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コラプション ★
しおりを挟む白い肌は上気し、潤んだ瞳で見上げてくるアルヴィナは、ぞくりと背筋を震わせるほど蠱惑的で美しかった。
「アヴィー。ノーラはネロに八つ当たりするキリアンと揉めている。マルクスは手負いのカバのような女の相手で忙しい。
ゆっくりでいい。心配するな、助けは来ない。」
視線を縋らせ、熱い吐息をこぼす唇。欲情に聡明さを手放しても、気品を失わない姿にカーティスは薄く嗤った。
「浅知恵を絞って騒ぎを起こし、もうベルタングが精製できない貴重なコラプションを、わざわざナイトメアに盛らせたんだ。ゆっくりと味わってやれ。」
「兄様……兄様……お願い……」
「身体が熱いか?布が擦れるだけでもたまらなく昂ぶるのだろう?我慢しなくていい。ここで見ていてやろう。」
「……に、兄様……お願い……助けて……」
掻きむしるようにドレスをはだけ、その度に甘く嬌声を上げるアルヴィナを、カーティスは愉快そうにただ眺めた。
「熱い……熱いの……助けて……お願い……」
「そうだろうな。よく知っている。」
「兄様……カーティス兄様……お願い……どうか……」
「お前を犯すためにここにいたナイトメアは、べーデルの長男らしい。」
「兄様……」
「ハッ!べーデルの長男でも同じように懇願したか?誰でもいいのではないか?」
力の入らない指先で、もどかしげにドレスを脱いでいたアルヴィナは、そのまま溶け崩れるように床に伏した。
本能的に熱を冷まそうと、晒した肩口を床に押し付ける。でもそんなものでは熱は冷めないことは知っている。
突き出した腰を誘うように揺らし、懇願に涙を流すアルヴィナにカーティスは瞳を細めた。
「アヴィー、そうして痴態を晒していてもお前は美しい。嫌になるほどな。」
「ふぅっ……はぁ……あぁ……兄様ぁ……」
甘い声で啼きながら、アルヴィナは身をくねらせた。募り続ける熱に浮かされて、限界を超えたもどかしさが自身の秘部に手を伸ばさせる。
くちゅりと添わせた指が音を立てた。脳が焼けるような快楽が走り抜け、アルヴィナは完全に理性を手放した。
「ああっ!あっ!あん……あぁ……あぁ……」
ぐずぐずに蕩けた秘裂を、完全に立ち上がり痺れるように張り詰めた花芯を、一心不乱に慰め始める。
「ひうっ!あぁっ!ああっ!あぁ……あぁ……兄様……兄様ぁ……」
「随分淫らなものだ。べーデルの長男はさぞ喜んでお前を犯しただろう。」
腰を揺らしぶちゅぶちゅと音を立てながら自らを慰める、アルヴィナの痴態を鑑賞しながらカーティスは冷笑を浮かべた。
「アヴィー、いいのか?果てるほどに飢餓感は増すぞ?快楽を得るほどに嫌悪が募る。ああ、そろそろか。覚悟しろ、幻覚が始まる。」
「ひっ……ううっ……兄様……お願い……助けて……兄様ぁ……」
簡単に何度も昇り詰めるほど快楽は強烈でも、それでも満たされずに身体はますます飢える。脳が焼かれるような快楽に、言いようのない嫌悪がこみ上げてアルヴィナは泣きながら懇願した。
「いや!いや!やめて!やだぁ!」
それでも強烈な欲求に手を止めることはできず、虫唾が走るような嫌悪は激しさを増していく。何度目かの絶頂に達したときに、ソレは始まった。
「あぁ……あぁ……やめて……やめて!!いやぁ!いやぁぁぁーーー!!」
幻覚だとはっきり分かっていた。それでもすぐ目の前での光景のように、はっきりと質感を伴って幻覚が始まった。
「いや……やめて……やめてよ……触ら、ないで……触らないで!!だめ!だめ!いや!!」
「アヴィー、アヴィー!何が見える!アヴィー!」
痴態を笑みを浮かべて鑑賞していたカーティスは、顔色を変えてアルヴィナに駆け寄った。期待するように瞳をギラつかせ、怯えるように口元を引つらせながら。
乱暴にアルヴィナを揺さぶり、幻覚の内容を問いただす。
「やめて!やめて!消えて!やめて!触らないで!触らないでよぉ………」
現実のカーティスの声が届かないかのように、アルヴィナは幻覚が見えているだろう先を睨み激しく怒りを顕にした。
それでも強烈な欲求と嫌悪は消えず、目の前の幻覚に欲情が湧き上がることに、心が軋むほどの絶望が襲いかかる。
「いやあぁぁーーーー!!やめてぇ……やめてぇ……」
「アヴィー!答えろ!何が見える!アヴィー!」
狂気じみてアルヴィナを揺さぶるカーティスを振り払い、アルヴィナは必死に幻覚のカーティスに手を伸ばした。
《セレイア……愛してる……愛してる……セレイア……たまらないよ……セレイア……》
《あぁ……カーティス……いい……いい……愛してる……愛してるわ……》
思い出の中の優しい響きの声で、絶え間なく愛を囁くカーティス。蛇のように激しく絡まりながら、アルヴィナには見せない愛しげな眼差しで、セレイアを見詰め切なく息を溢して愛を交わしている。
「やめて……やめて……兄様……やめて……」
ピタリとアルヴィナを揺さぶるカーティスの手が止まった。こらえきれないように、口元に笑みが浮かんだ。
「アルヴィナ、私か?お前の悪夢は私か?」
《あぁ……セレイア……愛してる……君だけを愛しているよ……君は僕の全てだ……セレイア……愛してる……》
幻覚のカーティスは愛に溢れ、無我夢中で何度もセレイアに口づけを贈る。二人が繋がるそこは淫らな水音を立て何度も何度も出入りを繰り返す。
虫のように這いつくばるアルヴィナには目もくれず、思い出の中のカーティスはセレイアの肌に溺れている。
「兄様……やめて……お願い……やめて……見せないで……消えて……」
「アヴィー!私なのか?アヴィー!答えろ!」
《セレイア……あぁ……もう……セレイア!セレイア!愛してる!愛してる!》
《カーティス!カーティス!》
固く抱き合い、深く口づけを交わしながら二人が目の前で昇り詰めていく。
「やだ!やだ!やだ!兄様!!いや!いや!いやぁぁぁーーー!!」
ひどく混乱し瞳孔が完全に開ききったアルヴィナに、カーティスはこれ以上は無理だと判断した。そのまま引き寄せて、暴れるアルヴィナを組伏せた。
「アヴィー!」
「あああああーーーー!!」
灼熱がアルヴィナの中心を貫く。その瞬間幻覚はかき消え、一息に穿たれた衝撃に、アルヴィナは引きつれるように痙攣した。
間髪入れずぐずぐずに蕩けた膣壁を抉るように抽挿が始まり、アルヴィナは背を反らせ目を見開く。スパークする快楽が脳を焼切り、思考が真っ白に染まった。
「アヴィー!アヴィー!」
「あぁ!あぁ!もっと!もっと!」
光が消え虚ろな瞳で、アルヴィナは快楽を求めた。アルヴィナを見つめるアイスブルーが、快楽に溺れるアルヴィナを見下ろしている。
「お願い!壊して!壊して!」
もう二度とあの幻覚が蘇ることがないように。溶けて砕けるような快楽に自らの進んで理性を差し出し、何もかも忘れるように自分を揺さぶる身体にしがみついた。
「アヴィー、何を見た?答えろ!」
「ああっ!ああっ!もっと……もっと……」
「アヴィー!答えろ!」
「ああ!ああ!あああーーああーーーー!!」
繰り返される獣のような律動に、アルヴィナは自ら腰を押し付け絶頂した。吸い上げるようにうねり、引絞るように締め付けるそこにカーティスはがくがくと痙攣するアルヴィナを押さえつけた。
「うっ……くそっ!アヴィー!アヴィー!」
叩きつけるようにして腰を穿ち、カーティスもまた最奥に吐精した。叩きつけられた灼熱に、身体を跳ねさせたアルヴィナはそのまま、全てを放棄するようにすうっと意識を手放した。
腕の檻にアルヴィナを閉じ込めたまま、カーティスは呼吸を貪りながらアルヴィナを見下ろす。
「アルヴィナ……アヴィー……チッ!!くそっ!!」
切実な響きの呼びかけに反応はない。歯を食いしばりカーティスは繋がった身体を引き剥がした。
脱ぎ捨てた上着から小瓶を取り出し、口に含んでアルヴィナを抱きかかえる。
上向いて開いた口に、含んでいた薬液を流し込んだ。
夕暮れの茜は色を変え始め、宵の闇が迫っていた。
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