上 下
1 / 6

第1話 祝福という名の呪い

しおりを挟む

皆様は、祝福と聞いて、どう想像しますか?
幸せなこと?健康になること?
そういった自分にとっていい方向にいくものを想像しますか?

実は、祝福とはある意味呪いでもあるのです。

これは、祝福によって大変な目にあう1人の男巫のお話です。














3月のある日、まだ寒さが残っており、僕は冷たくなっている手を息で温める。もちろん息を吹きかけただけではあまり効果はない。
かけている眼鏡が少し曇るだけだ。

僕、高原縁は今現在大学から家への帰り道を歩いている。
その途中にある電柱の陰から何かがこちらを見ているのに気がつく。

ああ…またいる。

僕はあえて無視しようとしたが、こちらを見ていた者はゆら~と後をついてくる。
少し後ろを見てみると、やはり足がない。
つまり、幽霊だ。

制服を着ているので多分中学生か高校生だったのだろう。幽霊だからか顔色が悪い。
まあ成仏していない時点で良くはないだろう。

(自殺か…?)

僕は知らないフリをしてそのまま歩いていくが、次の曲がり角で曲がる。そこは人通りが少ないので話を聞くのには丁度良い。
案の定幽霊はついてきており、僕が待ち伏せしているとは思わず、驚いて戸惑っている。

「何かご用ですか?」

僕は幽霊の狙いを探ろうと思う。
しばらく幽霊は黙った。

「言わないと、どうしようもないと思いますけど?」

少し急かしてしまったが、僕の今の言葉で、幽霊はようやく小さい声で話し出す。
聞いた話によると、彼は交通事故で亡くなったらしい。暴走車が彼のいた本屋に突っ込んで来て、運悪く彼は車にぶつかり、死んでしまったらしい。

「戻りたいんだよ…生きていた頃に…」

幽霊はそう言うと、一粒の涙を流した。

「辛かったですね…ならせめて僕は貴方が幸せになるように祈りましょう。」

幽霊は何を言っているのか分からないといった表情をした。
僕は、人が来ないことを確認して幽霊の前で手を合わせる。

「天と地を繋ぎし者よ。光と闇を司る者よ。その力を持ちて、悲しき者の願いを聞き届けよ。我、弱き者の真なる道標とならん。」

僕が今のような祝詞を言うと、幽霊の周りが光出していく。

「温かい…」

幽霊が一言そう言った。

「どうか、貴方様の来世に天秤の護りがあらんことを。」

僕が最後に祈ると、

「ありがとう…あなたのおかげで幸せになれそうだ…」

と幽霊が泣きながら笑った。僕も少し笑い、別れを言った。そして幽霊は光に包まれ消えていった。

幽霊が消えた後、僕はすぐに帰り道に戻る。町の端側に長い階段があり、その階段を登ったところには僕の家の命龍神社という神社がある。
家に着き、ただいまと言うが、誰の返事もない。もうこのやりとりはもう何回目か分からない。
僕は、洗面所で手と顔を洗う。その後、かけていた眼鏡を外し、髪をオールバックにあげ、袴に着替える。

そう、僕はこの命龍(みょうりゅう)神社の男巫。いわゆる宮司だ。
小さい頃から霊力がとんでもなく強く、誰かの声などが聞こえたり、特殊能力の眼も持っている。あとは先程のように幽霊を成仏させることも出来るなど恵まれた力と才能。
周りからは神やあるいは神の祝福を受けた幸せ者と言われてきたが、正直、この力のせいで、小さい頃は怖い思いをして、僕を狙って来る妖怪や人間がいたりした。
そのせいで、昔一緒に暮らしていた母と姉は死んでしまった。
2人はもう成仏しているため、話すことも出来ない。
父親は僕が小さい頃に母と離婚した。今はどこで何をしているのか分からない。

力を使えばあっという間にわかるが僕はあまり意味のないことに力を使いたくない。



周りが言う祝福されたこの力は僕にとっては呪われた力なのだから。



祝福は人や種類によっては呪いでもあるのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

エロ・ファンタジー

フルーツパフェ
大衆娯楽
 物事は上手くいかない。  それは異世界でも同じこと。  夢と好奇心に溢れる異世界の少女達は、恥辱に塗れた現実を味わうことになる。

妻がヌードモデルになる日

矢木羽研
大衆娯楽
男性画家のヌードモデルになりたい。妻にそう切り出された夫の動揺と受容を書いてみました。

最近様子のおかしい夫と女の密会現場をおさえてやった

家紋武範
恋愛
 最近夫の行動が怪しく見える。ひょっとしたら浮気ではないかと、出掛ける後をつけてみると、そこには女がいた──。

入れ替わった二人

廣瀬純一
ファンタジー
ある日突然、男と女の身体が入れ替わる話です。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

処理中です...