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第10章 ソルジャー躍動(1)
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『駅から第二統合情報処理研究所まで約6キロメートル。いよいよ最大の防衛戦が始まる。諸君らの更なる奮戦と成果に期待する』
CICにいる三枚堂が、サイバー作戦隊のソルジャーに檄を飛ばした。
『『『『『『「了解でありますっ!!!」』』』』』』
隊員はポージングを決めつつ返事をした。そして、各々の隊員が持ち場で装備の再点検と、事案毎の対応計画の確認を始める。
ドローンが電車と共にホームへ突入するのは想定済みで、迷彩服に身を包んだソルジャーたちが撃ち落とした。しかし電車の屋根にドローンが張り付き、ホームへと忍び込む攻撃法は全くの想定外。そのため在来線ホームで真田と児玉へ、監視用中型ドローンによる襲撃を許してしまったのだ。
屋根以外のホームへ突入しようとしたドローンを撃墜したサイバー作戦隊の兵器は、大型EVの屋根から現れた巨大な機械だった。
それはそれは怪しげな機械だった。
一般の大型EVの屋根が開き、EVの車両より大きい機械が展開され、直径20センチで車両の全長より長い砲身があるのだ。砲身の内側に施条(ライフルリング)はなく滑らかで、対物ライフルの銃身の直径より大きい。砲身は弾丸を打ち出すのでなく、高出力の指向性電磁波を照射するための装備なのだ。
現在のドローンは半自律式で無線が途切れても、すぐに制御を失って墜落するようなことはない。しかしサイバー作戦隊の高出力指向性電磁波照射装置”指電(シデン)”は、ジャミングした後に出力をあげ、内部の電子装置を破壊するのだ。
当然サイバー作戦隊の大型EV数台が、第二統合情報処理研究所の最寄り駅を取り囲んでいる。
そして今、真田達の乗っている電車が、最寄り駅のホームへと滑り込むように入線してきた。
その電車と共にホームへ侵入しようとしていたドローンと、屋根に張り付いていたドローンは、シデンによって撃墜されていたのだ。屋根に張りついてホーム内に侵入する攻撃法は、既にサイバー作戦隊内で共有済みだったのだ。
しかし人工知能も人工知能だけあって、有効な攻撃方法に創意工夫を凝らしてくる。真田達が乗車してきた下り電車と、反対の上り電車の屋根にもドローンを張り付いていたのだ。
『上り電車の屋根に3機のドローンを視認』
第3観測班が状況を報告し、現地司令部が命令をくだす。
『第1、第4、第6電磁波班。シデンにて電磁波を照射せよ』
命令を受けると、即座に第1電磁波班の4人のメンバーは作業に取り掛かった。第1電磁波班の通信装置に司令部から、どのドローンが標的対象か指示が入る。
「自動追尾開始」
「ロックオン確認」
「照射開始」
「標的に命中」
第1電磁波班の班長が無線で報告する。
「電磁波の効果範囲内で、標的を自動追尾中しております」
30秒にも満たない時間で、ドローンにシデンを命中させたのだった。
他の2班からも続けて、シデン命中の報告が入る。
真田と児玉が駅のホームを歩いているのに、入線してきた上り電車の屋根にあるドローンが微動だにしていない。
『第3観測班。電車屋根上のドローン、3機とも動作せず』
『現地司令部へ、こちら三枚堂だ。ドローンを完全破壊せよ』
シデンで攻撃し続けているとはいえ、ドローンの電子装置が破壊できたとは限らない。電車の屋根の上で、真田と児玉の隙を窺っているかも知れないのだ。それゆえ、ドローンが物理的に動作できないぐらい破壊することを三枚堂は決心した。
『三枚堂閣下。了解しました。第1、第4、第6電磁波班。試作レーザーを照射』
『『「了解!」』』
第1、第4、第6電磁波班が応答し、試作レーザー”兵器”の準備を開始する。
「出力最大。波長を630nmに設定」
「630nmに設定完了」
630nmは可視光線の赤色波長である。
第1電磁波班の班長は、シデンで設定できる中で、物体に与えるエネルギー量が大きい波長を選択し。指示を出したのだ。
「照射出力を最大に設定」
「照射準備完了」
「試作レーザー発射」
1条の赤いレーザーが標的のドローンに直撃したのを確認し、第1電磁波班の班長は現地司令部に報告する。
「命中しました。目標のドローンを撃破」
僅かなタイムラグで2条の赤いレーザーが、他の2機のドローンを貫いた。
第3観測班が視認した情報を声と映像データで、現地司令部に報告する。
『現地司令部へ、第3観測班より報告。ドローン3機の破壊を確認。電車の車両に損傷なし。駅舎の強化アクリルガラスに3つの穿孔以外の傷、ひび割れなし』
同じ映像を見ているのだが、CICの三枚堂は現地司令部を通さず第3観測班に直接質問する。
『きれいか?』
『惚れ惚れする切断面であります』
『試作レーザー装置はどうだ?』
「異常ありません。すぐにでも第二射可能であります」
『第6電磁波班。同様であります』
『第4電磁波班。発射準備完了であります』
第4電磁波班は少し先回りしている。
その所為か、暫くCICからの通信に空白の時間があった。
CIC内で少し議論があったようだ。
『次の事案まで試作レーザー装置は待機させよ。現地司令部へ、作戦計画に戻れ』
三枚堂はソルジャー達に指示を出したのだった。
CICにいる三枚堂が、サイバー作戦隊のソルジャーに檄を飛ばした。
『『『『『『「了解でありますっ!!!」』』』』』』
隊員はポージングを決めつつ返事をした。そして、各々の隊員が持ち場で装備の再点検と、事案毎の対応計画の確認を始める。
ドローンが電車と共にホームへ突入するのは想定済みで、迷彩服に身を包んだソルジャーたちが撃ち落とした。しかし電車の屋根にドローンが張り付き、ホームへと忍び込む攻撃法は全くの想定外。そのため在来線ホームで真田と児玉へ、監視用中型ドローンによる襲撃を許してしまったのだ。
屋根以外のホームへ突入しようとしたドローンを撃墜したサイバー作戦隊の兵器は、大型EVの屋根から現れた巨大な機械だった。
それはそれは怪しげな機械だった。
一般の大型EVの屋根が開き、EVの車両より大きい機械が展開され、直径20センチで車両の全長より長い砲身があるのだ。砲身の内側に施条(ライフルリング)はなく滑らかで、対物ライフルの銃身の直径より大きい。砲身は弾丸を打ち出すのでなく、高出力の指向性電磁波を照射するための装備なのだ。
現在のドローンは半自律式で無線が途切れても、すぐに制御を失って墜落するようなことはない。しかしサイバー作戦隊の高出力指向性電磁波照射装置”指電(シデン)”は、ジャミングした後に出力をあげ、内部の電子装置を破壊するのだ。
当然サイバー作戦隊の大型EV数台が、第二統合情報処理研究所の最寄り駅を取り囲んでいる。
そして今、真田達の乗っている電車が、最寄り駅のホームへと滑り込むように入線してきた。
その電車と共にホームへ侵入しようとしていたドローンと、屋根に張り付いていたドローンは、シデンによって撃墜されていたのだ。屋根に張りついてホーム内に侵入する攻撃法は、既にサイバー作戦隊内で共有済みだったのだ。
しかし人工知能も人工知能だけあって、有効な攻撃方法に創意工夫を凝らしてくる。真田達が乗車してきた下り電車と、反対の上り電車の屋根にもドローンを張り付いていたのだ。
『上り電車の屋根に3機のドローンを視認』
第3観測班が状況を報告し、現地司令部が命令をくだす。
『第1、第4、第6電磁波班。シデンにて電磁波を照射せよ』
命令を受けると、即座に第1電磁波班の4人のメンバーは作業に取り掛かった。第1電磁波班の通信装置に司令部から、どのドローンが標的対象か指示が入る。
「自動追尾開始」
「ロックオン確認」
「照射開始」
「標的に命中」
第1電磁波班の班長が無線で報告する。
「電磁波の効果範囲内で、標的を自動追尾中しております」
30秒にも満たない時間で、ドローンにシデンを命中させたのだった。
他の2班からも続けて、シデン命中の報告が入る。
真田と児玉が駅のホームを歩いているのに、入線してきた上り電車の屋根にあるドローンが微動だにしていない。
『第3観測班。電車屋根上のドローン、3機とも動作せず』
『現地司令部へ、こちら三枚堂だ。ドローンを完全破壊せよ』
シデンで攻撃し続けているとはいえ、ドローンの電子装置が破壊できたとは限らない。電車の屋根の上で、真田と児玉の隙を窺っているかも知れないのだ。それゆえ、ドローンが物理的に動作できないぐらい破壊することを三枚堂は決心した。
『三枚堂閣下。了解しました。第1、第4、第6電磁波班。試作レーザーを照射』
『『「了解!」』』
第1、第4、第6電磁波班が応答し、試作レーザー”兵器”の準備を開始する。
「出力最大。波長を630nmに設定」
「630nmに設定完了」
630nmは可視光線の赤色波長である。
第1電磁波班の班長は、シデンで設定できる中で、物体に与えるエネルギー量が大きい波長を選択し。指示を出したのだ。
「照射出力を最大に設定」
「照射準備完了」
「試作レーザー発射」
1条の赤いレーザーが標的のドローンに直撃したのを確認し、第1電磁波班の班長は現地司令部に報告する。
「命中しました。目標のドローンを撃破」
僅かなタイムラグで2条の赤いレーザーが、他の2機のドローンを貫いた。
第3観測班が視認した情報を声と映像データで、現地司令部に報告する。
『現地司令部へ、第3観測班より報告。ドローン3機の破壊を確認。電車の車両に損傷なし。駅舎の強化アクリルガラスに3つの穿孔以外の傷、ひび割れなし』
同じ映像を見ているのだが、CICの三枚堂は現地司令部を通さず第3観測班に直接質問する。
『きれいか?』
『惚れ惚れする切断面であります』
『試作レーザー装置はどうだ?』
「異常ありません。すぐにでも第二射可能であります」
『第6電磁波班。同様であります』
『第4電磁波班。発射準備完了であります』
第4電磁波班は少し先回りしている。
その所為か、暫くCICからの通信に空白の時間があった。
CIC内で少し議論があったようだ。
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三枚堂はソルジャー達に指示を出したのだった。
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