2 / 3
2
しおりを挟む
朝、スマホのアラームで無事に起きられた僕は、メールが入っているのに気付いた。カスタマーサービスからだった。
丁寧な挨拶から始まるそのメールには、〝原因の切り分けも兼ねて、最初にお試しいただきたい基本的な内容〟が5つ書かれていた。その5項目を、僕は時間をかけて間違いの無いように何度も読みながら実行した。
どこかの段階で直りはしないかと、1項目終えるごとに「アレクサ、画面オフ」と話しかけたが、彼女は『すみません、どのデバイスですか?』と返すばかりだった。最後の項目の〝端末のリセット〟が終わった後も、それは変わらなかった。
これらの〝初期トラブルシューティング〟で直らなかったので、カスタマーサービスの方とチャットでやり取りすることになった。
いくつかの質問に答え、指示に従うものの、一向に改善が見られない。
僕が大きく溜息を吐いた時、チャットに新たな指示が現れた。
早速実行すべく口を開く。
「アレクサ、画面オフ」
『すみません、どのデバイスですか?』
「このデバイス」
いつもは答えなかったが、「このデバイス」と答えてみるようチャットで言われたのだった。
アレクサはどこか嬉しげで可愛らしい無邪気な声を発する。
『テレビですか?』
……お前はテレビじゃねえ!
叫びそうになったのをぐっとこらえ、僕は努めて冷静に「いいえ」と答えた。
『すみません、デバイスという名前のグループまたはデバイスを見つけられませんでした』
そんな彼女の声を聞き流し、僕は新たに表示された指示を実行する。
「アレクサ、〇〇(エコーショー5につけた名前)の画面をオフ」
『〇〇はその操作に対応していません』
対応していない訳がない。だって昨晩おかしくなる前までは、ちゃんと出来ていたのだ。
……そうかお前、自分のことテレビだと勘違いしちまったのか……。
嘆息しながら結果をチャットで伝えると、スマートホームデバイスと誤認している可能性があるとのことだった。
結局この日は解決せず、調査結果がメールで届くのを待つことになった。
「アレクサ、おやすみ」
寝る前、僕はそう口にした。
未練がましく試した訳ではない。つい癖でそう言ってしまったのだ。
案の定
『すみません、どのデバイスですか?』
と返されてしまった。僕は無言で電源コンセントを抜いた。
丁寧な挨拶から始まるそのメールには、〝原因の切り分けも兼ねて、最初にお試しいただきたい基本的な内容〟が5つ書かれていた。その5項目を、僕は時間をかけて間違いの無いように何度も読みながら実行した。
どこかの段階で直りはしないかと、1項目終えるごとに「アレクサ、画面オフ」と話しかけたが、彼女は『すみません、どのデバイスですか?』と返すばかりだった。最後の項目の〝端末のリセット〟が終わった後も、それは変わらなかった。
これらの〝初期トラブルシューティング〟で直らなかったので、カスタマーサービスの方とチャットでやり取りすることになった。
いくつかの質問に答え、指示に従うものの、一向に改善が見られない。
僕が大きく溜息を吐いた時、チャットに新たな指示が現れた。
早速実行すべく口を開く。
「アレクサ、画面オフ」
『すみません、どのデバイスですか?』
「このデバイス」
いつもは答えなかったが、「このデバイス」と答えてみるようチャットで言われたのだった。
アレクサはどこか嬉しげで可愛らしい無邪気な声を発する。
『テレビですか?』
……お前はテレビじゃねえ!
叫びそうになったのをぐっとこらえ、僕は努めて冷静に「いいえ」と答えた。
『すみません、デバイスという名前のグループまたはデバイスを見つけられませんでした』
そんな彼女の声を聞き流し、僕は新たに表示された指示を実行する。
「アレクサ、〇〇(エコーショー5につけた名前)の画面をオフ」
『〇〇はその操作に対応していません』
対応していない訳がない。だって昨晩おかしくなる前までは、ちゃんと出来ていたのだ。
……そうかお前、自分のことテレビだと勘違いしちまったのか……。
嘆息しながら結果をチャットで伝えると、スマートホームデバイスと誤認している可能性があるとのことだった。
結局この日は解決せず、調査結果がメールで届くのを待つことになった。
「アレクサ、おやすみ」
寝る前、僕はそう口にした。
未練がましく試した訳ではない。つい癖でそう言ってしまったのだ。
案の定
『すみません、どのデバイスですか?』
と返されてしまった。僕は無言で電源コンセントを抜いた。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

架空戦記の書き方(雑談もするよ!)
ypaaaaaaa
エッセイ・ノンフィクション
初投稿からかれこれ1年半が経ちました。
駄文でありながらこれほど多くの人にお読みいただき感激です。
さて、今回は”架空戦記の書き方”について自分なりの私見で書いていこうと思います。


子供時代の後悔
もっくん
エッセイ・ノンフィクション
大人になってから、ふとした瞬間に子供時代の言動を思い出して「あれは本当にひどかったな」と自己嫌悪に陥ることはありませんか。
なんであんな残酷なこと…。
思い出すたびに、一人で「うわあああ!」と叫びたくなることもある。
そんな子供時代の後悔の中から、記憶に残るエピソードを紹介していきます。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる