不器用な人

村さめ

文字の大きさ
上 下
19 / 19

19

しおりを挟む
 アウルとリオは、洞窟の端の壁沿いにどんどん歩いて行く。途中何度も大きい魔獣とすれ違ったが、一瞥もされることなく通り過ぎることができていた。

 蜥蜴は全く見当たらない。

「そう簡単には、見つからない、ね……」

「硝子蜥蜴は、どのような場所に巣を作るのでしょうか?」

「岩の影とか、小さな穴の中とか……、あ」

 岩壁に、大きめの、細く長い亀裂が入っている。

「ここ、怪しい……入ってみよう」

 リオは余裕で通れた。アウルもつっかえながらもどうにか身体を捻じ込むことができた。

「中は結構広いですね……」

「うん……わ、足元水溜まりだ……そんなに深くなさそうだけど、気をつけて」

「は、はい」

 しばらく進んだが、変わり映えのしない岩肌の間ばかりを通り過ぎてゆく。アウルは奇妙な違和感を感じはじめていた。脳の奥が何だかふわふわしているようで、変な感じだ。

 ふと気がつくと、隣にいたはずのリオの気配がなかった。

「は……?」

 慌てて周囲を見回したが、リオはどこにもいない。

 激しい焦燥に襲われる。散々偉そうなことを言って、結局リオを守れないのか。

 誰かを守るだなんて、烏滸がましいことだったかもしれない。

(俺は弱い……誰も守れない……)

 最初は見た目に惹かれた。今はそれだけじゃない。

 リオはとてもとても綺麗で、アウルとは全然違う。でも、少しだけ、昔のアウルと似ているところがある。だからだろうか。

 探さないと。どこにいる、リオはどこに……。

「酷いわアウル……」

 目の前に、一人の女が佇んでいる。

「どうして、助けてくれなかったの?」

 その瞬間、アウルはやっと気がついた。

(あ、これ……夢だ)

* * *

「アウル様っ、アウル様……っ!」

「っ……!」

 アウルは少しの間、意識を飛ばしてしまっていたようだ。それがリオをどれだけ不安にさせたか、顔を見れば一目瞭然だった。

「ごめん……」

 激情のまま、自分の頭を力一杯殴りつける。鈍い音が響き、頭に巣食っている何かが、少しだけ消えたような気がした。

「ア、アウル様……?」

「流石に、一筋縄ではいかない、ね……」

 アウルは一層気を引き締めた。
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

山本さんのお兄さん〜同級生女子の兄にレ×プされ気に入られてしまうDCの話〜

ルシーアンナ
BL
同級生女子の兄にレイプされ、気に入られてしまう男子中学生の話。 高校生×中学生。 1年ほど前に別名義で書いたのを手直ししたものです。

男色官能小説短編集

明治通りの民
BL
男色官能小説の短編集です。

無理やりお仕置きされちゃうsubの話(短編集)

みたらし団子
BL
Dom/subユニバース ★が多くなるほどえろ重視の作品になっていきます。 ぼちぼち更新

首輪 〜性奴隷 律の調教〜

M
BL
※エロ、グロ、スカトロ、ショタ、モロ語、暴力的なセックス、たまに嘔吐など、かなりフェティッシュな内容です。 R18です。 ほとんどの話に男性同士の過激な性表現・暴力表現が含まれますのでご注意下さい。 孤児だった律は飯塚という資産家に拾われた。 幼い子供にしか興味を示さない飯塚は、律が美しい青年に成長するにつれて愛情を失い、性奴隷として調教し客に奉仕させて金儲けの道具として使い続ける。 それでも飯塚への一途な想いを捨てられずにいた律だったが、とうとう新しい飼い主に売り渡す日を告げられてしまう。 新しい飼い主として律の前に現れたのは、桐山という男だった。

肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?

こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。 自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。 ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?

受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店

ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。

読み切り 過激☆短編集

まむら
BL
一話完結の小説を置いています。 スカトロ表現など過激な表現があるため、苦手な方は読まれないでください。 全てR-18です。

お兄ちゃんと内緒の時間!

成瀬瑛理
BL
「お兄ちゃん、○○って何?」小1の弟から突然そんなことを聞かれた俺は……! *友達のお兄ちゃんからある言葉を教えてもらった小学一年生の弟は、初めて知る言葉を年の離れた高校生の兄に尋ねると兄は弟にその言葉の意味を教えるが――。

処理中です...