NG-wor『L』d

プロローグ

　

　夏休みを目の前に、高校を中退するはめになった。

　原因は父親の逮捕である。

　学費が払えなくなったのはもちろんのこと、父が釈放されるまでは、体が弱い母の代わりに私が稼ぎ頭になるしかなかったのだ。

　
　週7日勤務実働８時間。

　正直しんどい。
　何で私だけこんな目にあってるんだと嘆きたい！

……だがこのご時世、作家を親に持つ子供にはよくある身の上話だったりする。


　なぜ親が作家だと問題なのか？

　すべては憲法を大幅に改正して作られた、『ファンタジー規制法』なるものができたせいだ。

　正式名称、『非科学的現象をテーマにした作品の規制等に関する法律』

　科学的に実証されている現象以外を作品に載せてはいけないというこの法律。
　うっかり架空のモノを文章に載せてしまい、あっさりお縄になる作家があとをたたない。

　その結果、残された家族が苦労を強いられるのだ。


　ちなみにうちの親父がやらかしたのは、『天使のような微笑み』という一文を載せてしまったこと。




…………。


　たしかに、天使の存在は確認されていないけど。
　非現実的な存在だけど。

　比喩にちょっと使っただけでアウトとか、それどんな無理ゲーですかね？

　もともと間の抜けた性格の親父だけど、今回の件ばかりは責める気になれなかった。

　だって悪いのは法案を通した臆病な政治家。
　それと、ファンタジー禁止法が生まれる原因を作った〝奴ら〟なのだから。





「くたばれ政治家！ 絶滅しろ〝アザーズ〟！！」





　そう毒づいて、今日もバイトでヘトヘトになった身体を休めるべく早めに眠りにつく。





　これが私、天羽あもうひよりの日常。

　狂った日本でささやかな生活を送りたいと願う、とある生き残りの日常ーーーー。






……to be continued