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1984年(昭和59年)11月25日(日曜日)
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「僕らは今、普通の高校生が普通のデートをしているんだよ」
僕は加奈に向かって言った。
「そうだよね。言われてみればその通りだよね」
彼女はそう言ってクスクスと笑った。
「そうだよ」
僕も笑って言った。
僕らは今、昭和59年の男子高生と平成29年の女子高生が普通のデートをしているんだ。
僕は例えそれが束の間の短い時間の間だけだったとしても今はそう考える事にした。
僕は腕時計を見た。
「運命の時間が近付いてるみたいだよ」
僕はそう言って立ち上がった。
場外馬券場に戻ってみると、いよいよメインレースの発走時間が近付いて来て館内は重苦しい熱気に包まれていた。
オッズモニターを見ると東京10レース、ジャパンカップの馬券発売締切まで残り5分を切っている。
東京競馬場を移したモニターには騎手を背にした出走馬が既にゲート付近に集まっている様子が映し出されていた。
時折、馬と騎手の姿がアップになると、出走14頭中の10頭が外国からの招待馬なので外国人騎手の姿が目立つ。
「何だかスゴい雰囲気だね」
加奈が周囲を見渡しながら圧倒された様に言う。
「熱気が凄いな」
僕も頷いた。発売締切3分前にアナウンスが流れモニターの締切残り時間表示枠が赤く変わると周囲がより一層騒がしくなった様に感じた。
スタート地点のゲート手前を移したモニターに時折黄色いヘルメットを被った西浦騎手を背にした10番カツラギエースの姿が映し出されると僕らの視線は自然に熱くなった。
「ねえ、カツラギエース大丈夫かな?大丈夫だよね?」
加奈がこの期に及んですがる様な目で僕を見て言う。
そんな事を僕に聞かれてもと思ったけれどそう言ってしまう訳にもいかない。
「大丈夫だよ。だって君が今いるこの時間と君が昨日までいた時間は同じ時間の流れで繋がっている筈なんだから」
僕は自分自身にもそう言い聞かせた。
やがて馬券発売締切のブザーが響き渡ると館内の喧騒は無数のざわめきに変わって東京競馬場が映し出されたモニターの周りには人だかりが出来始めた。
発売締切から発走時間迄は3分位しか無い。
僕と加奈は人だかりに混じってモニターを見上げた。
「うわあ何だかスゴくドキドキしてきた」
モニターに見入っている加奈が言った。
「平常心だよ。平常心」
僕は自分自身に言い聞かせながら言った。
僕は加奈に向かって言った。
「そうだよね。言われてみればその通りだよね」
彼女はそう言ってクスクスと笑った。
「そうだよ」
僕も笑って言った。
僕らは今、昭和59年の男子高生と平成29年の女子高生が普通のデートをしているんだ。
僕は例えそれが束の間の短い時間の間だけだったとしても今はそう考える事にした。
僕は腕時計を見た。
「運命の時間が近付いてるみたいだよ」
僕はそう言って立ち上がった。
場外馬券場に戻ってみると、いよいよメインレースの発走時間が近付いて来て館内は重苦しい熱気に包まれていた。
オッズモニターを見ると東京10レース、ジャパンカップの馬券発売締切まで残り5分を切っている。
東京競馬場を移したモニターには騎手を背にした出走馬が既にゲート付近に集まっている様子が映し出されていた。
時折、馬と騎手の姿がアップになると、出走14頭中の10頭が外国からの招待馬なので外国人騎手の姿が目立つ。
「何だかスゴい雰囲気だね」
加奈が周囲を見渡しながら圧倒された様に言う。
「熱気が凄いな」
僕も頷いた。発売締切3分前にアナウンスが流れモニターの締切残り時間表示枠が赤く変わると周囲がより一層騒がしくなった様に感じた。
スタート地点のゲート手前を移したモニターに時折黄色いヘルメットを被った西浦騎手を背にした10番カツラギエースの姿が映し出されると僕らの視線は自然に熱くなった。
「ねえ、カツラギエース大丈夫かな?大丈夫だよね?」
加奈がこの期に及んですがる様な目で僕を見て言う。
そんな事を僕に聞かれてもと思ったけれどそう言ってしまう訳にもいかない。
「大丈夫だよ。だって君が今いるこの時間と君が昨日までいた時間は同じ時間の流れで繋がっている筈なんだから」
僕は自分自身にもそう言い聞かせた。
やがて馬券発売締切のブザーが響き渡ると館内の喧騒は無数のざわめきに変わって東京競馬場が映し出されたモニターの周りには人だかりが出来始めた。
発売締切から発走時間迄は3分位しか無い。
僕と加奈は人だかりに混じってモニターを見上げた。
「うわあ何だかスゴくドキドキしてきた」
モニターに見入っている加奈が言った。
「平常心だよ。平常心」
僕は自分自身に言い聞かせながら言った。
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