24 / 52
1984年(昭和59年)11月25日(日曜日)
12
しおりを挟む
僕の質問攻めが終わると、僕らは会話が途切れてしまい、福沢加奈は再び新聞に目を通し始めた。
僕は彼女に聞いてしまった事で受ける事になった衝撃の余韻が暫くの間収まらなかったけど、少し収まって来ると、さてこれからどうしようかと考えた。
しかしいくら思案を巡らせても何も思い浮かんでは来なかった。
「ちょっと、これ!」
新聞の紙面をじっと睨んでいた彼女が突然叫んだ。
「えっ?何?どうした?」
僕は聞いてみたけど、彼女は何も言わず暫くの間、難しい顔をして新聞の紙面のどこか一点をじっと凝視していた。
「40、1倍」
また彼女が唐突に叫んだ。
「40、1倍?」
僕は何の事だかさっぱりわからず聞き返した。
彼女は突然ソファーから立ち上がり、新聞を手にしたままテーブルの向かい側に座っていた僕の所にやって来た。
僕は彼女が突然、体がくっ付く位の所まで近寄って来たので思わずドキッとした。
「これ!このジャパンカップで勝つのはこの馬だよ!」
彼女は顔がくっ付く位の距離まで寄って来て全国紙のスポーツ面の下の方にある一点を指差した。
彼女が指していたのは今日の東京競馬場メインレース、ジャパンカップの小さな出馬表だった。
「えっ?」
僕は思わず彼女の指先に目を凝らした。
「ほら、このカツラギエースっていう馬!」
僕は新聞を手に取って小さく出ている出馬表をじっくりと眺めた。
スポーツ紙と違い、全国紙のスポーツ面に載っている競馬の出馬表には出走馬や前売り単勝オッズ等が簡単に記されているだけだ。
6枠10番カツラギエース(日本)
下の方に出ている前売り単勝オッズを見ると、この馬の単勝オッズは彼女の言う通り40、1倍となっていて、他の馬のオッズと比較してみると14頭の出走馬中10番目の人気だった。
「何でこの馬が勝つってわかるのかな?」
僕は彼女に聞いてみた。
「割と最近、偶然見た事があるから」
彼女は答えた。
「割と最近、偶然見た事がある?」
僕はよくわからなくて、そのまま繰り返した。
「ワタシの友達のお父さんが競馬好きらしくてさ」
彼女は話し始めた。
「で、その友達がお父さんに今までで一番思い出に残っている馬の名前を聞いてみたんだって」
「へえ」
僕は相槌を打った。
「そうしたらお父さんはカツラギエースって馬だって答えたんだって。まあ、その時は、へえって思っただけだったんだけど、そのあと、暇潰しにネットしてて何故だかその話を思い出しちゃってさ」
「なる程」
「何だか妙に気になったんでYOUTUBEでググってみたらこのジャパンカップってレースが出てきたんで観てみたらこのカツラギエースって馬が勝ってたんだよ!」
「要するに今日これからやるレースを実際に見たって言う事?」
彼女の話の中には(ゆうちゅうぶ)とか何とか、よくわからない部分があったけど一先ずそれは置く事にした。
「そうだよ!そう言う事なのよ!」
彼女が興奮気味に答えた。
僕も彼女が言わんとしている事がわかって思わず緊張と興奮が込み上げて来た。
僕は彼女に聞いてしまった事で受ける事になった衝撃の余韻が暫くの間収まらなかったけど、少し収まって来ると、さてこれからどうしようかと考えた。
しかしいくら思案を巡らせても何も思い浮かんでは来なかった。
「ちょっと、これ!」
新聞の紙面をじっと睨んでいた彼女が突然叫んだ。
「えっ?何?どうした?」
僕は聞いてみたけど、彼女は何も言わず暫くの間、難しい顔をして新聞の紙面のどこか一点をじっと凝視していた。
「40、1倍」
また彼女が唐突に叫んだ。
「40、1倍?」
僕は何の事だかさっぱりわからず聞き返した。
彼女は突然ソファーから立ち上がり、新聞を手にしたままテーブルの向かい側に座っていた僕の所にやって来た。
僕は彼女が突然、体がくっ付く位の所まで近寄って来たので思わずドキッとした。
「これ!このジャパンカップで勝つのはこの馬だよ!」
彼女は顔がくっ付く位の距離まで寄って来て全国紙のスポーツ面の下の方にある一点を指差した。
彼女が指していたのは今日の東京競馬場メインレース、ジャパンカップの小さな出馬表だった。
「えっ?」
僕は思わず彼女の指先に目を凝らした。
「ほら、このカツラギエースっていう馬!」
僕は新聞を手に取って小さく出ている出馬表をじっくりと眺めた。
スポーツ紙と違い、全国紙のスポーツ面に載っている競馬の出馬表には出走馬や前売り単勝オッズ等が簡単に記されているだけだ。
6枠10番カツラギエース(日本)
下の方に出ている前売り単勝オッズを見ると、この馬の単勝オッズは彼女の言う通り40、1倍となっていて、他の馬のオッズと比較してみると14頭の出走馬中10番目の人気だった。
「何でこの馬が勝つってわかるのかな?」
僕は彼女に聞いてみた。
「割と最近、偶然見た事があるから」
彼女は答えた。
「割と最近、偶然見た事がある?」
僕はよくわからなくて、そのまま繰り返した。
「ワタシの友達のお父さんが競馬好きらしくてさ」
彼女は話し始めた。
「で、その友達がお父さんに今までで一番思い出に残っている馬の名前を聞いてみたんだって」
「へえ」
僕は相槌を打った。
「そうしたらお父さんはカツラギエースって馬だって答えたんだって。まあ、その時は、へえって思っただけだったんだけど、そのあと、暇潰しにネットしてて何故だかその話を思い出しちゃってさ」
「なる程」
「何だか妙に気になったんでYOUTUBEでググってみたらこのジャパンカップってレースが出てきたんで観てみたらこのカツラギエースって馬が勝ってたんだよ!」
「要するに今日これからやるレースを実際に見たって言う事?」
彼女の話の中には(ゆうちゅうぶ)とか何とか、よくわからない部分があったけど一先ずそれは置く事にした。
「そうだよ!そう言う事なのよ!」
彼女が興奮気味に答えた。
僕も彼女が言わんとしている事がわかって思わず緊張と興奮が込み上げて来た。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

金字塔の夏
阿波野治
ライト文芸
中学一年生のナツキは、一学期の終業式があった日の放課後、駅ビルの屋上から眺めた景色の中に一基のピラミッドを発見する。親友のチグサとともにピラミッドを見に行くことにしたが、様々な困難が二人の前に立ちはだかる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる