便箋を乱暴に開け、中身を見る。
手紙の中には、
(冒険者ギルドの周りにいた雑魚ってお前の部下? だとしたら弱すぎっ(笑)。部下がこんなんじゃ上司のお前の強さも期待できねぇな。死ぬのが怖かったら、今すぐ逃げることをおすすめします。プギャ――m9(^Д^)――!! Sランク冒険者マサキより)
と言った内容が書かれていた。
手紙を見たゼルエルは小刻みに震え、程なくして抑えきれない怒りで爆発する。
「クソがァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
「ちょっッ! ゼルエル様ッ!?」
激昂したゼルエルは、目の前にいた部下の悪魔の首を掴み、何度も何度も地面に叩きつける。
目の前に居並んでいた魔物も激昂したゼルエルを見て、できるだけ遠くに離れるようにパニックになっている。
掴んでいた部下の悪魔の頭が完全に潰れ、ゼルエルはやっと落ち着いた。
ゼルエルの周りは、ゼルエルの怒りに巻き込まれまいと逃げた魔物達が円状に囲む形でぽっかりとスペースが空いていた。
「ハァ……ハァ……。…………するぞ。」
「……はい?」
ゼルエルの乱心に巻き込まれなかった部下の悪魔が聞き返す。
「今すぐコルトーに突撃するぞ!!! 下等種族の人間が調子に乗ったこと、後悔させてやる!!! 全員、準備しろ!!!」
「はっ、はい!!!」
ゼルエルの言葉を聞いて、部下の悪魔や魔物達が忙しなく動き出す。
一方、ゼルエルはドカッと玉座に座る。
Sランク冒険者のマサキとやら、俺に楯突いたことを必ず後悔させてやるぞ!!!
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