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1984年(昭和59年)11月24日(土曜日)
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再び冷たい空気がより一層冷やかに感じられた。
未来から来た? 目の前にいるこの子が?
何気無く腕時計に目をやると後十分程で午前零時になろうとしていた。
何も無く何だか空しいままに終わろうとしていた連休中の一日が正にその土壇場に来て思いもよらない事態に遭遇してしまう事になったと内心思った。
彼女の言っている事が余りにも衝撃過ぎて、すぐには言葉が出て来ない。
「じゃあ君はへいせい?(僕が目で問うと彼女は目で頷いた)18年からこの昭和59年にやって来たの?」
やっとの事で僕は言った。
「ワタシは平成29年11月24日から、ここに来た」
彼女は答えた。
平成29年と言われても、僕には一体いつなのか良くわからなかった。
「平成29年というのは西暦で言うと何年になるんだろう?」
「2017年」
彼女は即答した。
僕は思わず目を見開き、息を呑んだ。
2017年。今から33年後の未来。
「それで君は2017年から何をしにここ
に来たの?」
「こんな所に自分の意志で来るワケないでしょう!」
急に声を荒げて彼女は怒鳴った。
本気で腹を立てたみたいだ。
彼女に怒鳴られて、ようやく自分の質問が愚問だった事に気付いた。
いくら33年後の世界の未来人だと言っても17歳の女の子が自分で33年前の過去に遡って来るなんて、普通に考えたら考えられない。
「じゃあ一体何があったの?」
「知らない女の人に連れて来られた」
「連れて来られた?」
「そう」
「それで、その女の人は?」
「知らない。たぶん向こうの世界にいる」
一体どういう事なのか、正直な所、今の彼女の話を聞いただけでは良くはわからなかった。
「ねえ」
顔を俯けた彼女が言った。
「こんな事、本当は今会ったばかりのアナタに言いたくは無いんだけどワタシ今、本当に困ってるの」
「そうだろうね」
打ちひしがれて、疲れきった表情をしている彼女を見て僕は答えた。
ほんの少しの間、僕らは本当に小さくて狭いコインランドリーの中で黙ったまま向かい合っていた。
その間、彼女は俯いたままで、僕は次に口にするべき言葉を探していた。
「わかった。じゃあ、今晩はひとまず僕の家に来ればいいよ。僕は全然構わない」
彼女が本当に未来人だろうが、そうじゃ無かろうが今のこの状況ではそう言う以外にない気がした。
「本当にいいの?」
彼女は俯いたままで言った。
「だって今の君には行く所なんて何処にも無いんだろう?こんな所で一晩も過ごせる訳無いし、こうなった以上、君をここに放ったらかしにして帰る訳にもいかない」
「じゃあ、お願い。今晩だけ君の家に居させて貰っていい?ワタシ今本当にどうしたらいいのかワカラなくて」
「じゃあ、とりあえず僕の家に来て今日はゆっくりと寝た方がいい。大丈夫、僕の家では君が心配する様な事は何も起こらないから」
彼女を安心させる為に僕は言った。
「会ったばかりでいきなり迷惑かける事になっちゃって本当にゴメンなさい」
彼女はそう言って僕に頭を下げた。
「君は何も気にする事なんか無いよ。これは僕の良心の問題だから」
僕は答えた。
未来から来た? 目の前にいるこの子が?
何気無く腕時計に目をやると後十分程で午前零時になろうとしていた。
何も無く何だか空しいままに終わろうとしていた連休中の一日が正にその土壇場に来て思いもよらない事態に遭遇してしまう事になったと内心思った。
彼女の言っている事が余りにも衝撃過ぎて、すぐには言葉が出て来ない。
「じゃあ君はへいせい?(僕が目で問うと彼女は目で頷いた)18年からこの昭和59年にやって来たの?」
やっとの事で僕は言った。
「ワタシは平成29年11月24日から、ここに来た」
彼女は答えた。
平成29年と言われても、僕には一体いつなのか良くわからなかった。
「平成29年というのは西暦で言うと何年になるんだろう?」
「2017年」
彼女は即答した。
僕は思わず目を見開き、息を呑んだ。
2017年。今から33年後の未来。
「それで君は2017年から何をしにここ
に来たの?」
「こんな所に自分の意志で来るワケないでしょう!」
急に声を荒げて彼女は怒鳴った。
本気で腹を立てたみたいだ。
彼女に怒鳴られて、ようやく自分の質問が愚問だった事に気付いた。
いくら33年後の世界の未来人だと言っても17歳の女の子が自分で33年前の過去に遡って来るなんて、普通に考えたら考えられない。
「じゃあ一体何があったの?」
「知らない女の人に連れて来られた」
「連れて来られた?」
「そう」
「それで、その女の人は?」
「知らない。たぶん向こうの世界にいる」
一体どういう事なのか、正直な所、今の彼女の話を聞いただけでは良くはわからなかった。
「ねえ」
顔を俯けた彼女が言った。
「こんな事、本当は今会ったばかりのアナタに言いたくは無いんだけどワタシ今、本当に困ってるの」
「そうだろうね」
打ちひしがれて、疲れきった表情をしている彼女を見て僕は答えた。
ほんの少しの間、僕らは本当に小さくて狭いコインランドリーの中で黙ったまま向かい合っていた。
その間、彼女は俯いたままで、僕は次に口にするべき言葉を探していた。
「わかった。じゃあ、今晩はひとまず僕の家に来ればいいよ。僕は全然構わない」
彼女が本当に未来人だろうが、そうじゃ無かろうが今のこの状況ではそう言う以外にない気がした。
「本当にいいの?」
彼女は俯いたままで言った。
「だって今の君には行く所なんて何処にも無いんだろう?こんな所で一晩も過ごせる訳無いし、こうなった以上、君をここに放ったらかしにして帰る訳にもいかない」
「じゃあ、お願い。今晩だけ君の家に居させて貰っていい?ワタシ今本当にどうしたらいいのかワカラなくて」
「じゃあ、とりあえず僕の家に来て今日はゆっくりと寝た方がいい。大丈夫、僕の家では君が心配する様な事は何も起こらないから」
彼女を安心させる為に僕は言った。
「会ったばかりでいきなり迷惑かける事になっちゃって本当にゴメンなさい」
彼女はそう言って僕に頭を下げた。
「君は何も気にする事なんか無いよ。これは僕の良心の問題だから」
僕は答えた。
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