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卒業

その4 卒業 1

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山北地方を日本海に沿って伸びている山北本線。

その総路線距離は673キロにも及び、国内の在来線最長区間である為に山北本線は(長大なローカル線)とも呼ばれている。

その沿線にある人口11万人、過疎化が顕著な山北地方では有数の都市である鷹野市。

その鷹野市街を流れて日本海に注いでいる神手川を反対に上流へ南の山々の方へ向かって遡って行くとやがて支流の美奥川が合流している地点に辿り着き、美奥川を少し遡った場所に美奥温泉郷というささやかな温泉地がある。

僕は生まれてから高校2年の終わりまでの間、美奥温泉郷の近くのひっそりとした集落で祖父が3歳で他界してからはずっと祖母と2人だけで暮らしてきた。

その頃、美奥温泉郷には美奥川の川岸に無料で入浴する事が出来る共同露天風呂があった。

僕が祖母と暮らしていた集落の古い家から温泉郷までは子供の足で歩いても30分程、自転車に乗れば10分程で行く事が出来たので僕は子供の頃よく手拭い一枚だけを持って自転車に乗り温泉郷の露天風呂に浸かりに行った。

小学5年の時の11月半ばの日曜日、あの日はどんよりとした厚い雲が空一面を覆い、時折強い風が吹いていて肌寒い日だった。

僕はその日の午後、手拭いを持って一人で家を出て自転車で露天風呂に浸かりに行った。

山の麓を流れる美奥川に沿って何件かの温泉宿がひっそりと並んでいる温泉郷に入り道路の川側の脇に自転車を停めて手拭いを手に共同露天風呂がある河原の方に降りて行く。

露天風呂の入口にある脱衣場に入りそこで服を脱いでから浴場の方へ出て行った。

温泉宿が並んでいる道路側の三方は一応壁で覆われているけれども流れの早い美奥川に面した側は視界が開けている。

僕はかけ湯をしてから岩風呂の中に入り人心地ついて川の向こうのすっかり色づいた晩秋の山々の景色を眺めた。

空はどんよりとして少し薄暗いあいにくの天気少し寂寥とした風景にも感じられたがそれでも湯に浸かりながら見る深まった秋の眺めは気分を和ませた。

しばらくして脱衣場の方から入って来た3人連れの入浴者の中に僕とそれほど年の変わらなそうな女の子がいたので僕は驚いた。
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