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1984年(昭和59年)11月25日(日曜日)
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「すっかり言いそびれてたけど僕は鈴木。鈴木恭介」
「ワタシは福沢加奈」
彼女はまだ申し訳無さそうにうなだれて言った。
「何はともあれ、取り合えずここを出よう」
僕は彼女を連れてコインランドリーを出た。
すぐ目の前はサンチェーンで店の中の照明が目に眩しい。
腕時計を見るともう時計の針は午前0時を回っていた。
僕は正直、内心まだ興奮が醒めず、少し混乱している。
自分が今一緒にいる少女がどうやら未来から来たらしいという事がまだどうしても信じられずにいた。
「所で君はいつからこっち(1984年)の世界をさ迷い歩く事になったんだろう?」
僕は彼女に聞いてみた。
「昨日の夜の7時頃から」
彼女は答えた。
「晩御飯は食べた?」
「ううん。でも大丈夫」
「腹が減ってるだろう?今、家には何も無いからここで弁当でも買ってから行こう」
僕はサンチェーンの方を見て言った」
「でも」
「それ位全然気にしなくっていいよ。だって君、今ここで使えるお金なんて持ってないだろう?」
「あと121円だけ持ってる」
彼女は言った。
「121円?」
「うん。昭和59年より前のお金があと121円財布の中に入ってる」
「それは取り合えず大事に持ってた方がいいよ」
僕はそう言って彼女を連れてサンチェーンの中に入って行った。
弁当コーナーに行ってみると、弁当は唐揚げ弁当位しか残っていなかった。
「唐揚げ弁当しか無いけど、それでいいかな?」
僕が聞くと彼女は遠慮がちに頷いた。
僕は唐揚げ弁当をカゴに入れ、一応他のモノも見て回った。
「今はちょっと色々あってさ。チョコレートとかお菓子があまり店で買えないんだよ」
普段はチョコレート菓子なんかが並べられていた辺りを歩きながら彼女に言った。
「グリコ(森永)事件?」
彼女が僕に訊ねた。
「知ってたんだ?」
僕は少し驚いて聞き返した。
「事件の事は時々テレビで観た事があったし、(こっち)でずっと歩き回っていた時にテレビのニュースか何かで言ってたのが何処かから聞こえてた」
「じゃあ君はひょっとしてこの事件で捕まった犯人の顔とか知ってたりするの?」
周囲に人はいなかったけど声を潜めて聞いてみた。
「いや、知らないけど。って言うか確かこの事件の犯人って結局見付からないまま時効になったって言ってた気がする」
「えっ、そうなの?」
僕は少し驚いてしまった。
今年の春からもう半年以上、世間を騒がし続けている(かい人21面相)が結局捕らえられる事が無く事件は未解決のまま終わってしまう?
僕は意外な結末を知り驚くと同時に、本来なら僕が知る筈の無い事実を一つ知ってしまった事に気付いた。
「ワタシは福沢加奈」
彼女はまだ申し訳無さそうにうなだれて言った。
「何はともあれ、取り合えずここを出よう」
僕は彼女を連れてコインランドリーを出た。
すぐ目の前はサンチェーンで店の中の照明が目に眩しい。
腕時計を見るともう時計の針は午前0時を回っていた。
僕は正直、内心まだ興奮が醒めず、少し混乱している。
自分が今一緒にいる少女がどうやら未来から来たらしいという事がまだどうしても信じられずにいた。
「所で君はいつからこっち(1984年)の世界をさ迷い歩く事になったんだろう?」
僕は彼女に聞いてみた。
「昨日の夜の7時頃から」
彼女は答えた。
「晩御飯は食べた?」
「ううん。でも大丈夫」
「腹が減ってるだろう?今、家には何も無いからここで弁当でも買ってから行こう」
僕はサンチェーンの方を見て言った」
「でも」
「それ位全然気にしなくっていいよ。だって君、今ここで使えるお金なんて持ってないだろう?」
「あと121円だけ持ってる」
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「121円?」
「うん。昭和59年より前のお金があと121円財布の中に入ってる」
「それは取り合えず大事に持ってた方がいいよ」
僕はそう言って彼女を連れてサンチェーンの中に入って行った。
弁当コーナーに行ってみると、弁当は唐揚げ弁当位しか残っていなかった。
「唐揚げ弁当しか無いけど、それでいいかな?」
僕が聞くと彼女は遠慮がちに頷いた。
僕は唐揚げ弁当をカゴに入れ、一応他のモノも見て回った。
「今はちょっと色々あってさ。チョコレートとかお菓子があまり店で買えないんだよ」
普段はチョコレート菓子なんかが並べられていた辺りを歩きながら彼女に言った。
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「知ってたんだ?」
僕は少し驚いて聞き返した。
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「いや、知らないけど。って言うか確かこの事件の犯人って結局見付からないまま時効になったって言ってた気がする」
「えっ、そうなの?」
僕は少し驚いてしまった。
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