秘密の切り札

宵の月

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中編 2

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 「………拙いな。それで籠絡できるのか?」

 男を知らぬその拙さにぞくりと情欲を掻き立てられながら、フェリオルは雄に舌を這わせるアデーレを食い入るように見下ろした。
 赤く濡れ光る唇と舌はやけに扇情的で、アデーレの唾液を纏う己が血管が浮くほど猛っている。

 「自分のしていることの自覚はあるか?」

 戸惑うように見上げてきた瞳に、うっそりと笑みを浮かべてみせる。跪き晒させた媚態に目を細めて、アデーレの頬に手を伸ばす。

 「その美しい顔を歪ませながら俺のモノを咥えこんでいる。自分の中を深く穿たれるための準備をお前が自らしている。淫らだな。」

 情欲に濃くした空色の瞳に、カッと羞恥に顔に朱を上らせたアデーレが映る。している行為の意味と屈辱に、下腹部がきゅうっと期待に疼き羞恥に離れようとしたアデーレを両手で押さえ込んだ。絡んだ視線の先でフェリオルが口角を上げた。

 「誘惑して籠絡するんだろ?」

 低いその声に震えが走り、期待するようにはっきりと自分のそこが熱くなるのを感じて、アデーレは涙を滲ませた。満足げにたっぷりと眺めていたフェリオルが、押さえ込んだアデーレの口から引き抜き寝台に縫い止めた。

 「やっ!ああっ!!」

 くちゅりと音を立てて秘裂に潜り込まれた指に、アデーレが背をのけぞらせる。

 「なんだ?いじられもしていないのに濡れそぼっているぞ?」
 「やぁ!ちが……!ああっ……!」
 「口に咥えこみながら想像したのか?奥に埋め込まれて抱かれるのを。」
 「ちが、違います!そんな……んあっ……やぁっ!!」
 「違うものか。ならどうしてこれほど滴らせている?」

 ぐちぐちとわざと音を立てて中を擦り立てる指に、アデーレは羞恥と快楽に必死に首を振った。図星を指されて顔をあげられない。
 口内で固く脈打つそれが、アデーレを深く穿つたびに脳が痺れるような快楽を与えてくる。思い出すたびに、奥が熱く疼くのを止められなかった。
 ぐいっと無理やり上げさせられた顔を覗き込み、視界の先でむせ返るような色香をたたえてフェリオルが嗤った。

 「欲しいか?アデーレ。奥まで埋めてほしいんだろ?」
 「んっ……あっ……知り、ません……」
 「バカな事を。ここをこんなにしているのに。媚びろ。言わねば満たしてやらぬ。」

 ぐちゅぐちゅと中を掻き回わされ、込み上げる熱と疼きにアデーレは歯噛みする。それでも弾ける寸前で何度も押し留められる熱のもどかしさに、アデーレはフェリオルに縋った。

 「ふぅ……はぁ……フェリオル、様……もうどうか……欲しい……お願いします……」

 掠れたか細い声での懇願にフェリオルが笑みを刻む。押さえつけられていた腕が緩み、ぎしりと寝台が揺れた。引き寄せられながら視界は反転し、筋肉の詰まった胸板に抱き寄せられた鼓膜にフェリオルの低く響く声が届いた。

 「乗れ。自分で奥まで満たせ。」

 そそり立つ雄を押し付けられ、アデーレがあっと小さく悲鳴を上げる。欲しくてたまらない、疼いてい仕方ない。でも奥まで満たすにはフェリオルの目の前で跨り、凶悪に立ち上がっている怒張をそこにあてがい飲み込まなくてはならない。
 
 「淫靡な娼婦のように、護衛の騎士でも連れ込んでたらしこむつもりだったのだろう?この程度で尻込みするのか?」

 惑うアデーレを嘲笑うようなフェリオルに、ようやく気づいた。怒っている。部屋を勝手に抜け出した事を。姿を晒してしまったことを。ごくりと喉を上下させるアデーレに、フェリオルは嘲笑を浮かべた。

 「どうした?使えることを証明するんだろ?俺を誘惑し籠絡して見せろ。」
 
 誘うような甘く響く低音に、アデーレは操られるように足を開いて跨った。父と弟を助けたい。役に立てると証明したい。本心なのにそれが言い訳であるかのように、ゾクゾクと官能に身を震わせながら、アデーレはフェリオルの雄を握りこんだ。
 教え込まれた脳を焼き切るような、あの鮮烈な快楽に満たされる期待に下腹部の疼きが増す。
 フェリオルの目の前で足を開き、蜜でぐずぐずに解けた秘裂に、フェリオルをあてがう。羞恥心に身がすくんでも、滾るような熱に浮かされるようにゆっくりと待ち望んだ熱を飲み込んだ。

 「……んっ……あっ……ああっ………ああああーーーー」

 身体を貫く灼熱に隘路を押し開かれ、駆け抜ける目も眩む快楽に奥まで飲み込んだ瞬間、アデーレは深く絶頂した。

 「……あぁ……あっ……あぁ………」
 「ふっ……くっ……飲み込んだだけで果てたか。うねってキツく締め付けてるぞ。」
 「あっ……やっ………あぁ………」

 ガクガクと身体を震わせながら、深く達した余韻にアデーレの口から溢れる喘ぎは甘く蕩けていた。

 「アデーレ、どうした?腰を振れ。俺を楽しませろ。」
 「あっ……あぁ………」
 「お前が籠絡されてどうする?ほら、腰を振れ。」

 気持ちよすぎて動けもしないアデーレの細腰を、フェリオルが掴み下から突き上げた。

 「ああーーー!!やぁ!やぁ!!」
 
 激しい突き上げに火花が散るように視界が点滅する。奥をゴリゴリとフェリオルの雄が抉るたびに、電流を流されたように身体が跳ねる。責め苛むような快楽に思考がかき消え、理性を手放したアデーレは全身を満たす快楽に甘く啼いた。

 「ああっ!いいっ!奥に……当たって……ああっ!!」
 「くっ!!アデーレ、出すぞ!!」
 「ああっ!!いいっ!いいっ!出して!出して!いくっ!いくっ!ああっ!あああーーーー!!」

 激しい抽挿に寝台がギシギシと音を立て、最奥に放たれた白濁の熱さに、アデーレが肢体をのけぞらせて絶頂する。上体を起こしてアデーレを抱きしめたフェリオルが、呼吸を貪るアデーレの口内に舌を差し入れた。

 「んふぅ……はぁ……んんっ……」
 
 夢中になってアデーレも口内を舐る舌に舌を絡ませる。そうする間にアデーレの中に居座る雄は体積を増していく。
 そうしてアデーレは意識が飛ぶまで、何度も繰り返し深い絶頂まで追いやられ続けた。


※※※※※


 ふと手放すように意識が途切れたアデーレを横たえ、フェリオルはその寝顔を眺めた。

 「………アデーレ。そこまで役立ちたいと願うか。ならば叶えてやろう。」

 うっそりと笑みを刻み、寝台からフェリオルが立ち上がる。部屋に散らばった衣服を拾い上げ、簡単に身支度を済ませると扉を開けた。

 「シベロ、予定を早める。2日後だ。エリックに伝えておけ。」

 待ち構えたように控えていた側近が、その言葉に絶句したように目を見開いた。

 「そ、れは……」
 「2日後だ。準備を進めろ。」

 にべもない主の態度に、シベロは反論を飲み込んだ。スッと礼をして、そのまま駆け出した。

 「もとよりもう、お前に選択肢はない。」

 月明かりに照らされたフェリオルが、美貌を不敵に歪ませた。

 
 
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