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第1話 祝福という名の呪い
しおりを挟む皆様は、祝福と聞いて、どう想像しますか?
幸せなこと?健康になること?
そういった自分にとっていい方向にいくものを想像しますか?
実は、祝福とはある意味呪いでもあるのです。
これは、祝福によって大変な目にあう1人の男巫のお話です。
3月のある日、まだ寒さが残っており、僕は冷たくなっている手を息で温める。もちろん息を吹きかけただけではあまり効果はない。
かけている眼鏡が少し曇るだけだ。
僕、高原縁は今現在大学から家への帰り道を歩いている。
その途中にある電柱の陰から何かがこちらを見ているのに気がつく。
ああ…またいる。
僕はあえて無視しようとしたが、こちらを見ていた者はゆら~と後をついてくる。
少し後ろを見てみると、やはり足がない。
つまり、幽霊だ。
制服を着ているので多分中学生か高校生だったのだろう。幽霊だからか顔色が悪い。
まあ成仏していない時点で良くはないだろう。
(自殺か…?)
僕は知らないフリをしてそのまま歩いていくが、次の曲がり角で曲がる。そこは人通りが少ないので話を聞くのには丁度良い。
案の定幽霊はついてきており、僕が待ち伏せしているとは思わず、驚いて戸惑っている。
「何かご用ですか?」
僕は幽霊の狙いを探ろうと思う。
しばらく幽霊は黙った。
「言わないと、どうしようもないと思いますけど?」
少し急かしてしまったが、僕の今の言葉で、幽霊はようやく小さい声で話し出す。
聞いた話によると、彼は交通事故で亡くなったらしい。暴走車が彼のいた本屋に突っ込んで来て、運悪く彼は車にぶつかり、死んでしまったらしい。
「戻りたいんだよ…生きていた頃に…」
幽霊はそう言うと、一粒の涙を流した。
「辛かったですね…ならせめて僕は貴方が幸せになるように祈りましょう。」
幽霊は何を言っているのか分からないといった表情をした。
僕は、人が来ないことを確認して幽霊の前で手を合わせる。
「天と地を繋ぎし者よ。光と闇を司る者よ。その力を持ちて、悲しき者の願いを聞き届けよ。我、弱き者の真なる道標とならん。」
僕が今のような祝詞を言うと、幽霊の周りが光出していく。
「温かい…」
幽霊が一言そう言った。
「どうか、貴方様の来世に天秤の護りがあらんことを。」
僕が最後に祈ると、
「ありがとう…あなたのおかげで幸せになれそうだ…」
と幽霊が泣きながら笑った。僕も少し笑い、別れを言った。そして幽霊は光に包まれ消えていった。
幽霊が消えた後、僕はすぐに帰り道に戻る。町の端側に長い階段があり、その階段を登ったところには僕の家の命龍神社という神社がある。
家に着き、ただいまと言うが、誰の返事もない。もうこのやりとりはもう何回目か分からない。
僕は、洗面所で手と顔を洗う。その後、かけていた眼鏡を外し、髪をオールバックにあげ、袴に着替える。
そう、僕はこの命龍(みょうりゅう)神社の男巫。いわゆる宮司だ。
小さい頃から霊力がとんでもなく強く、誰かの声などが聞こえたり、特殊能力の眼も持っている。あとは先程のように幽霊を成仏させることも出来るなど恵まれた力と才能。
周りからは神やあるいは神の祝福を受けた幸せ者と言われてきたが、正直、この力のせいで、小さい頃は怖い思いをして、僕を狙って来る妖怪や人間がいたりした。
そのせいで、昔一緒に暮らしていた母と姉は死んでしまった。
2人はもう成仏しているため、話すことも出来ない。
父親は僕が小さい頃に母と離婚した。今はどこで何をしているのか分からない。
力を使えばあっという間にわかるが僕はあまり意味のないことに力を使いたくない。
周りが言う祝福されたこの力は僕にとっては呪われた力なのだから。
祝福は人や種類によっては呪いでもあるのだ。
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