彼女の危機と何とか彼女を守りたかった僕の話

河内ひつじ

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1984年(昭和59年)11月25日(日曜日)

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第2次大戦後から1984年の現在まで40年近くずっと世界を東西に2分している2大超大国の内の一国が2017年より遥か以前に無くなっている?
ソ連の昔はロシア、ロシアの昔はソ連。
僕の頭は少し混乱し始めた。

「無くなったというのは何か大きな戦争でも起こったのかな?」

僕は聞き返しながら、自分が次第に禁断の領域に足を踏み入れようとしているのを感じた。

「ううん、別に大きな戦争は起こっていないと思う。ソ連は確か1991年に崩壊したって学校で習った気がする」

1991年に崩壊。今から7年後に起こる出来事だ。
もし僕が他の誰かにこの事を話したとしてもそれは予言にしかならない。

「それで崩壊後、どうなったの?」

「崩壊後、旧ソ連はロシアとかウクライナとかウズベキスタンとかその他色々ややこしい名前の幾つかの国に別れた」

どうやら7年後、ソ連の国内で何か大きな動きがあってクレムリン体制が崩壊し、連邦は分割される事になるみたいだ。ウズベキスタン?
僕は興奮と動揺を押さえながらコーヒーを一口飲んだ。

「じゃあ、その後東ドイツとかはどうなったんだろう?」

「ドイツはソ連崩壊の少し前に一つの国になってた。市民がみんなで国境にあった壁を壊しに行ってるのをテレビで見た事がある」

市民がみんなで壁を壊しに行くというのが、どういう状況で起こった事なのか良くはわからなかったけれど、どうやら数年後には鉄のカーテンも無くなってしまうらしい。
世界は今後もずっと変わり続けて、時として突如、大変動を迎えたりするみたいだ。
僕はとうとう知るべきではなかった事実を幾つか知ってしまったと思ったけど、もはや好奇心が押さえられなくなっていた。

「じゃあ中国は?2017年には中国も共産主義国家では無くなってるのかな?」

僕は質問を続けた。

「ううん。中国はワタシが小学生の時に日本を抜いて世界第2位の経済大国になったんだけど、2017年になっても共産党が支配している国のまんまだよ」

「中国が世界2位の経済大国!?」

またしても想像を遥かに超えた特大スクープが飛び込んで来て思わず大声を出してしまった。
体制が変わらず続いている事よりも、今の中国が将来、日本を上回る程の経済大国になっているなんて到底信じられなかった。

「うん、中国は半端ない経済成長を続けたみたいだから」

彼女はケロリとした口調で言って、コーヒーカップを口に運んだ。
将来がどうなっているのかなんて本当によくわからないものだと思った。
流石にこれ以上は聞いてしまうのが怖くなって来てしまった。
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