121 / 126
第二巻刊行記念特別編~フロルの短期留学~
ふうちゃん再び~4
しおりを挟む
「エマさん、こっちです」
魔術院の森の中、フロルが絶好調で薬草探しを楽しんでいた。
この森はとにかく薬草の宝庫なのだ。そこかしこに生えている薬草をかたっぱしから摘みまくっても、ふと横を見るとまた薬草があるという感じだ。
「すごいわ、フロル。どうしたらこんなに薬草を見つけられるの?」
普段はこんな風に簡単に薬草は見つからないのだとエマは言うが、フロルにとっては初めての薬草摘みなので、いまいち、ピンとこない。
「これじゃ、先生がびっくりするわね」
二人の籠の中にはすでに沢山の薬草が摘まっている。その中には、とても希少な草もあるのだという。
「あ、ブール草!」
なじみの草を見つけて、フロルの目が輝く。これをリルにもっていって……と、考えた瞬間、リルは王宮にいて、カイに面倒を見てもらっているのだと思い出した。
(リル…どうしてるかな)
もうそろそろ王宮に帰りたい。リルが寂しそうにしているのではないか。
そう思って、遠く王宮の方角の空を眺める。
その瞬間、フロルは思いがけない光景を見つけて、フロルはぴきりと固まった。
「また風船鳥……」
群れがフロルを追って移動してきたのだろうか。木の上には、またびっしりと群れている風船鳥の姿が…。
「フロル、どうしたの?」
エマがそう言いながら近寄ってきて、また空を見上げて固まっている。
「もしかして……」
フロルはちょっと思い当たる節があって、木の上の鳥に声をかけた。
「ふうちゃん、おいでー」
もし、ここにふうちゃんがいるのなら、きっと木の上から舞い降りてくるはずだ。
思った通りだった。
バサバサと羽音を立てて、フロルの前に舞い降りてきたのは、どこから見ても、紛れもなくふうちゃんであった。
「くっくるー、くっくるー」
目を白黒させて、フロルの前で求愛のダンスを踊る。
間違いない、これは、100%確実にふうちゃんである。
「ふうちゃん、ここまで来ちゃったの?」
フロルがそう言って、ふうちゃんと抱き上げると、ふうちゃんは幸せそうにぽんっと膨らんだ。
風船鳥は怒った時とか、嬉しい時にぽんっと膨らむ習性がある。
ふうちゃんが膨らんだ瞬間、ぽんっ、ぽんっ、と木の上の風船鳥も次々に膨らんでいく。風船鳥は意識を共有しているので、一匹が嬉しくなると他の鳥も同じように嬉しくなるのだ。
「あら、まあ、それって」
膨らんだふうちゃんを抱きながら、フロルはふわふわの感触を堪能する。
「これはふうちゃんって言って、毎日、王宮で求愛してくれてる鳥なんです。どうして、こんな所までついてきちゃったのかな?」
「まあ、可愛いのね」
エマもくすくす笑いながら、二人で交代でふうちゃんと撫でてあげると、ふうちゃんはさらに嬉しくなったようで、へらりとしまりのない笑い顔をうかべている。
他の風船鳥も足元に降りてきて、あたりは、もふもふパラダイスと化していたのである。
授業が終わるまでまだ少し時間があるし、もう薬草は十分に摘んだので、二人は思う存分、風船鳥のもふもふを堪能することに決めた。
◇
ちょうどその頃、フロルたちがいた所から少し離れた場所に、攻撃魔法の鍛錬所があった。
そこで、炎の矢を射る練習をしていたのは、先日、フロルをいけ好かない目で眺めていた貴族の子息たち。
「あー、的ばっかり打つの飽きてきたな」
リーダー格のバズが不満げに呟きながら、またもう一つ、炎を矢を放つ。
バシュッ
矢は的のど真ん中を貫いた。矢の腕前はかなりいい。
「よし、なかなか上手だな」
教官助手が満足げに頷いていると、誰かが来て、助手を呼びに来た。なんでも授業につかう備品が見つからないとのことだ。
「俺は少し席を外すから、そのまま練習を続けてくれ」
そう言って、助手が席を外すと、子息の一人であるジェレミーがちょっと思いついたように言った。
「外で矢を射ってみないか? 的ばっかりだと退屈で仕方がない」
「ああ、屋外にいる小動物を狙うのもいいか」
本来は学院内で生き物に攻撃魔法をかけるのは禁止されているのだが、見つからなきゃ構わないだろうと、彼らは考えていた。
強いものが弱いものを搾取する。
貴族であれば、当たり前のことだ。
「そうだな」
バズは顎に手を当てて少し考えてみた。ちょっとくらいなら構わないだろう。
「よし、じゃあ、森の中で狩りをしようぜ」
「決定だ」
子息たちは、それぞれの弓を持ち、鍛錬場の外に出る。ちょうどその頃、薬草学の生徒たちが森の中をうろついているということを彼らは考えてもみなかったのだ。
そうして、獲物をしばらく探していると森の奥から楽しそうな笑い声が聞こえた。
「おい、あっちで人の声がする。行ってみようぜ」
少し歩いた先、木々の間から、フロルと女子学生が風船鳥に囲まれながら楽しそうに笑いあっている姿が見えた。
まんまるに膨らんだ風船鳥が、フロルの周りでそこかしこに求愛のダンスを踊っている。
「おい、あそこにちょうどいい獲物がいるぜ」
バズが意地の悪い笑みを浮かべた。
「ああ、風船鳥か。まあ獲物としては悪くないな」
もう一人の子息がうなずくと、バズはやおら弓を引き出し、炎の矢をつがえるが、矢が向いている方向は明らかに鳥を狙っているのではない。
「おい、どこを狙ってるんだ。それだとあの聴講生に当たるだろ!」
ジェレミーが慌てて声を上げる。
バズは最初から何もかもわかっているかのように、にやりと笑った。
「だから、どうだって言うんだ。一人や二人怪我をしたってかまわないだろ」
「ばかっ、やめろ。人間に向かって矢を射っていい訳ないだろ」
「いいか、俺たちが弓の練習をしていたら、あいつらが急に鍛錬場に入ってきたことにするんだ」
バズはジロりと周囲の子息たちを眺めた。みんなボスに睨まれたら後々面倒なことを知っている。子息たちは気まずそうに地面に視線を落とした。
つまり口裏を合わせろと言うことか。
「炎の矢が人に当たったら、どうなるか見てみたかったんだ」
「ダメだ。よせっ。バズ!」
子息の中で唯一、ジェレミーがバスを止めようと大声を上げるが、バズはそんなことを全く気にする様子ない。
ジェレミーが止める前にバズは矢を素早く弓につがえ、力一杯ひっぱった。
「ああ、もうだめだ」
炎の矢が当たったら、どのくらいの怪我をするのかはわからない。もしかしたら、何か月も療養することになるかもしれない。
ジェレミーは真っ青になりながら、目をつぶった。人が怪我をするような場面は見たくなかったのだ。
バズはにやにやと笑いながら、まっすぐに矢の先にフロルを捕らえていた。
背後にいる彼らに全く気がつかないまま、フロルはふうちゃんを膝の上に乗せて楽しそうに笑っていた。
◇
前回にお話ししたことですが、野良竜二巻、本日発刊ですー。そして、ヒミツのお話でしたが、野良竜二巻には、なんと!大人になったフロルのイラストが載ってるのですよ!! しかも、素敵なドレスを着てですね、ギルのエスコートで祝賀会に行くというお話になってまして!! 大人のフロル、めっちゃ可愛いです。にもし先生、素敵なイラストを本当にありがとうございます!
魔術院の森の中、フロルが絶好調で薬草探しを楽しんでいた。
この森はとにかく薬草の宝庫なのだ。そこかしこに生えている薬草をかたっぱしから摘みまくっても、ふと横を見るとまた薬草があるという感じだ。
「すごいわ、フロル。どうしたらこんなに薬草を見つけられるの?」
普段はこんな風に簡単に薬草は見つからないのだとエマは言うが、フロルにとっては初めての薬草摘みなので、いまいち、ピンとこない。
「これじゃ、先生がびっくりするわね」
二人の籠の中にはすでに沢山の薬草が摘まっている。その中には、とても希少な草もあるのだという。
「あ、ブール草!」
なじみの草を見つけて、フロルの目が輝く。これをリルにもっていって……と、考えた瞬間、リルは王宮にいて、カイに面倒を見てもらっているのだと思い出した。
(リル…どうしてるかな)
もうそろそろ王宮に帰りたい。リルが寂しそうにしているのではないか。
そう思って、遠く王宮の方角の空を眺める。
その瞬間、フロルは思いがけない光景を見つけて、フロルはぴきりと固まった。
「また風船鳥……」
群れがフロルを追って移動してきたのだろうか。木の上には、またびっしりと群れている風船鳥の姿が…。
「フロル、どうしたの?」
エマがそう言いながら近寄ってきて、また空を見上げて固まっている。
「もしかして……」
フロルはちょっと思い当たる節があって、木の上の鳥に声をかけた。
「ふうちゃん、おいでー」
もし、ここにふうちゃんがいるのなら、きっと木の上から舞い降りてくるはずだ。
思った通りだった。
バサバサと羽音を立てて、フロルの前に舞い降りてきたのは、どこから見ても、紛れもなくふうちゃんであった。
「くっくるー、くっくるー」
目を白黒させて、フロルの前で求愛のダンスを踊る。
間違いない、これは、100%確実にふうちゃんである。
「ふうちゃん、ここまで来ちゃったの?」
フロルがそう言って、ふうちゃんと抱き上げると、ふうちゃんは幸せそうにぽんっと膨らんだ。
風船鳥は怒った時とか、嬉しい時にぽんっと膨らむ習性がある。
ふうちゃんが膨らんだ瞬間、ぽんっ、ぽんっ、と木の上の風船鳥も次々に膨らんでいく。風船鳥は意識を共有しているので、一匹が嬉しくなると他の鳥も同じように嬉しくなるのだ。
「あら、まあ、それって」
膨らんだふうちゃんを抱きながら、フロルはふわふわの感触を堪能する。
「これはふうちゃんって言って、毎日、王宮で求愛してくれてる鳥なんです。どうして、こんな所までついてきちゃったのかな?」
「まあ、可愛いのね」
エマもくすくす笑いながら、二人で交代でふうちゃんと撫でてあげると、ふうちゃんはさらに嬉しくなったようで、へらりとしまりのない笑い顔をうかべている。
他の風船鳥も足元に降りてきて、あたりは、もふもふパラダイスと化していたのである。
授業が終わるまでまだ少し時間があるし、もう薬草は十分に摘んだので、二人は思う存分、風船鳥のもふもふを堪能することに決めた。
◇
ちょうどその頃、フロルたちがいた所から少し離れた場所に、攻撃魔法の鍛錬所があった。
そこで、炎の矢を射る練習をしていたのは、先日、フロルをいけ好かない目で眺めていた貴族の子息たち。
「あー、的ばっかり打つの飽きてきたな」
リーダー格のバズが不満げに呟きながら、またもう一つ、炎を矢を放つ。
バシュッ
矢は的のど真ん中を貫いた。矢の腕前はかなりいい。
「よし、なかなか上手だな」
教官助手が満足げに頷いていると、誰かが来て、助手を呼びに来た。なんでも授業につかう備品が見つからないとのことだ。
「俺は少し席を外すから、そのまま練習を続けてくれ」
そう言って、助手が席を外すと、子息の一人であるジェレミーがちょっと思いついたように言った。
「外で矢を射ってみないか? 的ばっかりだと退屈で仕方がない」
「ああ、屋外にいる小動物を狙うのもいいか」
本来は学院内で生き物に攻撃魔法をかけるのは禁止されているのだが、見つからなきゃ構わないだろうと、彼らは考えていた。
強いものが弱いものを搾取する。
貴族であれば、当たり前のことだ。
「そうだな」
バズは顎に手を当てて少し考えてみた。ちょっとくらいなら構わないだろう。
「よし、じゃあ、森の中で狩りをしようぜ」
「決定だ」
子息たちは、それぞれの弓を持ち、鍛錬場の外に出る。ちょうどその頃、薬草学の生徒たちが森の中をうろついているということを彼らは考えてもみなかったのだ。
そうして、獲物をしばらく探していると森の奥から楽しそうな笑い声が聞こえた。
「おい、あっちで人の声がする。行ってみようぜ」
少し歩いた先、木々の間から、フロルと女子学生が風船鳥に囲まれながら楽しそうに笑いあっている姿が見えた。
まんまるに膨らんだ風船鳥が、フロルの周りでそこかしこに求愛のダンスを踊っている。
「おい、あそこにちょうどいい獲物がいるぜ」
バズが意地の悪い笑みを浮かべた。
「ああ、風船鳥か。まあ獲物としては悪くないな」
もう一人の子息がうなずくと、バズはやおら弓を引き出し、炎の矢をつがえるが、矢が向いている方向は明らかに鳥を狙っているのではない。
「おい、どこを狙ってるんだ。それだとあの聴講生に当たるだろ!」
ジェレミーが慌てて声を上げる。
バズは最初から何もかもわかっているかのように、にやりと笑った。
「だから、どうだって言うんだ。一人や二人怪我をしたってかまわないだろ」
「ばかっ、やめろ。人間に向かって矢を射っていい訳ないだろ」
「いいか、俺たちが弓の練習をしていたら、あいつらが急に鍛錬場に入ってきたことにするんだ」
バズはジロりと周囲の子息たちを眺めた。みんなボスに睨まれたら後々面倒なことを知っている。子息たちは気まずそうに地面に視線を落とした。
つまり口裏を合わせろと言うことか。
「炎の矢が人に当たったら、どうなるか見てみたかったんだ」
「ダメだ。よせっ。バズ!」
子息の中で唯一、ジェレミーがバスを止めようと大声を上げるが、バズはそんなことを全く気にする様子ない。
ジェレミーが止める前にバズは矢を素早く弓につがえ、力一杯ひっぱった。
「ああ、もうだめだ」
炎の矢が当たったら、どのくらいの怪我をするのかはわからない。もしかしたら、何か月も療養することになるかもしれない。
ジェレミーは真っ青になりながら、目をつぶった。人が怪我をするような場面は見たくなかったのだ。
バズはにやにやと笑いながら、まっすぐに矢の先にフロルを捕らえていた。
背後にいる彼らに全く気がつかないまま、フロルはふうちゃんを膝の上に乗せて楽しそうに笑っていた。
◇
前回にお話ししたことですが、野良竜二巻、本日発刊ですー。そして、ヒミツのお話でしたが、野良竜二巻には、なんと!大人になったフロルのイラストが載ってるのですよ!! しかも、素敵なドレスを着てですね、ギルのエスコートで祝賀会に行くというお話になってまして!! 大人のフロル、めっちゃ可愛いです。にもし先生、素敵なイラストを本当にありがとうございます!
0
お気に入りに追加
12,378
あなたにおすすめの小説
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
殿下、側妃とお幸せに! 正妃をやめたら溺愛されました
まるねこ
恋愛
旧題:お飾り妃になってしまいました
第15回アルファポリス恋愛大賞で奨励賞を頂きました⭐︎読者の皆様お読み頂きありがとうございます!
結婚式1月前に突然告白される。相手は男爵令嬢ですか、婚約破棄ですね。分かりました。えっ?違うの?嫌です。お飾り妃なんてなりたくありません。
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。