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いちご白書を一度
その2 いちご白書を一度 6
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「川本君は映画観るの好き?」
しばらくして市原が僕の方に振り向いて僕に聞いた。
「そんなにたくさん映画を観たりはしてへんけど映画を観るんは好きかな」
僕は答えた。
「(いちご白書)って映画観た事ある?」
再び海の方を向いて市原が言った。
「(いちご白書)ってあの歌に出て来るやつ?」
「うん」
「いや、観た事無いけど」
僕は(いちご白書)という映画がある事はその映画名をタイトルにつけた歌があるので知っていたけれども、実際にその映画を観た事は無かった。
何となくその歌の歌詞のイメージから、悲哀を描いた恋愛映画なんだろうと思っていた。
{ウチもどんな映画なんかは、よう知らんけど、その(いちご白書)って映画、いっぺん観てみたいわあって時々思うんよ」
遠くを見ている目を細めながら市原が言った。
そう言えば僕もあの曲を聴く度に(いちご白書)というのが一体どんな映画なのかがよく気になった。
レンタルビデオ店に行けば、借りて観る事が出来るのだろうけれども、今僕は出来ればその(いちご白書)がどこか近くで再上映される事になって、今目の前にいる市原と一緒に観に行く事が出来たらいいのにと強く感じた。
出来る事なら、これからもっといろんな場所で彼女と2人きりの時間が過ごせる様になりたい。
「なあ、川本君」
市原が僕の方を向いて言った。
「うん?」
僕は彼女が真剣な眼差しで僕を見ているのを見て思わずドキッとした。
「急に決まった事じゃけど、ウチ来月九州の方に引っ越す事になったんよ」
とても静かな声で彼女は言った。
僕は驚いた。市原は静かに微笑んで静かな目で僕を見ていた。
「そうなんか」
僕はそう言った後、すぐには次の言葉が見つからなかった。
「そうか。それは寂しくなるなあ」
少しの間をおいてようやく僕は言った。
「せっかく転校して来たばっかしの川本君と仲良くなれたんじゃけどなあ。じゃけど今度はウチが転校する事になってしもうたわ」
市原はそう言って小さく笑った。
「それにウチはここで生まれて、ずっとここで育って来たけえな。ここを離れる事になるんはホンマに寂しいわ」
市原はそう言った後、再び視線を海の方に移した。
僕も彼女と並んで目の前に広がっている夕暮れ間近の海と島々を眺めた。
僕は何だか心の中に空白が広がっていく様な気分を感じながらも、僕自身がつい先月に転居と転校を経験したばかりなので、今の彼女の気持ちは何と無くわかる様な気がした。
「市原さんが遠くに行ってしまうんは本当に残念やけど、今の僕みたいに市原さんも新しい場所に行ったらそこでまた新しい出会いや楽しい経験がたくさん出来る様になると思うで」
彼女と同じ風景を眺めながら僕は言った。
「ありがとう。ウチ向こうに行っても新しい気分でまた頑張ってみるわ」
市原はそう言って僕に向かって微笑んでみせた。
しばらくして市原が僕の方に振り向いて僕に聞いた。
「そんなにたくさん映画を観たりはしてへんけど映画を観るんは好きかな」
僕は答えた。
「(いちご白書)って映画観た事ある?」
再び海の方を向いて市原が言った。
「(いちご白書)ってあの歌に出て来るやつ?」
「うん」
「いや、観た事無いけど」
僕は(いちご白書)という映画がある事はその映画名をタイトルにつけた歌があるので知っていたけれども、実際にその映画を観た事は無かった。
何となくその歌の歌詞のイメージから、悲哀を描いた恋愛映画なんだろうと思っていた。
{ウチもどんな映画なんかは、よう知らんけど、その(いちご白書)って映画、いっぺん観てみたいわあって時々思うんよ」
遠くを見ている目を細めながら市原が言った。
そう言えば僕もあの曲を聴く度に(いちご白書)というのが一体どんな映画なのかがよく気になった。
レンタルビデオ店に行けば、借りて観る事が出来るのだろうけれども、今僕は出来ればその(いちご白書)がどこか近くで再上映される事になって、今目の前にいる市原と一緒に観に行く事が出来たらいいのにと強く感じた。
出来る事なら、これからもっといろんな場所で彼女と2人きりの時間が過ごせる様になりたい。
「なあ、川本君」
市原が僕の方を向いて言った。
「うん?」
僕は彼女が真剣な眼差しで僕を見ているのを見て思わずドキッとした。
「急に決まった事じゃけど、ウチ来月九州の方に引っ越す事になったんよ」
とても静かな声で彼女は言った。
僕は驚いた。市原は静かに微笑んで静かな目で僕を見ていた。
「そうなんか」
僕はそう言った後、すぐには次の言葉が見つからなかった。
「そうか。それは寂しくなるなあ」
少しの間をおいてようやく僕は言った。
「せっかく転校して来たばっかしの川本君と仲良くなれたんじゃけどなあ。じゃけど今度はウチが転校する事になってしもうたわ」
市原はそう言って小さく笑った。
「それにウチはここで生まれて、ずっとここで育って来たけえな。ここを離れる事になるんはホンマに寂しいわ」
市原はそう言った後、再び視線を海の方に移した。
僕も彼女と並んで目の前に広がっている夕暮れ間近の海と島々を眺めた。
僕は何だか心の中に空白が広がっていく様な気分を感じながらも、僕自身がつい先月に転居と転校を経験したばかりなので、今の彼女の気持ちは何と無くわかる様な気がした。
「市原さんが遠くに行ってしまうんは本当に残念やけど、今の僕みたいに市原さんも新しい場所に行ったらそこでまた新しい出会いや楽しい経験がたくさん出来る様になると思うで」
彼女と同じ風景を眺めながら僕は言った。
「ありがとう。ウチ向こうに行っても新しい気分でまた頑張ってみるわ」
市原はそう言って僕に向かって微笑んでみせた。
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