上 下
26 / 40
君といつまでも

廃刊か結婚か

しおりを挟む
着物に身を包んだB子は困惑した顔のM男を見ると口元をほころばせて笑った。その表情を見た編集長も笑い、硬直しているM男の脇腹を肘でつついた。するとM男はどうにか口を開いた。
「……あ、あの? ま、まさか、お見合いの相手がB子先生だとは思いませんでした。……いや、あまりにその、B子先生は着物がお似合いで、なんというか、すごく綺麗で」
M男は懸命に言葉を選びつつ、驚きを隠しきれずに感じた思いを口に出した。
「あらやだわ。そう面と向かって褒められると恥ずかしいわね。どうしましょう私……」
B子はおしろいを塗った顔に手をやり、うっすらと紅潮した頬を隠した。
「いやいやいやB子先生。このM男は正直な男でして。これは縁談も上手く進みそうですな!」
いつの間にか編集長の横に座っていた副編集長が声を上げて手を叩いた。
「いやあ! まったくですよB子先生。仕事はともかくM男は正直さが取柄でねえハッハッハ!」
「やあね編集長も副編集長も。M男さんが可哀そうよ。仕事の話なんてやめましょうよ!」
始めは不機嫌だったB子の表情はすっかりほぐれ、その目はまっすぐにM男を見つめていた。
「これは失礼いたしましたB子先生。では席を変えて、若い、若い二人でゆっくりと……」
編集長と副編集長は目配せして立ち上がり、そっと隣の部屋へと歩いて行った。
「……あの、B子先生。俺、いや僕は今日まで聞いてなくて。ほ、本当に今日は」
M男がB子に話しかけようとしたとき、M男の携帯電話が鳴った。M男はあわてて電話に出た。
「……M男! 話さなくていい! 聞いて適当にうなずいてろ! いいか、B子先生の『半魚人プリンセス』をSE社が狙ってるんだ。あの連載を引き抜かれたら少女ルビアは廃刊だ。お前はうまく話をして連載を守れ! 方法はお前に任せる! 頼んだぞ!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件

フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。 寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。 プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い? そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない! スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。

壁の薄いアパートで、隣の部屋から喘ぎ声がする

サドラ
恋愛
最近付き合い始めた彼女とアパートにいる主人公。しかし、隣の部屋からの喘ぎ声が壁が薄いせいで聞こえてくる。そのせいで欲情が刺激された両者はー

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

雌犬、女子高生になる

フルーツパフェ
大衆娯楽
最近は犬が人間になるアニメが流行りの様子。 流行に乗って元は犬だった女子高生美少女達の日常を描く

処理中です...