傲慢な人

村さめ

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 食事を終え、次に安曇に連れてこられたのは、繁華街のラブホテルだった。覚悟していたこととはいえ、心が強張る。

(やっぱり、今日も抱かれるんだな)

 わずかな期待と不安を抱えたままチェックインを済ませ、着いたその部屋は普通ではなかった。僕はラブホテルに入ったのもはじめてで、一般的な内装がどんなのかはよく知らないけれど。これが普通でないのはさすがに分かる。

 コンクリート剥き出しの床。中央に鎮座する大きなベッドの脇には、なぜか鳥籠のような檻。天井から伸びる無数の鎖。壁際にはX字型の拘束台。棚に陳列された多種多様なアダルトグッズ。僕には何に使うのかよく分からないような道具も沢山置いてある。

(これから僕は、一体何をさせられるの……?)

 想定していたものとは違う方向性の恐怖に直面し、狼狽えてしまう。安曇は何でもないような顔で部屋に足を踏み入れた。

「さっさと服を脱げ」

「あの、シャワーとか……」

「必要ない」

(いや、必要あるだろ……)

 一応、家で軽く準備はしたけど。あまり時間がなかったから、ちゃんとシャワーを浴びておきたかったのに。

「二度言わせるな。早くしろ」

「は、はい」

 食事の際の穏やかな空気は、完全に霧散してしまっていた。頭は未だに混乱の中だが、体が勝手に命令に従う。

 安曇は僕が脱ぐのじっと眺めている。見られると恥ずかしいけれど、これからすることを考えたら今更と言う気もする。ごはんを沢山食べたから、お腹が出ていたらどうしよう。せめてできるだけゆっくりと服を脱いだけれど、あっという間に最後の一枚になり、ついに一糸まとわぬ姿となった。

「ベッドの上で四つん這いになって、尻をこちらへ向けろ」

 命令通りベッドに上がり、安曇の方へ尻を突き出すようなポーズをとる。後ろをじっくり見られていると思うと、更に羞恥がこみ上げる。安曇は僕の尻にローションを垂らし、穴をくちゅくちゅとほぐしはじめた。準備のかいもあって既に大分ぼぐれていたそこは、彼の指を難なく受け入れた。

「ふ、ぅっ……、っ……」

「相変わらず、いやらしいな」

 まるで咎めるかのように、尻をパシンッと打たれる。

「痛っ……!」

「これは先ほど、すぐに服を脱がなかった罰だ」

「ば、罰……?」

「お前は誰にでも尻尾を振る、駄犬のようだからな。この機会に徹底的に躾けてやる」

「なっ、そ、そんなっ……」

 パパ活のことなら、確かに全然褒められたことではないけど、安曇に迷惑をかけてはいないのに。そう言いたくても、彼からまたしても凄まじい憎悪を感じ取ってしまい、もう何も言えなくなる。黙っていたらもう一度尻を叩かれた。

「この俺が躾けてやると言っている。礼が言えないのか?」

「あ、あり、がとう、ございます……」

「それでいい」

 頷いた安曇は、ローターを手に取った。スイッチからいくつものコードが伸びていて、その先に丸いプラスチックが付いている。僕は使った事がなかったので、実物を見るのははじめてだった。丸いプラスチックのひとつを穴にあてがわれた。ほぐされたそこは、つるりと呑み込んでしまう。

「こ、これ……何か、変……」

 大きさはそれほどでもないが、妙な異物感がある。3個ほど入れられたところで、後から入ったものに押される形で先頭が前立腺をかすめた。思わず鼻にかかった声が出てしまう。安曇は、最後にローターのリモコン部分をゴムベルトで僕の太腿に固定し、次の命令を下す。

「こっちへ来い」

 促された先にあるのは、あのX字型の拘束台。

(嫌だ……怖い……)

 思わず縋るように安曇を見たけど、冷たい視線を返されるだけだった。逃げ出したい衝動を何とか抑え込み、震える足でベッドを降りて、そこへ向かう。入れられたローターが中で動き、またイイところに当たりそうな気がして、上手く歩けない。覚束ない足取りで何とかたどり着くと、やはりというか、拘束台に磔にされた。全部さらけ出すかのように手足を伸ばし、腰までベルトでガッチリ固定され、もう何をされても抵抗できない。

「お前、中だけでイけるか?」

「む、無理、だと、思います……」

 自分でする時は、そうなる前に、我慢できず前に手を伸ばしてしまっていた。なのでいわゆる中イキはまだ経験がない。

「そうか。なら、一度でもイったら……お仕置きだぞ?」

「え……?」

 安曇が僕の太腿に手を伸ばし、カチカチと操作する。すぐに僕の中のローターが振動しはじめた。

(これ、こんなに強く……!?)

 切ない感覚がどんどん湧き上がってきて、手足の鎖をガチャガチャと鳴らしてしまう。

「あっ、あっ……、ああ……っ、うぅ……っ」

 触れてもいない僕のペニスは、もう芯を持ちはじめている。何も出来ず、ひたすらローターの振動に耐える僕を置いて、安曇はベッド脇の椅子に腰掛けてカバンから本を取り出し、ゆったりとめくりはじめてしまった。

「あっ、安曇っ……、まさかっ、このままっ、このままに、するつもりっ……!?」

「少し静かにしていろ。読書の邪魔だ」

「っ~~~!?」
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