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疲れていたのですぐ眠りについたし、あっという間に朝になった。というか少し寝過ごした。陽が差し込む窓辺に小鳥がとまっていて、こちらを覗き込んでいる。それは魔力で作られた鳥だった。
「うわ、もう返事来てる……仕事早いな」
アウルが鳥の脚に結わえられた手紙を取り外すと、鳥はすうっと空気に溶けて消えた。アウルは手紙を一度脇に置き、服を着替えることにする。
手紙を持って食堂に行くと、リオはもう起きて来て食事の支度をしていた。昨夜のどさくさに紛れて首枷の眠り魔法を解除しておいたから、リオはもう自由に寝起きができる。
(知らなかったとはいえ、母親の病気を思い出させるような魔法をかけてしまっていたんだよな……謝らないと……)
「アウル様、おはようございます」
「あ、うん。……お、おはようございます」
「ごはん出来てますよ」
(リオの手料理!)
リオの美しい笑みと手料理に釣られたアウルは、謝ろうとしていたことをコロっと忘れてそそくさと席に着く。
「差し出がましいかとも思いましたが……」
テーブルには焼きたてのパンとオムレツ、熱そうに湯気を立てる野菜入りのスープが並んでいる。とても美味しそうだ。
「あれ……リオの分は」
「僕は後でいただきます」
「い、一緒に……食べたい……」
「え、そうですか……承知いたしました」
リオは自分の分の食事を用意していなかったので、アウルの分を半分に分けた。アウルはこれで十分だが、リオにはたくさん食べて欲しい。次の食事はアウルがたくさん用意しようと決意する。食事にあまりこだわりがなく、食材を齧るだけで満足していたアウルは、料理なんて碌にしたことがないけれど。まあどうにかなるだろう。
あっという間に食事を終え、アウルは朝届いた手紙を取り出した。
「アウル様、それって」
「うん、領主……ジェイク様からの、返事」
手紙の内容は、貴族らしく長ったらしい時候の挨拶からはじまり、最近昼間のギルドに出没しているという噂は本当かとか、もっと頻繁に連絡を寄越せだとか、益体もないことが長々と書き連ねられていて大変読みづらかった。頑張って最後まで読んだが、結局肝心なことについては何も書かれておらず、思わず手紙を破り捨てたくなった。
「アウル様?」
「あ、いや……え、えっとね……、直接会って話したいから、屋敷に来いって……。時間は今日の昼頃……」
「今日ですか?」
「……うん。そうみたい……リオも一緒に、連れて来いって」
けっこう寝坊してしまっているのでもうあまり時間がない。アウルは別に準備などは必要ないが……。
「リオの服……どうしよう」
アウルが服を買い渋っていたせいで、リオはいまだにアウルのシャツを着用している。そろそろリオの服を用意しようとは思っていたのだが、自分の大きめのシャツを細身のリオが身につけている様子があまりにも可愛くて、つい先延ばしにしてしまっていた。
「このままでは、だめなのでしょうか……?」
「だ、だめだよ……!」
リオの細くて白い綺麗な足が剥き出しのままで外を出歩くなんてとんでもない。ちゃんと靴も履かないと、足を怪我してしまうかもしれない。
(というかこれまでずっと裸シャツを強要していた俺って普通にやばい奴なのでは……? だめだ考えるのをやめよう……)
「とにかく、時間ないし……こうなったら、創造魔法で服と靴、作るか」
「そ、創造魔法って……伝説級の大魔法じゃ……!?」
「ちょっと服を作るくらいなら別に……そこまで魔力消費しない、から……」
下着だけは買ってきていたのでそれを着てもらい、少し離れたところにまっすぐ立ってもらう。リオの下着姿は目に毒だった。早く服で覆ってしまわなければ。
(どんな服がいいかな? リオなら何でも似合いそう。でもまあここは無難に普通のシャツとズボンに革靴……)
イメージを固め、えいやっと魔法を行使する。次の瞬間、リオはなぜか、お屋敷で働くメイドさんが着るような服を身につけていた。ただ、一般的なメイド服より少し装飾が多く、スカート丈が短い気もする。
「アウル様……これは?」
「か、かわいい……、じゃなくてっ……な、何で!? ちゃんとイメージしたはずなのに……ご、ごめん、それ脱いでっ……も、もう一度、えいっ!」
すると今度は、大衆食堂のウエイトレスなんかがよく着ている、明るい色のワンピースにフリフリのエプロンを重ねた可愛らしい服に変身した。
「えっと、つまりアウル様は、こういった服装がお好みなのですね……?」
「うぅ……っ、し、死にたい……」
その後、アウルはしばし精神統一してから再挑戦し、どうにかまともな服を作り出すことに成功した。でもやはり、フリル付きのブラウスと短パンに編み上げブーツという、少し可愛らしい感じの仕上がりになった。
「うわ、もう返事来てる……仕事早いな」
アウルが鳥の脚に結わえられた手紙を取り外すと、鳥はすうっと空気に溶けて消えた。アウルは手紙を一度脇に置き、服を着替えることにする。
手紙を持って食堂に行くと、リオはもう起きて来て食事の支度をしていた。昨夜のどさくさに紛れて首枷の眠り魔法を解除しておいたから、リオはもう自由に寝起きができる。
(知らなかったとはいえ、母親の病気を思い出させるような魔法をかけてしまっていたんだよな……謝らないと……)
「アウル様、おはようございます」
「あ、うん。……お、おはようございます」
「ごはん出来てますよ」
(リオの手料理!)
リオの美しい笑みと手料理に釣られたアウルは、謝ろうとしていたことをコロっと忘れてそそくさと席に着く。
「差し出がましいかとも思いましたが……」
テーブルには焼きたてのパンとオムレツ、熱そうに湯気を立てる野菜入りのスープが並んでいる。とても美味しそうだ。
「あれ……リオの分は」
「僕は後でいただきます」
「い、一緒に……食べたい……」
「え、そうですか……承知いたしました」
リオは自分の分の食事を用意していなかったので、アウルの分を半分に分けた。アウルはこれで十分だが、リオにはたくさん食べて欲しい。次の食事はアウルがたくさん用意しようと決意する。食事にあまりこだわりがなく、食材を齧るだけで満足していたアウルは、料理なんて碌にしたことがないけれど。まあどうにかなるだろう。
あっという間に食事を終え、アウルは朝届いた手紙を取り出した。
「アウル様、それって」
「うん、領主……ジェイク様からの、返事」
手紙の内容は、貴族らしく長ったらしい時候の挨拶からはじまり、最近昼間のギルドに出没しているという噂は本当かとか、もっと頻繁に連絡を寄越せだとか、益体もないことが長々と書き連ねられていて大変読みづらかった。頑張って最後まで読んだが、結局肝心なことについては何も書かれておらず、思わず手紙を破り捨てたくなった。
「アウル様?」
「あ、いや……え、えっとね……、直接会って話したいから、屋敷に来いって……。時間は今日の昼頃……」
「今日ですか?」
「……うん。そうみたい……リオも一緒に、連れて来いって」
けっこう寝坊してしまっているのでもうあまり時間がない。アウルは別に準備などは必要ないが……。
「リオの服……どうしよう」
アウルが服を買い渋っていたせいで、リオはいまだにアウルのシャツを着用している。そろそろリオの服を用意しようとは思っていたのだが、自分の大きめのシャツを細身のリオが身につけている様子があまりにも可愛くて、つい先延ばしにしてしまっていた。
「このままでは、だめなのでしょうか……?」
「だ、だめだよ……!」
リオの細くて白い綺麗な足が剥き出しのままで外を出歩くなんてとんでもない。ちゃんと靴も履かないと、足を怪我してしまうかもしれない。
(というかこれまでずっと裸シャツを強要していた俺って普通にやばい奴なのでは……? だめだ考えるのをやめよう……)
「とにかく、時間ないし……こうなったら、創造魔法で服と靴、作るか」
「そ、創造魔法って……伝説級の大魔法じゃ……!?」
「ちょっと服を作るくらいなら別に……そこまで魔力消費しない、から……」
下着だけは買ってきていたのでそれを着てもらい、少し離れたところにまっすぐ立ってもらう。リオの下着姿は目に毒だった。早く服で覆ってしまわなければ。
(どんな服がいいかな? リオなら何でも似合いそう。でもまあここは無難に普通のシャツとズボンに革靴……)
イメージを固め、えいやっと魔法を行使する。次の瞬間、リオはなぜか、お屋敷で働くメイドさんが着るような服を身につけていた。ただ、一般的なメイド服より少し装飾が多く、スカート丈が短い気もする。
「アウル様……これは?」
「か、かわいい……、じゃなくてっ……な、何で!? ちゃんとイメージしたはずなのに……ご、ごめん、それ脱いでっ……も、もう一度、えいっ!」
すると今度は、大衆食堂のウエイトレスなんかがよく着ている、明るい色のワンピースにフリフリのエプロンを重ねた可愛らしい服に変身した。
「えっと、つまりアウル様は、こういった服装がお好みなのですね……?」
「うぅ……っ、し、死にたい……」
その後、アウルはしばし精神統一してから再挑戦し、どうにかまともな服を作り出すことに成功した。でもやはり、フリル付きのブラウスと短パンに編み上げブーツという、少し可愛らしい感じの仕上がりになった。
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