雨乞いのカミサマ

澪花

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私は喋る赤い唐笠と共に、
昨日変わった写真の場所へと向かった。

神社は村の端の方にぽつりと建っていた。
しかし整備は行き届いており、
人々から大切にされている印象だ。
神社独特の静寂さもどこか心地よい。
そういえば昔、神社が静かなのは山(木々)が結界の役割をしているからなのだと、
だから神社は木々に囲まれているのだと聞いたことがある。
階段を登った先にはこじんまりとしたお社があった。
境内もそこまで広くないのでこのくらいが丁度いいだろう。
神社に来ておいて御参りをしないのは失礼だろうと御参りをすることにした。
御参りを済ませたあと私は境内を少し散策することにした。

境内を散歩しているうちに、唐笠はどんな物事にも反応していた。
水溜まりは僕が二人いるみたいで好きだとか、
最近この村で人間の赤ちゃんが産まれたとか、
そんな他愛のない会話だ。

「あ、僕これ知ってるよ。
人間が年が変わる度にゴーン!って鳴らす鐘でしょ?」

「うん、除夜の鐘って言って、鐘の音で煩悩を消して貰うのよ。」

「へえ、そうなんだ。
鐘の音で人間達の煩悩が消えるの?
僕にはそんな力あるようには見えないけど…」

「こういうのは気持ちが大事なのよ」

「……………」

「あれ?私何か変なこと言った?」

「ううん、何も…」

唐笠はそれ以上は何も言わなかった。
歩いているうちに雨も小雨に変わり、
さっきまで曇っていた空が晴れようとしていた。

「………あ、もうすぐお別れだね」

気がつくと、真っ赤な唐笠は私の手の中から消えていて、
どうしようもない寂しさだけが私の心を支配していた。

祖父母宅に帰ると祖父はおらず、祖母は夕飯の支度をしていた。

「あら、琴音ちゃんおかえりなさい。今日は何処に行ってたの?」

「ただいま。ちょっと神社に」

すると祖母はピタリと動きを止めてこちらを見た。
普段温厚でにこやかな祖母が一切の表情をなくしている。
祖母はいきなり私の両肩を掴むと、険しい顔で私にこう問いかけた。

「琴音、あんた唐笠様は見たかい?」

「ううん、見てないよ」

「そうかい、なら良いんだ」

「その唐笠様がどうかしたの?」

「良いかい琴音、唐笠様には絶対に会ってはいけないよ。会えば連れていかれるからね。」

「会えば、連れていかれるの?」

「そうさ、唐笠様は雨乞いの神様さ。
だけど人間を恨んでいる祟り神でもある。
雨の日は会わないように気を付けるんだよ。」

「それなら、唐笠様はどうして人間を憎むようになったの?」

「それは…」

祖母は何か言いにくそうな顔をして、結局
「とにかく気を付けるんだよ」
と言い残してキッチンへと戻っていった。

ふと写真が気になってポケットに入れていた写真を取り出す。不思議とまた写真は変わっていた。

「ここは、確か…」

再び変わった写真に写っていたのは、この村にある唯一の資料館だった。
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