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1984年(昭和59年)11月25日(日曜日)
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福沢加奈がコーヒーを入れたカップを2つ盆に載せて居間に戻って来た。
「どうもありがとう」
僕は新聞を置いてカップを手に取りコーヒーを飲んだ。
僕らは再び束の間ののんびりとした時間の中で寛いだ。
「ちょっとその新聞読ませて貰ってもいいかな?」
彼女が言ったので僕は手元にあった新聞を彼女に差し出した。
彼女は新聞を手に取って、彼女にとっては33年前に起こった出来事が書かれている記事を熱心に読み始めた。
僕はコーヒーカップを手に、少し不思議な気がしながら彼女が新聞を読んでいる姿を眺めていた。
当たり前の事ながら僕には今後33年の間に世の中でどの様な事が起こるのか何一つわからない。
しかし今目の前にいる少女は少なくともある程度は僕の知らない歴史や出来事を知っている筈だ。
昨日の夜、彼女が見せてくれた(スマホ)は今後33年間の技術進歩がどれ程のモノかを現物で物語っていた。
今後世の中は一体どの様に変わって行くのだろう。
ふとそんな興味が湧いて来る。
今目の前の彼女の姿を見ている限りでは少なくとも今後33年の間に世界で全面核戦争が起こってしまう様な事は無いみたいだ。
僕は今、将来に起こる出来事を彼女に聞いてみる事が出来る状況にある。
だけど僕は彼女と違って1984年11月25日日曜日の朝を自然な時空の流れの中で生きている人間だ。
そんな僕が本来知る筈の無い、将来の出来事を知ってしまった場合、一体どういう事になるだろうかという得体の知れない不安もある。
例えばもし彼女が知っている彼女にとっての過去の出来事を将来僕が変えてしまったとしたら、それが一体どういう結果をもたらす事になるのか僕にはわからない。
そこには何と無く、ある種の危険の可能性が潜んでいる様な気がしなくもない。
でもやっぱり少し位は知ってみたいと云う衝動もある。
「ところでさ」
結局僕は思い切って話を切り出した。
「うん?何?」
彼女は新聞から顔を上げて僕を見た。
「今から33年後の世界では世の中がどんな風に変わっているのか少しだけ聞いてみたいと思ってさ」
「うーん、そりゃ色々あるとは思うんだけどさ。例えばどんな事?」
彼女はそう言ってコーヒーを一口飲んだ。
そう言われてみると、すぐには質問が思い付けなかった。
僕は慎重に質問を考えた。
「うーん、そうだな。例えば2017年にはアメリカとソ連の関係は一体どうなっているんだろう?」
僕は言いながら、多分この両国間の関係は30年以上経ったとしても、本質的には何も変わってないんだろうなと内心思っていた。
「ソ連?ソ連って昔のロシアの事だよね?
ソ連っていう国はワタシが生まれた時には、もうとっくの昔に無くなってたみたいだよ」
「えっ?そうなの?本当に?」
いきなり物凄い大スクープが飛び込んで来たので僕はとても驚いた。
「どうもありがとう」
僕は新聞を置いてカップを手に取りコーヒーを飲んだ。
僕らは再び束の間ののんびりとした時間の中で寛いだ。
「ちょっとその新聞読ませて貰ってもいいかな?」
彼女が言ったので僕は手元にあった新聞を彼女に差し出した。
彼女は新聞を手に取って、彼女にとっては33年前に起こった出来事が書かれている記事を熱心に読み始めた。
僕はコーヒーカップを手に、少し不思議な気がしながら彼女が新聞を読んでいる姿を眺めていた。
当たり前の事ながら僕には今後33年の間に世の中でどの様な事が起こるのか何一つわからない。
しかし今目の前にいる少女は少なくともある程度は僕の知らない歴史や出来事を知っている筈だ。
昨日の夜、彼女が見せてくれた(スマホ)は今後33年間の技術進歩がどれ程のモノかを現物で物語っていた。
今後世の中は一体どの様に変わって行くのだろう。
ふとそんな興味が湧いて来る。
今目の前の彼女の姿を見ている限りでは少なくとも今後33年の間に世界で全面核戦争が起こってしまう様な事は無いみたいだ。
僕は今、将来に起こる出来事を彼女に聞いてみる事が出来る状況にある。
だけど僕は彼女と違って1984年11月25日日曜日の朝を自然な時空の流れの中で生きている人間だ。
そんな僕が本来知る筈の無い、将来の出来事を知ってしまった場合、一体どういう事になるだろうかという得体の知れない不安もある。
例えばもし彼女が知っている彼女にとっての過去の出来事を将来僕が変えてしまったとしたら、それが一体どういう結果をもたらす事になるのか僕にはわからない。
そこには何と無く、ある種の危険の可能性が潜んでいる様な気がしなくもない。
でもやっぱり少し位は知ってみたいと云う衝動もある。
「ところでさ」
結局僕は思い切って話を切り出した。
「うん?何?」
彼女は新聞から顔を上げて僕を見た。
「今から33年後の世界では世の中がどんな風に変わっているのか少しだけ聞いてみたいと思ってさ」
「うーん、そりゃ色々あるとは思うんだけどさ。例えばどんな事?」
彼女はそう言ってコーヒーを一口飲んだ。
そう言われてみると、すぐには質問が思い付けなかった。
僕は慎重に質問を考えた。
「うーん、そうだな。例えば2017年にはアメリカとソ連の関係は一体どうなっているんだろう?」
僕は言いながら、多分この両国間の関係は30年以上経ったとしても、本質的には何も変わってないんだろうなと内心思っていた。
「ソ連?ソ連って昔のロシアの事だよね?
ソ連っていう国はワタシが生まれた時には、もうとっくの昔に無くなってたみたいだよ」
「えっ?そうなの?本当に?」
いきなり物凄い大スクープが飛び込んで来たので僕はとても驚いた。
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