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旅は道連れ

事情通の吟遊詩人

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 吟遊詩人とは詩曲を作り、各地を訪れて歌う人々のことである。
 ケンに聞かれたタランはそう答え、マラインの印象についてケンに語った。マラインは簡素ではあるがきちんとした毛皮の服などを着ていた。美しい顔立ちはもちろん、手入れされている灰色の長髪などを見ると貴公子のようであった。
「でもね王子、貴族などであればわざわざ吟遊詩人のような旅人にはならないでしょう。旅なんてお金があれば遊びでいくらでもできますからね。私たちのような修行の旅ならともかく。まあ、彼にもいろいろと事情があるのでしょう」
 マラインについてそう話したタランは、必要以上に関わらないようケンに忠告した。そしてミストにも同じような話をしたが、ミストはマラインにあまり興味がないようだった。だが、ライナはマラインに興味津々という体であった。
「強いとか弱いとかじゃなくてさ、あいつには何かあるよ。あの歌と曲はさ、あれは特別だよ。気分が変わるだけじゃなくて、力が湧く感じになるんだよね」
 マラインが席を外したとき、ケンたちはマラインについて小声で話し合った。
「……ええと、まあ僕の話なんて後でいいでしょう。それよりほら! 皆さんが油断したからユーキ王女が逃げましたよ! 困ったなあ」
 席に戻ったマラインはケンたちに話しかけてレストランの入り口を指さした。ドアが開きっぱなしになっていて、気付くとユーキがいた席には誰もいなかった。
「……あ、馬の鳴き声だ。ユーキが馬に乗って逃げたんだ!」
 ケンはそう言って立ち上がり、走ろうとしたがタランたちが止めた。
「マライン、今ユーキ王女と言いましたね。あの金貨はやっぱり王家の?」
「はい、ユーキはラクマ大王国王家の第三王女です。あの白髪といい、間違いないでしょう。美しい女の子だけど逃げ足が速くて笑っちゃいますねハハハ」
「ハハハ! ユーキを追いかけるのは大変だからほっとこうハハハ!」
 マラインの笑顔を見たケンはつられて笑った。 
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