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第2章
2-13 郡空の嘆き、そして決意
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────どうして、どうしてこんなことになっちゃったの……ッ!?
空は地面に倒れ伏す戸倉に駆け寄り、涙を流す。そしてこれまでの経緯を思い出し、歯噛みしていた。
事の始まりは数十分前。空はいつも行く河川敷で、一人、黄昏ていた。空は少し前までこの河川敷で、うじうじと一日のことを考え、怯える日々を過ごしていたのだ。しかし、昨日桜に励まされてから幾分か自分に自信を持てるようになり、少しは他人に心を開けるようになっていた。
なので、今日は昨日までと違い、ゆっくりと河川敷の景色を眺めるために訪れていたのだ。
心地の良い風が吹き、空の黒髪を揺らす。川の水は太陽の光に照らされ輝いており、遠くにはビルなどの建物が立ち並んでいる。絶景、とは言い難い都会ならではの灰色空模様ではあったが、今の空には全てが心地よく感じた。
「はーっ。いい風……。こんなに穏やかに過ごせるのって、久しぶりだな……」
空は誰に語るわけでもなく、一人呟く。高校生になってからただの一度も安息日はなく、辛い毎日だった。信じていた友達に裏切られ、虐めに気付いてくれた両親も、通り魔によって殺されてしまった。戸倉先輩がいなかったら、あの時頑張れた気がしない。と、空はあの日々を思い出し、ぎゅっと、唇を噛む。
しかし、戸倉先輩に慰めてもらった日でも、辛くて怖くて悔しくて。結局、完全に心が休まることは無かったのだ。だと言うのに、桜に悩みを聞いてもらい励ましてもらっただけで、心がこんなに軽くなるなんて……。おそらく、環境が変わったお陰もあるだろうが、桜の言葉には不思議と元気づけられ、もう大丈夫なんだと安心できたのだ。
もう少しこの余韻に浸っていよう。と、空が大の字になって原っぱに寝そべり、上を見上げた瞬間────。
「──あ、空ちゃんみぃーつけたぁ」
空の耳に、見知らぬ粘着質な声が聞こえたのだ。そして次の瞬間。心地よかった風が突風に変わり、周囲に吹き荒れ始めたのだ。突風に耐えきれなくなった空は、思わず隣に置いていた鞄で顔を覆い、目を閉じる。
暫くして突風が収まると、空はゆっくりと鞄を下ろし、目を開く。空が目を開くと、目の前には怪しい紫のローブを身に纏った人物が満面の笑みを浮かべ、佇んでいた。
ローブには夜空を思わせるような、星座に似た紋様が描かれており、一瞬、占い師? と、空は思う。しかし誰にせよ、突然現れた人物に、空は警戒を隠せないでいた。
「だ、誰ッ!?」
「ふふふ。そぉんなに警戒しないでよぅ! 私は『ナイトメア』。貴方の味方だよぉ?」
空の警戒心剥き出しの声に、ローブの人物──『ナイトメア』は粘着質な声で、嬉しそうに言葉を返した。そして、そんな巫山戯たようなナイトメアの話し方に、空は恐怖を覚える。
────どうしよう……。誘拐? 通り魔? 嫌だ……ッ! 折角毎日が楽しくなりそうなのに、こんな所で死にたくない……ッ!
空は弱みを見せないよう、必死に表情を取り繕ってはいるが、内心は恐怖に押し潰されて、泣き出してしまいそうだったのだ。そんな空の心を見透かしてか、ナイトメアは口元に笑みを浮かべたまま、一歩、空へと近づいてくる。
「────ッ!」
「あららぁ、怖がらせちゃったぁ? めんご、めんごぉ。怖がらないで? 私はただ、貴方のために、大切なことを伝えに来ただけなんだよぅ」
空の怯えように、ナイトメアは全く反省の色のない謝罪をする。
そして、それまで怯えていた空だったが、ナイトメアの一言により、『逃げ』の態勢から『聞く』態勢に体をシフトチェンジさせた。
未だ目の前の人物が怪しいというのは変わらないが、好奇心旺盛な空は、ナイトメアの言葉をどうしても聞き逃せなかったのだ。
「大切なこと……ですか? 一体なんでしょうか……?」
「そうそう、大切なことぉ! 時間が無いから、単刀直入に言うねぇ? 今ぁ、貴方の大切な人達が傷つけあってる。下手すれば、死んじゃうかもねぇ?」
ナイトメアは全く緊張感のない声で、さらりと衝撃の事実を告げる。ナイトメアの言葉に、空は驚きを隠せないように目を丸くする。そんな空の反応に、ますますナイトメアは嬉しそうに口元を歪めた。
「は……? 何、言って……?」
「うんうん。分かるよぉ。言ってる意味、わかんないよねぇ? でも、私が口にするよりぃ、見た方が早いよぉ? というわけで、どうするぅ? 行く? 行かない?」
状況が全く理解出来ていないのに、行くかどうかの選択を迫られ、空はさらに困惑する。一体誰が傷つけ合っているのかも、分からないのに。
でも、迷っていて、それでもし手遅れになったら? また、誰かを失ってしまったら? そんな思いが押し寄せ、空は覚悟を決めたようにナイトメアを強く見据えた。
「……行くよ。案内して」
「おぉ、流石は空ちゃん! 頭の回転が早い子は好きだよぉ?」
正直、ナイトメアをどこまで信用していいか、空はまだ判断がついていなかった。突然現れたこともそうだし、なにより、名乗ってもいないのに空の名前を知っていたのだ。怪しいところしかないのに、信用しろ、という方が難しいだろう。
────それでも、大切な人を失わないためなら、ついて行こう。
もし嘘でも、傷つくのは自分だけだ。そう自分を奮い立たせ、恐怖に震える心を押さえつけ、空はナイトメアを見据える。
「あははぁ。ほんと、可愛い子だねぇ。あ、そうだぁ。行く前に一つ」
ナイトメアは思い出したかのように声を上げ、その声色を一転させる。そんなナイトメアの変わりように、空はより一層体に力を入れ、身構えた。
「空ちゃん。君は力を手にする権利がある。運命に抗う力を、君は手にすることが出来る。全てを思い通りに出来るかもしれないし、出来ないかもしれない。それは空ちゃん次第だ。もし力が欲しいと思ったら、私に言って? 君にはその権利がある」
先程までの粘着質で巫山戯たような声色を変え、重苦しい声色に変えたナイトメアに、空は寒気を覚えた。言っている意味は分からなかったが、そんなのは今更だと思い、空は頭を軽く縦に振り、頷く。
ナイトメアは空の返事を満足気に見届けた後、パチンッ、と、指を鳴らす。すると、空の周囲に再び突風が吹き荒れ始めた。空は咄嗟に鞄で顔を覆い、目を閉じる。そして突風が収まり、空が目を開けると──。
────そこには戸倉の胸ぐらを掴む桜と、満身創痍でされるがままになっている戸倉の姿があった。
その後、空が困惑して何もできないまま事態は進み、どうすることも出来ず、ただ見ていることしか出来なかったのだ。
そして今、桜に敗れた戸倉が、空の目の前で地面に転がっている。戸倉は身体中傷だらけで、呼吸も荒く、素人の空が見ても、かなり危険な状態であることが分かった。
「先輩……ッ!? 戸倉先輩ッ! 大丈夫ですかッ!?」
空が必死に戸倉に呼びかけると、薄らと、戸倉は瞼を開く。
「うっ……あ……そ……らちゃん……?」
「ッ! 先輩ッ! よかった……。兎に角病院に行きましょう? 色々聞きたいことはありますが、先ずは先輩の命が優先です……ッ!」
「あっはは……あり……がとう……。やっぱり、空ちゃんは……優しい……ね」
戸倉は弱弱しく空の頭を撫で、軽く微笑む。その目には慈愛の色が差しており、空は胸が締め付けられる思いになった。
「でも……ね、もう、手遅れ……かな。僕は……ここで死ぬ」
「ッ!? な、なに言ってるんですか先輩……ッ! こんな時にそんな冗談、止めてください……ッ!」
戸倉の宣言に、空は激しく動揺する。そんな空の頬を、戸倉は安心させるようにそっと撫でる。
「ふふ、そうだったら……よかった……のに、ね……。僕達異能者は、死ぬと死体すら残らず消える。だから、僕の死体も残らない。でも……空ちゃんの記憶からは、消えたくないなぁ……ッ!」
「当たり前ですよッ! 私が先輩を忘れるわけないじゃないですか……ッ! 嫌……。死なないで、先輩ッ!」
戸倉の叫びに呼応するように、空も大粒の涙を流しながら叫ぶ。そんな空を見て、戸倉は満足げに笑い、一筋の涙を流した。
「やっぱり……空ちゃんの事……すき……だなぁ……ッ!」
「えっ……? せんぱ──」
戸倉の言葉の直後、戸倉の体は空中に溶けていき、瞬く間に戸倉は消え去った。空はその光景を絶望の眼差しで見つめ、愕然とする。
「あ……あぁ……ッ! アァァァッ!」
空の絶叫が、辺りに響く。またしても、信じていた友人に裏切られ、今度は大切な人を奪われてしまったのだ。
許せない。ユルセナイ……ッ!
空は、その目を狂気と殺意に満ちた色に変え、桜を睨む。そしてふと、先程ナイトメアが言っていた言葉を思い出す。
────そうだ。力……ッ! 私にも戦える力が、先輩の痛みを、桜に返せる力がッ! 私にあれば……ッ!
そして、空は力を手にすることを決意した。愛する先輩の為に。裏切った桜を、その手で殺すために。
────それが戸倉の思惑通りだとは、露知らず。
空は地面に倒れ伏す戸倉に駆け寄り、涙を流す。そしてこれまでの経緯を思い出し、歯噛みしていた。
事の始まりは数十分前。空はいつも行く河川敷で、一人、黄昏ていた。空は少し前までこの河川敷で、うじうじと一日のことを考え、怯える日々を過ごしていたのだ。しかし、昨日桜に励まされてから幾分か自分に自信を持てるようになり、少しは他人に心を開けるようになっていた。
なので、今日は昨日までと違い、ゆっくりと河川敷の景色を眺めるために訪れていたのだ。
心地の良い風が吹き、空の黒髪を揺らす。川の水は太陽の光に照らされ輝いており、遠くにはビルなどの建物が立ち並んでいる。絶景、とは言い難い都会ならではの灰色空模様ではあったが、今の空には全てが心地よく感じた。
「はーっ。いい風……。こんなに穏やかに過ごせるのって、久しぶりだな……」
空は誰に語るわけでもなく、一人呟く。高校生になってからただの一度も安息日はなく、辛い毎日だった。信じていた友達に裏切られ、虐めに気付いてくれた両親も、通り魔によって殺されてしまった。戸倉先輩がいなかったら、あの時頑張れた気がしない。と、空はあの日々を思い出し、ぎゅっと、唇を噛む。
しかし、戸倉先輩に慰めてもらった日でも、辛くて怖くて悔しくて。結局、完全に心が休まることは無かったのだ。だと言うのに、桜に悩みを聞いてもらい励ましてもらっただけで、心がこんなに軽くなるなんて……。おそらく、環境が変わったお陰もあるだろうが、桜の言葉には不思議と元気づけられ、もう大丈夫なんだと安心できたのだ。
もう少しこの余韻に浸っていよう。と、空が大の字になって原っぱに寝そべり、上を見上げた瞬間────。
「──あ、空ちゃんみぃーつけたぁ」
空の耳に、見知らぬ粘着質な声が聞こえたのだ。そして次の瞬間。心地よかった風が突風に変わり、周囲に吹き荒れ始めたのだ。突風に耐えきれなくなった空は、思わず隣に置いていた鞄で顔を覆い、目を閉じる。
暫くして突風が収まると、空はゆっくりと鞄を下ろし、目を開く。空が目を開くと、目の前には怪しい紫のローブを身に纏った人物が満面の笑みを浮かべ、佇んでいた。
ローブには夜空を思わせるような、星座に似た紋様が描かれており、一瞬、占い師? と、空は思う。しかし誰にせよ、突然現れた人物に、空は警戒を隠せないでいた。
「だ、誰ッ!?」
「ふふふ。そぉんなに警戒しないでよぅ! 私は『ナイトメア』。貴方の味方だよぉ?」
空の警戒心剥き出しの声に、ローブの人物──『ナイトメア』は粘着質な声で、嬉しそうに言葉を返した。そして、そんな巫山戯たようなナイトメアの話し方に、空は恐怖を覚える。
────どうしよう……。誘拐? 通り魔? 嫌だ……ッ! 折角毎日が楽しくなりそうなのに、こんな所で死にたくない……ッ!
空は弱みを見せないよう、必死に表情を取り繕ってはいるが、内心は恐怖に押し潰されて、泣き出してしまいそうだったのだ。そんな空の心を見透かしてか、ナイトメアは口元に笑みを浮かべたまま、一歩、空へと近づいてくる。
「────ッ!」
「あららぁ、怖がらせちゃったぁ? めんご、めんごぉ。怖がらないで? 私はただ、貴方のために、大切なことを伝えに来ただけなんだよぅ」
空の怯えように、ナイトメアは全く反省の色のない謝罪をする。
そして、それまで怯えていた空だったが、ナイトメアの一言により、『逃げ』の態勢から『聞く』態勢に体をシフトチェンジさせた。
未だ目の前の人物が怪しいというのは変わらないが、好奇心旺盛な空は、ナイトメアの言葉をどうしても聞き逃せなかったのだ。
「大切なこと……ですか? 一体なんでしょうか……?」
「そうそう、大切なことぉ! 時間が無いから、単刀直入に言うねぇ? 今ぁ、貴方の大切な人達が傷つけあってる。下手すれば、死んじゃうかもねぇ?」
ナイトメアは全く緊張感のない声で、さらりと衝撃の事実を告げる。ナイトメアの言葉に、空は驚きを隠せないように目を丸くする。そんな空の反応に、ますますナイトメアは嬉しそうに口元を歪めた。
「は……? 何、言って……?」
「うんうん。分かるよぉ。言ってる意味、わかんないよねぇ? でも、私が口にするよりぃ、見た方が早いよぉ? というわけで、どうするぅ? 行く? 行かない?」
状況が全く理解出来ていないのに、行くかどうかの選択を迫られ、空はさらに困惑する。一体誰が傷つけ合っているのかも、分からないのに。
でも、迷っていて、それでもし手遅れになったら? また、誰かを失ってしまったら? そんな思いが押し寄せ、空は覚悟を決めたようにナイトメアを強く見据えた。
「……行くよ。案内して」
「おぉ、流石は空ちゃん! 頭の回転が早い子は好きだよぉ?」
正直、ナイトメアをどこまで信用していいか、空はまだ判断がついていなかった。突然現れたこともそうだし、なにより、名乗ってもいないのに空の名前を知っていたのだ。怪しいところしかないのに、信用しろ、という方が難しいだろう。
────それでも、大切な人を失わないためなら、ついて行こう。
もし嘘でも、傷つくのは自分だけだ。そう自分を奮い立たせ、恐怖に震える心を押さえつけ、空はナイトメアを見据える。
「あははぁ。ほんと、可愛い子だねぇ。あ、そうだぁ。行く前に一つ」
ナイトメアは思い出したかのように声を上げ、その声色を一転させる。そんなナイトメアの変わりように、空はより一層体に力を入れ、身構えた。
「空ちゃん。君は力を手にする権利がある。運命に抗う力を、君は手にすることが出来る。全てを思い通りに出来るかもしれないし、出来ないかもしれない。それは空ちゃん次第だ。もし力が欲しいと思ったら、私に言って? 君にはその権利がある」
先程までの粘着質で巫山戯たような声色を変え、重苦しい声色に変えたナイトメアに、空は寒気を覚えた。言っている意味は分からなかったが、そんなのは今更だと思い、空は頭を軽く縦に振り、頷く。
ナイトメアは空の返事を満足気に見届けた後、パチンッ、と、指を鳴らす。すると、空の周囲に再び突風が吹き荒れ始めた。空は咄嗟に鞄で顔を覆い、目を閉じる。そして突風が収まり、空が目を開けると──。
────そこには戸倉の胸ぐらを掴む桜と、満身創痍でされるがままになっている戸倉の姿があった。
その後、空が困惑して何もできないまま事態は進み、どうすることも出来ず、ただ見ていることしか出来なかったのだ。
そして今、桜に敗れた戸倉が、空の目の前で地面に転がっている。戸倉は身体中傷だらけで、呼吸も荒く、素人の空が見ても、かなり危険な状態であることが分かった。
「先輩……ッ!? 戸倉先輩ッ! 大丈夫ですかッ!?」
空が必死に戸倉に呼びかけると、薄らと、戸倉は瞼を開く。
「うっ……あ……そ……らちゃん……?」
「ッ! 先輩ッ! よかった……。兎に角病院に行きましょう? 色々聞きたいことはありますが、先ずは先輩の命が優先です……ッ!」
「あっはは……あり……がとう……。やっぱり、空ちゃんは……優しい……ね」
戸倉は弱弱しく空の頭を撫で、軽く微笑む。その目には慈愛の色が差しており、空は胸が締め付けられる思いになった。
「でも……ね、もう、手遅れ……かな。僕は……ここで死ぬ」
「ッ!? な、なに言ってるんですか先輩……ッ! こんな時にそんな冗談、止めてください……ッ!」
戸倉の宣言に、空は激しく動揺する。そんな空の頬を、戸倉は安心させるようにそっと撫でる。
「ふふ、そうだったら……よかった……のに、ね……。僕達異能者は、死ぬと死体すら残らず消える。だから、僕の死体も残らない。でも……空ちゃんの記憶からは、消えたくないなぁ……ッ!」
「当たり前ですよッ! 私が先輩を忘れるわけないじゃないですか……ッ! 嫌……。死なないで、先輩ッ!」
戸倉の叫びに呼応するように、空も大粒の涙を流しながら叫ぶ。そんな空を見て、戸倉は満足げに笑い、一筋の涙を流した。
「やっぱり……空ちゃんの事……すき……だなぁ……ッ!」
「えっ……? せんぱ──」
戸倉の言葉の直後、戸倉の体は空中に溶けていき、瞬く間に戸倉は消え去った。空はその光景を絶望の眼差しで見つめ、愕然とする。
「あ……あぁ……ッ! アァァァッ!」
空の絶叫が、辺りに響く。またしても、信じていた友人に裏切られ、今度は大切な人を奪われてしまったのだ。
許せない。ユルセナイ……ッ!
空は、その目を狂気と殺意に満ちた色に変え、桜を睨む。そしてふと、先程ナイトメアが言っていた言葉を思い出す。
────そうだ。力……ッ! 私にも戦える力が、先輩の痛みを、桜に返せる力がッ! 私にあれば……ッ!
そして、空は力を手にすることを決意した。愛する先輩の為に。裏切った桜を、その手で殺すために。
────それが戸倉の思惑通りだとは、露知らず。
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