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君といつまでも
廃刊か結婚か
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着物に身を包んだB子は困惑した顔のM男を見ると口元をほころばせて笑った。その表情を見た編集長も笑い、硬直しているM男の脇腹を肘でつついた。するとM男はどうにか口を開いた。
「……あ、あの? ま、まさか、お見合いの相手がB子先生だとは思いませんでした。……いや、あまりにその、B子先生は着物がお似合いで、なんというか、すごく綺麗で」
M男は懸命に言葉を選びつつ、驚きを隠しきれずに感じた思いを口に出した。
「あらやだわ。そう面と向かって褒められると恥ずかしいわね。どうしましょう私……」
B子はおしろいを塗った顔に手をやり、うっすらと紅潮した頬を隠した。
「いやいやいやB子先生。このM男は正直な男でして。これは縁談も上手く進みそうですな!」
いつの間にか編集長の横に座っていた副編集長が声を上げて手を叩いた。
「いやあ! まったくですよB子先生。仕事はともかくM男は正直さが取柄でねえハッハッハ!」
「やあね編集長も副編集長も。M男さんが可哀そうよ。仕事の話なんてやめましょうよ!」
始めは不機嫌だったB子の表情はすっかりほぐれ、その目はまっすぐにM男を見つめていた。
「これは失礼いたしましたB子先生。では席を変えて、若い、若い二人でゆっくりと……」
編集長と副編集長は目配せして立ち上がり、そっと隣の部屋へと歩いて行った。
「……あの、B子先生。俺、いや僕は今日まで聞いてなくて。ほ、本当に今日は」
M男がB子に話しかけようとしたとき、M男の携帯電話が鳴った。M男はあわてて電話に出た。
「……M男! 話さなくていい! 聞いて適当にうなずいてろ! いいか、B子先生の『半魚人プリンセス』をSE社が狙ってるんだ。あの連載を引き抜かれたら少女ルビアは廃刊だ。お前はうまく話をして連載を守れ! 方法はお前に任せる! 頼んだぞ!」
「……あ、あの? ま、まさか、お見合いの相手がB子先生だとは思いませんでした。……いや、あまりにその、B子先生は着物がお似合いで、なんというか、すごく綺麗で」
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「あらやだわ。そう面と向かって褒められると恥ずかしいわね。どうしましょう私……」
B子はおしろいを塗った顔に手をやり、うっすらと紅潮した頬を隠した。
「いやいやいやB子先生。このM男は正直な男でして。これは縁談も上手く進みそうですな!」
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