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突然の婚約破棄からそれは始まった
遭遇~2
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周囲には警務省所属の騎士達が剣を向け、私たちを取り囲む。
「ふん、今さらお出ましか」
ふてぶてしい笑みを浮かべながら、アーロンが剣を鞘から抜き放った瞬間、騎士達がわっとアーロンとノワイエに襲い掛かった。
「よく見ておくんだな」
レイモンドは私の両腕を背中で強く捩じり上げた。
「い、痛っ」
レイモンドの力が思ったより強くて、腕が悲鳴を上げる。なんて馬鹿力なのか。
レイモンドから蕩けるような眼差しを向けられた。そんなに人が痛がってるのが楽しいか。
ストーリー通り、彼はやはり嗜虐癖があるのだ。
その手を振り払おうと、もがいてはみたものの、箱入り娘であったエレーヌが彼にかなうはずもない。顔から血の気が引いていくのを感じながらも、アーロンとノワイエが戦うのを成す術もなく眺めるより他に方法がない。
多勢に無勢。
たった二人で騎士達にかなう訳はない、アーロンはいくら剣が達者とはいえ、庶民なのだ。そう思っていたのに。
「え?」
ところが、現実には、予想外のことが起きていた。アーロンとノワイエはかなり強く、次から次へと敵をなぎ倒していく。
「すごい……」
二人の力量に、思わず感嘆のため息が出る。
そして、たった今、一人の騎士が、ばっさりとアーロンに切り捨てられた。見事な袈裟切りを食らい、その騎士はどっと地面に倒れた。
地下牢の上にたっている建物に火が燃え移ったのだろう。あたりは炎でオレンジ色に染まり、その光の下で、男たちが絶え間なく剣を合わせては、どちらかが倒れていく。
炎の勢いが、また強くなった。はらはらと赤い火の粉が頭の上に落ちてきて、髪の毛がじりっと焦げる。
「ふん、なかなかやるな」
レイモンドが面白くなさそうな顔をする。そして、目の前では、アーロンがまた別の騎士と戦っている。
敵を始末した瞬間の一瞬をついて、アーロンがレイモンドの前へと飛び出してきた。あっという間に間合いを詰められ、レイモンドの顔が悔しそうに歪む。
「エレーヌを返してもらおうか」
アーロンがレイモンドに剣を向けると、レイモンドはすっと私から手を放し、いきなり後ろから突き飛ばした。突然のことだったので、地面に転がりながら二人を見上げると、レイモンドもすらりと剣を抜き放って、アーロンと剣を交えていた。
「彼女が欲しければ、私を倒してから行くんだな」
レイモンドがそう言うと、アーロンはふてぶてしく笑う。
「もちろんだ」
私は地面から素早く立ち上がり、アーロンの邪魔にならないように、二人から大きく距離をとる。
「命が惜しくないと見える」
レイモンドが好戦的に呟くと、アーロンの青い目が獰猛な鷹のように細められ、彼の口元には自信ありげな笑みが静かに浮かんだ。
その傍らでは、ノワイエがアーロンをカバーするため、二人に近寄っていく騎士達をけん制していた。
アーロンとレイモンドの剣が激しくぶつかり合い、鈍い金属音を立てる。
火花が散るような戦いを、私は息を詰めて見つめていた。今まで、男同士の本気の戦いなんて見たことがなかったのだ。
剣を交えたまま、レイモンドが力任せに押すと、細見のアーロンが少し劣勢なようにも見える。しかし、その瞬間、アーロンが蹴りを繰り出し、どかっと、レイモンドの胸元に命中した。
レイモンドはそのまま地面に倒れ込んだ瞬間、アーロンが激しく剣を突き入れる。
次の瞬間、レイモンドはさっとその剣をよけ、素早く立ち上がった。
少し息が上がったのだろう。レイモンドの余裕がなくなったようにも見えた。今の瞬間で、彼はアーロンの力量を悟ったのだ。
二人とも抜きんでた剣術の持ち主だということは、貴族令嬢であるエレーヌの目にもはっきりとわかる。
「すごい……」
レイモンドはともかくとして、アーロンは平民のはずだ。それなのに、戦う技術は王宮の普通の騎士よりもはるかに上だ。
「やるじゃないか、小僧」
レイモンドは頬にかすり傷を受けて、滲みだす血を手の甲でぬぐいながら、にやりと笑う。
「こんなのまだ序の口さ」
アーロンがそう言って、がんがんとレイモンドに打ち込んでいく。レイモンドは、アーロンのスピードにやや遅れて防御しているため、じりじりと劣勢になっていく。
レイモンドは警務省のトップだ。その彼をアーロンが力で押しているのだ。
予想しなかった展開に私は手に汗を握りながら、固唾をのんで見守っていた。そして、ついに決着がつく瞬間が来てしまった。
「覚悟するんだな。マクファーレン」
レイモンドが態勢を崩した瞬間、アーロンはついに最後の攻撃をレイモンドに加えるつもりで、大きく踏み込みながら、勢いよく、彼に向かって剣を振りあげたのである。
「ふん、今さらお出ましか」
ふてぶてしい笑みを浮かべながら、アーロンが剣を鞘から抜き放った瞬間、騎士達がわっとアーロンとノワイエに襲い掛かった。
「よく見ておくんだな」
レイモンドは私の両腕を背中で強く捩じり上げた。
「い、痛っ」
レイモンドの力が思ったより強くて、腕が悲鳴を上げる。なんて馬鹿力なのか。
レイモンドから蕩けるような眼差しを向けられた。そんなに人が痛がってるのが楽しいか。
ストーリー通り、彼はやはり嗜虐癖があるのだ。
その手を振り払おうと、もがいてはみたものの、箱入り娘であったエレーヌが彼にかなうはずもない。顔から血の気が引いていくのを感じながらも、アーロンとノワイエが戦うのを成す術もなく眺めるより他に方法がない。
多勢に無勢。
たった二人で騎士達にかなう訳はない、アーロンはいくら剣が達者とはいえ、庶民なのだ。そう思っていたのに。
「え?」
ところが、現実には、予想外のことが起きていた。アーロンとノワイエはかなり強く、次から次へと敵をなぎ倒していく。
「すごい……」
二人の力量に、思わず感嘆のため息が出る。
そして、たった今、一人の騎士が、ばっさりとアーロンに切り捨てられた。見事な袈裟切りを食らい、その騎士はどっと地面に倒れた。
地下牢の上にたっている建物に火が燃え移ったのだろう。あたりは炎でオレンジ色に染まり、その光の下で、男たちが絶え間なく剣を合わせては、どちらかが倒れていく。
炎の勢いが、また強くなった。はらはらと赤い火の粉が頭の上に落ちてきて、髪の毛がじりっと焦げる。
「ふん、なかなかやるな」
レイモンドが面白くなさそうな顔をする。そして、目の前では、アーロンがまた別の騎士と戦っている。
敵を始末した瞬間の一瞬をついて、アーロンがレイモンドの前へと飛び出してきた。あっという間に間合いを詰められ、レイモンドの顔が悔しそうに歪む。
「エレーヌを返してもらおうか」
アーロンがレイモンドに剣を向けると、レイモンドはすっと私から手を放し、いきなり後ろから突き飛ばした。突然のことだったので、地面に転がりながら二人を見上げると、レイモンドもすらりと剣を抜き放って、アーロンと剣を交えていた。
「彼女が欲しければ、私を倒してから行くんだな」
レイモンドがそう言うと、アーロンはふてぶてしく笑う。
「もちろんだ」
私は地面から素早く立ち上がり、アーロンの邪魔にならないように、二人から大きく距離をとる。
「命が惜しくないと見える」
レイモンドが好戦的に呟くと、アーロンの青い目が獰猛な鷹のように細められ、彼の口元には自信ありげな笑みが静かに浮かんだ。
その傍らでは、ノワイエがアーロンをカバーするため、二人に近寄っていく騎士達をけん制していた。
アーロンとレイモンドの剣が激しくぶつかり合い、鈍い金属音を立てる。
火花が散るような戦いを、私は息を詰めて見つめていた。今まで、男同士の本気の戦いなんて見たことがなかったのだ。
剣を交えたまま、レイモンドが力任せに押すと、細見のアーロンが少し劣勢なようにも見える。しかし、その瞬間、アーロンが蹴りを繰り出し、どかっと、レイモンドの胸元に命中した。
レイモンドはそのまま地面に倒れ込んだ瞬間、アーロンが激しく剣を突き入れる。
次の瞬間、レイモンドはさっとその剣をよけ、素早く立ち上がった。
少し息が上がったのだろう。レイモンドの余裕がなくなったようにも見えた。今の瞬間で、彼はアーロンの力量を悟ったのだ。
二人とも抜きんでた剣術の持ち主だということは、貴族令嬢であるエレーヌの目にもはっきりとわかる。
「すごい……」
レイモンドはともかくとして、アーロンは平民のはずだ。それなのに、戦う技術は王宮の普通の騎士よりもはるかに上だ。
「やるじゃないか、小僧」
レイモンドは頬にかすり傷を受けて、滲みだす血を手の甲でぬぐいながら、にやりと笑う。
「こんなのまだ序の口さ」
アーロンがそう言って、がんがんとレイモンドに打ち込んでいく。レイモンドは、アーロンのスピードにやや遅れて防御しているため、じりじりと劣勢になっていく。
レイモンドは警務省のトップだ。その彼をアーロンが力で押しているのだ。
予想しなかった展開に私は手に汗を握りながら、固唾をのんで見守っていた。そして、ついに決着がつく瞬間が来てしまった。
「覚悟するんだな。マクファーレン」
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