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第3話 鬼の頭領

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「俺は酒呑童子。最強の鬼の1人。これより俺は貴方の盾になりましょう。四季姫殿」

僕は自分の耳を疑った。

「酒呑童子?」

確か酒呑童子と言えば平安時代の大江山にいたとされる伝説の鬼の頭領。
長年に渡り京の都を恐怖に陥れたが、最後には源頼光達によって首をはねられて退治されたと伝説には残っていたが…
それが今現在生きており、自分の目の前にいて僕を守るなんて到底信じられない。
昔も鬼を見たことはあるが、どれも悪意があるもの達ばかりだった。
この鬼もどうせ僕が油断したところを狙うだろう。

「あー、その手は通用しないので失礼します。」

僕は酒呑童子と名乗る鬼にそう言って、早足で階段を上り境内に向かう。
妖怪は境内に入れないようになっている。
僕が許可をすれば話は別だが…
境内なら安心だと思い、急いで上るが、鳥居の前で先程の鬼が仁王立ちしていた。
後ろを見ると、誰もいなくなっていたので、術を使って移動したのだろう。僅かだが、何かの術の気配を感じた。

「お願いします。どうか、俺に貴方を守らせてください。」

鬼はずっと頼んでくる。鬼がここまでお願いしてくるなんて、本当に鬼なのか怪しいところだが、確かにあの角は本物だ。
僕はめんどくさくなったので、瞬間移動の術を使って境内に移る。

あまり力を使いたくないんだけどな…

「僕はあなたを信じません。なので、諦めてどこかへ行くか、家があるなら帰ってください。」

僕は鬼にそう言って家の中に入っていく。
その後はいつも通りに夕飯を食べて、寝た。

僕は1人で生きていくと決めた…

そう思いながら僕は瞳を閉じて眠りに入った。

翌日、朝目が覚めて、今日もいつも通りに祈りを捧げたあと、朝ごはんを作って食べて、掃除をしようとドアを開けると、僕は驚いた。
昨日の鬼が同じ場所で立っていた。
気づけば僕は急いで駆け寄り、

「何をしているのですか?!」

僕がそう言うと、鬼は驚いたかと思えば、僕を見ると、笑い、

「おはようございます。四季姫殿。何って、警備ですよ。境内に入れないですから、せめて神社の周りを力を使って見回っていました。」

「力を使ったって…まさか、一晩中?!」

力がある人間や妖怪なら大抵使い続けても大丈夫だと思うが、休まずにあれからずっと一晩中力を使いすぎたらいくら鬼でも体力を大分消耗している筈だ。

「あっ、失言でした。ですが、大丈夫です。俺は元鬼の頭領ですから。お気になさらず」

僕は、気にするなと言われたが、勿論気にする。だから、手を合わせ、

「この者に、我が社へ入る許可を…」

そう唱えると、鬼の周りが少し光った。
これは、妖怪が神社に入ることを許すための簡単な儀式だ。

「っ…!何を!?」

「ここまでされて何もしないのは酷です。今から暖かいお茶を入れますのでお入りください。」

僕が鬼、いや酒呑童子を家の中へ入るように促すと、

「いいのですか?こんな鬼を招き入れて。守るつもりではありますが、中にまで入れて欲しいとは思っていません…」

酒呑童子がそう言いながら俯いた。

「もう何を言ってもダメでしょうし、守ってもらうのなら、それ相応のお礼はしないといけないと思うので。」

その言葉に酒呑童子は嬉しそうな表情をした。
昨日から思っていたが、普段はクールなのだろう。だが、今みたいに柔らかい表情をする。そこには邪悪さではなく、純粋さが感じられる。その点、昔に襲ってきた鬼とは違うのかもしれない。



今日この日、僕は初めて妖怪を境内に入れた。

もしかすると、夢の中の話は本当に起こるのかもしれないと、僕はそう思った。
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