夕日と白球

北条丈太郎

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新たなる野球部

照れ屋のテル

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 夜空と太陽はケーマと銀次のバッテリー練習をぼんやりと見ていた。ファーストを守るケーマはもともと投手であり、それも左投の本格派であった。夜空は一度ケーマの球を受けたが、背の高いケーマが投げ下ろす直球をまともに受けることができなかった。だが、小船中野球部では主にコーチ役となっている銀次がキャッチャーとしてケーマの球を軽く受けているのを見て夜空は焦った。ケーマが左のリリーフとして練習を始めることについては異論はなかったが、銀次が二番手捕手として練習を始めると、自分より上手いのではないかと感じ始めたのであった。
 ……小船ナインのそれぞれが課題克服の練習に明け暮れているころ、話を終えたタンピンとカズは一つの結論を出していた。それは補欠選手の必要性であった。それこそが喫緊の課題であった。
「今さら野球部に入る二年生なんていないでしょう。他の部活からスカウトってのも前の坂本キャプテンが散々やってダメだったしね。ダメもとで文化部でも当たりますかキャプテン?」
 カズがため息をつきながら言ったとき、タンピンは部員名簿をじっくりと読み始めた。
「……カズ! いたぞ! 幽霊部員がいた! 坂本さんの弟が入部してたの忘れてたよ!」
 後日、タンピンとカズは前キャプテンだった坂本辰馬の家を訪ねた。
「……ああ、テルは野球部だったけど本人が練習に出るの嫌がってたんだよ。悪いな」
 坂本辰馬は弟を紹介しようとしたが、弟は兄の後ろに隠れて紹介されるのを嫌がっていた。
 それでも兄が無理に挨拶させると弟は顔を真っ赤にして何度もお辞儀した。
「……おい照男。可愛い後輩たちのためだからちょっと練習の手伝いくらいはして来いよ」
 手伝いという言葉を聞いた坂本照男は深呼吸してうなずき、坊主頭を深々と下げた。
「……あの、球拾いとか草むしりとかならやります。僕は野球下手なんで」
 ぼそぼそと言った坂本照男は頬を赤らめて再び頭を下げた。
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