時の間のスクワール

電話

（どういうつもりなんだ、この野郎。１００％裏があるだろう）
（今朝の会話を聞いていたようなタイミングじゃねえか）
（姉さんが喜ぶのはいいが、茂を信用するのは危険だ。どうするか？）
「ねえねえ拓郎君。彼女としては携帯持ってほしいな……」
のんきな真帆の発言で拓郎の思考は中断された。
（まあいい。とりあえず姉さんを喜ばせてから考えよう）
帰宅後。
「すごいね拓郎！　これがあればまた拓郎が迷子になっても安心ね」
（……返す言葉がない。真美が迷子になったら思い切り言い返すぞ）
「これ、高かったんじゃないの？　お金どうしたの？」
（……茂のことを話すのはまずい。適当に、適当に）
「レンタルだから安いんだよ。心配しないで」
「じゃあ今すぐ拓郎に電話したい。使い方教えて！」
「目の前にいるのに？　友達とか作って電話しなよ。姉さんは……」
その後数時間。妙な「電話ごっこ」は続いた。
「あれ？　拓郎の電話が鳴ってるよ？　私はかけてないのに？」
（茂か？　冗談じゃねえ。いや？　杉田かよ。名前が出てる）
「えへへ。かけちゃった。これで毎日電話できるね。私嬉しい本当に」
拓郎は電話を切った。真美が鋭い目で拓郎を見つめていた。