29 / 36
大シラン帝国崩壊
第1章ー1 絶対守護絶体絶命
しおりを挟む
「シラン帝国本星と恒星シランとの間に船影多数」
女性オペレーターの一言で、約100名いる絶対守護の中央オペレーションルームが慌ただしくなった。
「何を言ってるんだ!? 何のことだ? オセロット王国軍は絶対守護前方に布陣しているではないのか? ふざけたことをぬかすな!」
オペレーションルームの男性指揮官がオペレーターを怒鳴りつけた。
「は、はい。い、あ。いいえ。惑星シランと恒星シランの間に・・・その・・・突然に出現しました。オセロット王国の宇宙戦艦の模様です。それに前方のオセロット王国軍の布陣に変更はありません」
巨大な重力は時空境界の制御を難しくする。時空を歪ませるからだ。故に時空境界突破航法では通常、大質量体からなるべく離れた位置に境界脱出する。シラン帝国本星に進軍するのであれば、恒星シランとの間ではなく、反対側を選択するのがセオリーだ。
男性オペレーターが冷静な口調で報告する。
「オセロット王国軍の艦艇であります。艦艇数、少なくとも200隻以上」
別の女性オペレーターが答える。
「時空境界突破航法による重力波異常は検知されていません」
「貴様らは馬鹿か? ならば境界突破は不可能、直ちに壊れているセンサーからのデータを遮断し、絶対守護のレーダーシステムに反映させよ」
オペレーターの上官が理不尽に怒鳴りつけた。
中央オペレーションルームでは、オペレーター全員で共有されている超巨大ディスプレイが半円形の壁を覆っていた。
そのディスプレイに、索敵レーダー衛星1台1台の動作状況が表示されている。レーダー出力、レーダー受信アンテナ、システム、センサー類のチェックなど、確認できた機能は文字が赤から青に変更されていく。
「65536基の索敵レーダー衛星は正常動作しているのを確認しました。出現位置を観測できる5基のレーダー衛星が同時に故障するとは考え難く・・・」
「進言いたします。レーダー衛星の故障であれば、敵艦を捕捉できません。また、複数種類のセンサーから特定した敵宇宙戦艦の艦型データと、質量測定の結果に矛盾がありません。重力波検出用センサーに異常はないと推察できます」
半円形ディスプレイの円の中心に向かって階段状にオペレーター席がある。円の中心近くではオペレーションルームの最高管理者が、無言で監視している。どうやら色々と考え状況を分析しているらしく、最高管理者として指示を出していない。
「バカな! 全く反応がなかったとでもいうのか? どうやって境界突破してきんだ?」
「敵艦隊を超望遠レンズで捉えました。映像でます」
超望遠の映像でも1隻1隻は小さい点でしかない。デジタル処理で大きく映し出しても、素人が見たらモザイクにしか見えない。しかし専門家は、一目でオセロット王国軍の艦隊だと分かる。それも相当に訓練された艦隊であることが・・・。
「まさかシラン恒星の近くに境界脱出してきたというのか・・・だから検知できなったのか・・・」
時空境界突破航法の最大の弱点は、巨大質量体の近傍に境界顕現できないことだ。
だが事実、シラン恒星の近くにオセロット王国軍は顕れた。3個艦隊全体を捉えた映像の端には、シラン恒星が写り込んでいる。間違いなくシラン恒星近傍で出現したのだ。
オペレーションルーム内に囁き声というには大きく、独り言というには問いかけの声が広がっていった。
「まさか、超光速の新航法を開発したのか・・・」
「ダークエナジーで重力波キャンセルする技術を?」
「いや・・・あれはダミーに違いない。中身なんて入ってないんだ。ハリボテに決まってる」
「ああ、そうか。あれは戦艦なんかじゃない。戦艦に似せた戦闘機じゃないかな?」
オペレーター達は、オセロット王国軍の侵攻に対する不安から、目先の疑問を解決することで逃れようとしているようだった。
「どの索敵レーダー衛星の質量センサーでも、宇宙戦艦または宇宙空母級の質量を示しています」
「それは何か? オセロット王国は、5個艦隊をシラン帝国本星まで進軍させ得るとでも・・・」
「・・・そうだよな。オセロット王国の国力では、2個艦隊が限界なんだ」
「いや、しかし・・・時空境界突破でない新航法技術を開発してた・・・」
「まて、オセロット王国は技術後進国ではなかったのか?」
国内情報操作で、オセロット王国はシラン帝国より遥かに技術が遅れているとされていた。そうでもしないと、前線の兵士による反乱、集団離脱が頻繁に起き、オセロット王国への亡命が相次ぐからだ。
「あの・・・。もしかして、ワープしてきたんじゃ・・・?」
オペレーションルームが一瞬にして静かになった。
核心をついた意見に驚かされた訳でなく、薄ら笑いまで出ていた。
「バカかお前は?」
「そうだぞ。ワープなんて・・・千年近く前の技術だ」
「今や残骸すらないよ」
「だけど・・・オセロット王国には残っているのかも」
「お似合いな技術だ・・・そうだなっ!」
各種データから5個艦隊のオセロット王国軍が侵攻してきたのは間違いないと、全オペレーターは理解していた。しかし、現実を認めたくない気持ちが、無駄口と論理性を欠いた推測にあらわれている。
中央オペレーションルームの最高管理者が、考えを纏め終え全オペレーターに指示を出す。
「絶対守護は第一戦闘配備に移行。各処にオセロット王国軍のデータを送信せよ。分析班は参謀本部に状況説明するための資料を10分でまとめよっ! ドッグ内の艦隊司令を旗艦のコンバットオペレーションルームへ呼び出せ」
次はオペレーターを安心させるため、最高管理者は自身でも信じていない言葉を続ける。
「敵は、たったの5個艦隊。こちらは4個艦隊と、無敵の絶対守護が相手をするのだ。恐れるものは何もない。落ち着いて自分の職務を遂行せよ」
女性オペレーターの一言で、約100名いる絶対守護の中央オペレーションルームが慌ただしくなった。
「何を言ってるんだ!? 何のことだ? オセロット王国軍は絶対守護前方に布陣しているではないのか? ふざけたことをぬかすな!」
オペレーションルームの男性指揮官がオペレーターを怒鳴りつけた。
「は、はい。い、あ。いいえ。惑星シランと恒星シランの間に・・・その・・・突然に出現しました。オセロット王国の宇宙戦艦の模様です。それに前方のオセロット王国軍の布陣に変更はありません」
巨大な重力は時空境界の制御を難しくする。時空を歪ませるからだ。故に時空境界突破航法では通常、大質量体からなるべく離れた位置に境界脱出する。シラン帝国本星に進軍するのであれば、恒星シランとの間ではなく、反対側を選択するのがセオリーだ。
男性オペレーターが冷静な口調で報告する。
「オセロット王国軍の艦艇であります。艦艇数、少なくとも200隻以上」
別の女性オペレーターが答える。
「時空境界突破航法による重力波異常は検知されていません」
「貴様らは馬鹿か? ならば境界突破は不可能、直ちに壊れているセンサーからのデータを遮断し、絶対守護のレーダーシステムに反映させよ」
オペレーターの上官が理不尽に怒鳴りつけた。
中央オペレーションルームでは、オペレーター全員で共有されている超巨大ディスプレイが半円形の壁を覆っていた。
そのディスプレイに、索敵レーダー衛星1台1台の動作状況が表示されている。レーダー出力、レーダー受信アンテナ、システム、センサー類のチェックなど、確認できた機能は文字が赤から青に変更されていく。
「65536基の索敵レーダー衛星は正常動作しているのを確認しました。出現位置を観測できる5基のレーダー衛星が同時に故障するとは考え難く・・・」
「進言いたします。レーダー衛星の故障であれば、敵艦を捕捉できません。また、複数種類のセンサーから特定した敵宇宙戦艦の艦型データと、質量測定の結果に矛盾がありません。重力波検出用センサーに異常はないと推察できます」
半円形ディスプレイの円の中心に向かって階段状にオペレーター席がある。円の中心近くではオペレーションルームの最高管理者が、無言で監視している。どうやら色々と考え状況を分析しているらしく、最高管理者として指示を出していない。
「バカな! 全く反応がなかったとでもいうのか? どうやって境界突破してきんだ?」
「敵艦隊を超望遠レンズで捉えました。映像でます」
超望遠の映像でも1隻1隻は小さい点でしかない。デジタル処理で大きく映し出しても、素人が見たらモザイクにしか見えない。しかし専門家は、一目でオセロット王国軍の艦隊だと分かる。それも相当に訓練された艦隊であることが・・・。
「まさかシラン恒星の近くに境界脱出してきたというのか・・・だから検知できなったのか・・・」
時空境界突破航法の最大の弱点は、巨大質量体の近傍に境界顕現できないことだ。
だが事実、シラン恒星の近くにオセロット王国軍は顕れた。3個艦隊全体を捉えた映像の端には、シラン恒星が写り込んでいる。間違いなくシラン恒星近傍で出現したのだ。
オペレーションルーム内に囁き声というには大きく、独り言というには問いかけの声が広がっていった。
「まさか、超光速の新航法を開発したのか・・・」
「ダークエナジーで重力波キャンセルする技術を?」
「いや・・・あれはダミーに違いない。中身なんて入ってないんだ。ハリボテに決まってる」
「ああ、そうか。あれは戦艦なんかじゃない。戦艦に似せた戦闘機じゃないかな?」
オペレーター達は、オセロット王国軍の侵攻に対する不安から、目先の疑問を解決することで逃れようとしているようだった。
「どの索敵レーダー衛星の質量センサーでも、宇宙戦艦または宇宙空母級の質量を示しています」
「それは何か? オセロット王国は、5個艦隊をシラン帝国本星まで進軍させ得るとでも・・・」
「・・・そうだよな。オセロット王国の国力では、2個艦隊が限界なんだ」
「いや、しかし・・・時空境界突破でない新航法技術を開発してた・・・」
「まて、オセロット王国は技術後進国ではなかったのか?」
国内情報操作で、オセロット王国はシラン帝国より遥かに技術が遅れているとされていた。そうでもしないと、前線の兵士による反乱、集団離脱が頻繁に起き、オセロット王国への亡命が相次ぐからだ。
「あの・・・。もしかして、ワープしてきたんじゃ・・・?」
オペレーションルームが一瞬にして静かになった。
核心をついた意見に驚かされた訳でなく、薄ら笑いまで出ていた。
「バカかお前は?」
「そうだぞ。ワープなんて・・・千年近く前の技術だ」
「今や残骸すらないよ」
「だけど・・・オセロット王国には残っているのかも」
「お似合いな技術だ・・・そうだなっ!」
各種データから5個艦隊のオセロット王国軍が侵攻してきたのは間違いないと、全オペレーターは理解していた。しかし、現実を認めたくない気持ちが、無駄口と論理性を欠いた推測にあらわれている。
中央オペレーションルームの最高管理者が、考えを纏め終え全オペレーターに指示を出す。
「絶対守護は第一戦闘配備に移行。各処にオセロット王国軍のデータを送信せよ。分析班は参謀本部に状況説明するための資料を10分でまとめよっ! ドッグ内の艦隊司令を旗艦のコンバットオペレーションルームへ呼び出せ」
次はオペレーターを安心させるため、最高管理者は自身でも信じていない言葉を続ける。
「敵は、たったの5個艦隊。こちらは4個艦隊と、無敵の絶対守護が相手をするのだ。恐れるものは何もない。落ち着いて自分の職務を遂行せよ」
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
エレメンツハンター
kashiwagura
SF
「第2章 エレメンツハンター学の教授は常に忙しい」の途中ですが、3ヶ月ほど休載いたします。
3ヶ月間で掲載中の「第二次サイバー世界大戦」を完成させ、「エレメンツハンター」と「銀河辺境オセロット王国」の話を安定的に掲載できるようにしたいと考えています。
3ヶ月後に、エレメンツハンターを楽しみにしている方々の期待に応えられる話を届けられるよう努めます。
ルリタテハ王国歴477年。人類は恒星間航行『ワープ』により、銀河系の太陽系外の恒星系に居住の地を拡げていた。
ワープはオリハルコンにより実現され、オリハルコンは重力元素を元に精錬されている。その重力元素の鉱床を発見する職業がルリタテハ王国にある。
それが”トレジャーハンター”であった。
主人公『シンカイアキト』は、若干16歳でトレジャーハンターとして独立した。
独立前アキトはトレジャーハンティングユニット”お宝屋”に所属していた。お宝屋は個性的な三兄弟が運営するヒメシロ星系有数のトレジャーハンティングユニットで、アキトに戻ってくるよう強烈なラブコールを送っていた。
アキトの元に重力元素開発機構からキナ臭い依頼が、美しい少女と破格の報酬で舞い込んでくる。アキトは、その依頼を引き受けた。
破格の報酬は、命が危険と隣り合わせになる対価だった。
様々な人物とアキトが織りなすSF活劇が、ここに始まる。
タイムワープ艦隊2024
山本 双六
SF
太平洋を横断する日本機動部隊。この日本があるのは、大東亜(太平洋)戦争に勝利したことである。そんな日本が勝った理由は、ある機動部隊が来たことであるらしい。人呼んで「神の機動部隊」である。
この世界では、太平洋戦争で日本が勝った世界戦で書いています。(毎回、太平洋戦争系が日本ばかり勝っ世界線ですいません)逆ファイナルカウントダウンと考えてもらえればいいかと思います。只今、続編も同時並行で書いています!お楽しみに!
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?



アンドロイドちゃんねる
kurobusi
SF
文明が滅ぶよりはるか前。
ある一人の人物によって生み出された 金属とプラスチックそして人の願望から構築された存在。
アンドロイドさんの使命はただ一つ。
【マスターに寄り添い最大の利益をもたらすこと】
そんなアンドロイドさん達が互いの通信機能を用いてマスター由来の惚気話を取り留めなく話したり
未だにマスターが見つからない機体同士で愚痴を言い合ったり
機体の不調を相談し合ったりする そんなお話です
No One's Glory -もうひとりの物語-
はっくまん2XL
SF
異世界転生も転移もしない異世界物語……(. . `)
よろしくお願い申し上げます
男は過眠症で日々の生活に空白を持っていた。
医師の診断では、睡眠無呼吸から来る睡眠障害とのことであったが、男には疑いがあった。
男は常に、同じ世界、同じ人物の夢を見ていたのだ。それも、非常に生々しく……
手触り感すらあるその世界で、男は別人格として、「採掘師」という仕事を生業としていた。
採掘師とは、遺跡に眠るストレージから、マップや暗号鍵、設計図などの有用な情報を発掘し、マーケットに流す仕事である。
各地に点在する遺跡を巡り、時折マーケットのある都市、集落に訪れる生活の中で、時折感じる自身の中の他者の魂が幻でないと気づいた時、彼らの旅は混迷を増した……
申し訳ございませんm(_ _)m
不定期投稿になります。
本業多忙のため、しばらく連載休止します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる