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最終章
最終話~3
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切り立った崖に面した山道の中で敵に襲われた騎士達は、勇猛果敢に戦いを繰り広げていた。あちこちで、馬が嘶き、地面を大きく蹴り上げている中、騎士達は刃を交え、一進一退の攻防戦を繰り広げていた。ジュリアもまた目の前の敵と刃を交え防衛に特化し、その間にエリゼルが優位に立てるように敵を阻む。
一歩間違えれば、崖下に転落しかねない足場のもとで敵と対峙するのはかなりの労力がいる。それでも、戦況は優位に傾きつつあることははっきりしてきた。もう少しで敵を鎮圧することが出来るかもしれない。手応えを感じ、味方の間にほんの少し余裕が見え始めた瞬間のことだった。
ふっと気がつけば、ジュリアの視界の端に、こちらへ飛んでくる一本の矢が目にはいった。それはまっすぐな軌道を保ちながら、エリゼルの背中へと迫っている。
「危ないっ」
ほんの咄嗟の判断だった。ジュリアはエリゼルを横から突き飛ばした瞬間、その矢の軌道の中に自分が入ってしまったことを悟った。
(しまった!)
そう思ったのが先だったのかどうか、ジュリアの記憶は定かではない。
一瞬の強い衝撃の後、気がつけば、鋭い矢尻を持った矢が深々と自分の肩へと刺さっていたからだ。痛みと衝撃で思わず目が眩んだ。一瞬意識が飛び、ふらりと歩みを勧めた先は ── 崖の外だった。
「ジュリア!」
エリゼル殿下が息をのんで叫んだのが見えたが、その瞬間、ジュリアは崖から足を踏み外し、真っ逆さまに渓谷の中へと転落していた。
「くっ」
誰かに強く腕を掴まれた感覚がして、気がつけば、崖から身を乗り出して、殿下が自分の腕を掴んでいた。
気がつけば、崖の上に宙ぶらりんでぶら下がり、足下にはただただ広い空間と30メートルはありそうな眼下には、冷たそうな水を湛えた急流が岩にぶつかりながら流れている。岩はごつごつとしていて、落ちたら岩にぶつかりそうだ。もし命があれば、だが。
普段ならそのまま這い上がれる状況のはずなのに、腕に力が入らない。殿下が掴んだジュリアの腕は、不運なことに矢が貫通しているほうの腕だったからだ。ジュリアも這い上がろうともがいたが、全く力が入らなかった。もしかしたら、神経をやられているのかもしれない。
「ジュリア、気を確かにもて。今、助けてやる」
「腕が・・射られて力がはいらないのです」
「ジュリア、出血が酷くなる。声を出すな」
命拾いしたとほっとした時、自分の腕を掴んでいるはずの殿下に違和感を感じた。視線を上げれば、エリゼルの美しい顔が苦痛に歪んでいる。嗅ぎ慣れた匂いが鼻腔をついた。鉄を含んだその匂いは、血だった。自分を掴んでいるエリゼルの手が朱にそまる。それが、自分の血ではなく、殿下の血であることに気づくまで、それほど時間は掛からなかった。
ジュリアが視線を上げれば、苦痛に歪んだエリゼルの顔のすぐ傍の肩から大きく出血しているのがわかる。剣による挫傷、その傷はぱっくりと割れている。自分を気にして振り向きざまに、敵に後から切りつけられたのだろう。
「殿下、傷が、出血しています」
それでも、宙ぶらりんで崖からぶら下がっているジュリアが頼りに出来るのはエリゼルの腕のみだ。
「他の奴らが今こちらに来る。がんばるんだ、ジュリア」
エリゼルの肩の傷は大きく裂けていた。そこから、真っ赤な血がだらだらと流れおち、少しずつ、ジュリアを掴んでいる手へと流れ込む。ぬるりと生暖かい血のせいで、腕が滑りやすく、少しずつ、エリゼルの腕からジュリアが下へ下へと落ちていく。
殿下の手から滑り落ちたら、崖から一直線に転落だ。ジュリアもエリゼルの手を掴もうともがいても、矢で射貫かれた肩は全く言うことを聞いてくれない。
「ジュリア、大人しくして。味方が来るまでじっとしていろ」
エリゼルの苦痛に歪んだ顔がいっそう酷くなった。彼もまた限界に近くなっているのだろう。
エリゼルを掴んでいる手が射られていなければ、這い上がれたはずだった。また、エリゼルもジュリアを掴んでいた肩が切られていなければ、すぐに彼女を引き上げられたはずだ。
ぬるぬるした血のせいで、エリゼルに掴まれていた場所が腕から手首へとさらに滑り落ちていた。ジュリアもこれ以上滑り落ちないようにと祈るよりほかはない。
しかし、不運というのは重なるものである。
「誰か、殿下とマクナムを助けろ!」
少し離れた所で味方の誰かが叫ぶ声が聞こえる。
「くそう、敵に阻まれている。もう少し時間がかかる。マクナム、耐えろ!出来るだけ早くそちらに行く」
味方の騎士が遠くから叫んでいるのが聞こえるが、ジュリアは、それまで持ちこたえられるかどうか、全く自信がなかった。エリゼルの必死の努力も空しく、彼の手から一センチ、また一センチと、下へと滑り落ちていく。
これ以上落ちないようにするにはどうしたらいいのか。他に助かる道はないか、困惑して視線を下に向けても、はるか足下には空間が広がっているだけだ。このまま落ちてしまうかもしれない。
「ジュリア、手を離すな!」
エリゼルはそう言うが、血で塗るついた手は自分の言うことを聞いてくれない。
くっ、
顔をしかめて、激痛が走る腕に最後の力をこめるが、無情にも、血で塗れた彼の指の中から自分の指が滑り落ちて行くのが見えた。
ああ、落ちてしまう。どうしよう・・・
殿下の手から滑り落ちた瞬間、スローモーションのように自分が何十メートルも下の崖へと真っ逆さまに落ちていくのがわかった。その瞬間、ジュリアの脳裡に浮かんだのは、紛れもなく、ジョルジュ・ガルバーニ公爵の顔だった。
彼が静かに執務室の机に向っている姿が脳裡に浮かんだ。彼は自分の帰郷を待ちわびてくれているはずだ。
「こんな時期に遠征に行くべきではない」
彼の声が聞こえたような気がした。
渋い顔をして自分の後姿をいつまでも見送ってくれていた彼。私の、唯一の、愛しい人・・・彼が笑うと目じりに少し皺が出来る。それが愛らしくてジュリアが彼の頬に唇をよせれば、彼は口元を微かにあげて、ジュリアの愛撫を受け入れる・・・
─ ジョルジュ
その次の瞬間、ジュリアの体は急流に叩きつけられ、暗黒の闇の中へと意識が飛んだ。矢が肩に深く突き刺さったままジュリアの体は冷たい濁流に呑み込まれ、流されて行く。
「ジュリア! ジュリア!」
崖をのぞき込みながら、悲痛な声で叫ぶエリゼルの声はジュリアには届いていない。渓流にはエリゼルの悲痛な叫び声だけがこだましていた。
彼女の姿は濁流に呑み込まれ水に沈んだまま流されてしまい、エリゼルは彼女の姿を完全に見失った。
◇
その頃、ジョルジュ・ガルバーニは執務室で仕事の書類に目を通していた。ふと窓の外に目をやれば、暗い空が広がり雪もちらほらと舞い降りてくる。
「雪になりそうですね」
書記官が何でもないような顔で言うが、ジョルジュは経験したことがない不安が胸をよぎって仕方が無い。
こういう時は何か悪いことがおこりがちなのだ。
嫌な胸騒ぎを感じたジョルジュは、それが杞憂であることを望みがなら現実に意識を向けようと努めた。
明後日にはジュリアが帰ってくる。待ち遠しい思いと一刻も早く彼女に会いたくて、はやる気持ちを抑えることも難しい。
「もうすぐマクナム様がお戻りになりますね」
「ああ、早く帰ってこないかと落ち着かない」
「大丈夫ですよ。殿下と行動を共にしている者達は騎士団の中でも精鋭中の精鋭ですからね」
「それでも心配なのだよ」
うっすらと眉を顰めて、憂い顔をする主を、書記官は滅多に見ない領主の顔をまじまじと見てしまった。一体、何を心配することがあるのだろうか。マクナム様は絶対に意気揚々と無事で戻られるのに決まっているのに。
そんな自分の杞憂を自分でも笑い飛ばせず、ジョルジュも苦労した。
─ 一体、何を憂うことがあるのか。
それでも胸の不安は一向に消えてはくれない。そんな自分をばかばかしいと思い、ジョルジュは首を振って、つまらない杞憂を振り払おうと試みた。
もうすぐ彼女を自分の腕の中に抱きしめられるというのに。
遠征に行かせなければよかった。無理やりにでも屋敷に彼女を止めて毎日のように彼女の耳元で愛を囁き、甘い時を過ごしておけばよかった。これが最後のミッションだから、とジュリアがジョルジュを熱心に説得するのに負けてしまった自分を悔やんだ。
それでも、許してしまったことは仕方が無い。彼女が戻ってきたら、二度と自分の手元から離れてしまわないように、幾重にも縛り付けておかなければ。
「何か、問題でもありましたでしょうか?」
領地の目録を前に手を止めた領主に、書記官が怪訝な顔をして聞く。
「・・・いや、特段、問題はない」
「では、次の領地へと進みましょう」
「ああ」
ジョルジュは窓の外にもう一度視線を向けた。
「明日は雪になるのでしょうか?」
「いや。ちらほらと雪は降るようだが大雪にはならないそうだよ」
「それでもかなり寒いようですね」
「ジュリアの旅程に影響が出なければいいが・・・」
部屋の中では、暖炉の薪がぱちりと火の粉を飛ばしてはぜた。
そんな二人の会話を肯定するかのように、窓の外では凍えるような風がひゅうと吹き、粉雪が少し舞い降りてきた。
一歩間違えれば、崖下に転落しかねない足場のもとで敵と対峙するのはかなりの労力がいる。それでも、戦況は優位に傾きつつあることははっきりしてきた。もう少しで敵を鎮圧することが出来るかもしれない。手応えを感じ、味方の間にほんの少し余裕が見え始めた瞬間のことだった。
ふっと気がつけば、ジュリアの視界の端に、こちらへ飛んでくる一本の矢が目にはいった。それはまっすぐな軌道を保ちながら、エリゼルの背中へと迫っている。
「危ないっ」
ほんの咄嗟の判断だった。ジュリアはエリゼルを横から突き飛ばした瞬間、その矢の軌道の中に自分が入ってしまったことを悟った。
(しまった!)
そう思ったのが先だったのかどうか、ジュリアの記憶は定かではない。
一瞬の強い衝撃の後、気がつけば、鋭い矢尻を持った矢が深々と自分の肩へと刺さっていたからだ。痛みと衝撃で思わず目が眩んだ。一瞬意識が飛び、ふらりと歩みを勧めた先は ── 崖の外だった。
「ジュリア!」
エリゼル殿下が息をのんで叫んだのが見えたが、その瞬間、ジュリアは崖から足を踏み外し、真っ逆さまに渓谷の中へと転落していた。
「くっ」
誰かに強く腕を掴まれた感覚がして、気がつけば、崖から身を乗り出して、殿下が自分の腕を掴んでいた。
気がつけば、崖の上に宙ぶらりんでぶら下がり、足下にはただただ広い空間と30メートルはありそうな眼下には、冷たそうな水を湛えた急流が岩にぶつかりながら流れている。岩はごつごつとしていて、落ちたら岩にぶつかりそうだ。もし命があれば、だが。
普段ならそのまま這い上がれる状況のはずなのに、腕に力が入らない。殿下が掴んだジュリアの腕は、不運なことに矢が貫通しているほうの腕だったからだ。ジュリアも這い上がろうともがいたが、全く力が入らなかった。もしかしたら、神経をやられているのかもしれない。
「ジュリア、気を確かにもて。今、助けてやる」
「腕が・・射られて力がはいらないのです」
「ジュリア、出血が酷くなる。声を出すな」
命拾いしたとほっとした時、自分の腕を掴んでいるはずの殿下に違和感を感じた。視線を上げれば、エリゼルの美しい顔が苦痛に歪んでいる。嗅ぎ慣れた匂いが鼻腔をついた。鉄を含んだその匂いは、血だった。自分を掴んでいるエリゼルの手が朱にそまる。それが、自分の血ではなく、殿下の血であることに気づくまで、それほど時間は掛からなかった。
ジュリアが視線を上げれば、苦痛に歪んだエリゼルの顔のすぐ傍の肩から大きく出血しているのがわかる。剣による挫傷、その傷はぱっくりと割れている。自分を気にして振り向きざまに、敵に後から切りつけられたのだろう。
「殿下、傷が、出血しています」
それでも、宙ぶらりんで崖からぶら下がっているジュリアが頼りに出来るのはエリゼルの腕のみだ。
「他の奴らが今こちらに来る。がんばるんだ、ジュリア」
エリゼルの肩の傷は大きく裂けていた。そこから、真っ赤な血がだらだらと流れおち、少しずつ、ジュリアを掴んでいる手へと流れ込む。ぬるりと生暖かい血のせいで、腕が滑りやすく、少しずつ、エリゼルの腕からジュリアが下へ下へと落ちていく。
殿下の手から滑り落ちたら、崖から一直線に転落だ。ジュリアもエリゼルの手を掴もうともがいても、矢で射貫かれた肩は全く言うことを聞いてくれない。
「ジュリア、大人しくして。味方が来るまでじっとしていろ」
エリゼルの苦痛に歪んだ顔がいっそう酷くなった。彼もまた限界に近くなっているのだろう。
エリゼルを掴んでいる手が射られていなければ、這い上がれたはずだった。また、エリゼルもジュリアを掴んでいた肩が切られていなければ、すぐに彼女を引き上げられたはずだ。
ぬるぬるした血のせいで、エリゼルに掴まれていた場所が腕から手首へとさらに滑り落ちていた。ジュリアもこれ以上滑り落ちないようにと祈るよりほかはない。
しかし、不運というのは重なるものである。
「誰か、殿下とマクナムを助けろ!」
少し離れた所で味方の誰かが叫ぶ声が聞こえる。
「くそう、敵に阻まれている。もう少し時間がかかる。マクナム、耐えろ!出来るだけ早くそちらに行く」
味方の騎士が遠くから叫んでいるのが聞こえるが、ジュリアは、それまで持ちこたえられるかどうか、全く自信がなかった。エリゼルの必死の努力も空しく、彼の手から一センチ、また一センチと、下へと滑り落ちていく。
これ以上落ちないようにするにはどうしたらいいのか。他に助かる道はないか、困惑して視線を下に向けても、はるか足下には空間が広がっているだけだ。このまま落ちてしまうかもしれない。
「ジュリア、手を離すな!」
エリゼルはそう言うが、血で塗るついた手は自分の言うことを聞いてくれない。
くっ、
顔をしかめて、激痛が走る腕に最後の力をこめるが、無情にも、血で塗れた彼の指の中から自分の指が滑り落ちて行くのが見えた。
ああ、落ちてしまう。どうしよう・・・
殿下の手から滑り落ちた瞬間、スローモーションのように自分が何十メートルも下の崖へと真っ逆さまに落ちていくのがわかった。その瞬間、ジュリアの脳裡に浮かんだのは、紛れもなく、ジョルジュ・ガルバーニ公爵の顔だった。
彼が静かに執務室の机に向っている姿が脳裡に浮かんだ。彼は自分の帰郷を待ちわびてくれているはずだ。
「こんな時期に遠征に行くべきではない」
彼の声が聞こえたような気がした。
渋い顔をして自分の後姿をいつまでも見送ってくれていた彼。私の、唯一の、愛しい人・・・彼が笑うと目じりに少し皺が出来る。それが愛らしくてジュリアが彼の頬に唇をよせれば、彼は口元を微かにあげて、ジュリアの愛撫を受け入れる・・・
─ ジョルジュ
その次の瞬間、ジュリアの体は急流に叩きつけられ、暗黒の闇の中へと意識が飛んだ。矢が肩に深く突き刺さったままジュリアの体は冷たい濁流に呑み込まれ、流されて行く。
「ジュリア! ジュリア!」
崖をのぞき込みながら、悲痛な声で叫ぶエリゼルの声はジュリアには届いていない。渓流にはエリゼルの悲痛な叫び声だけがこだましていた。
彼女の姿は濁流に呑み込まれ水に沈んだまま流されてしまい、エリゼルは彼女の姿を完全に見失った。
◇
その頃、ジョルジュ・ガルバーニは執務室で仕事の書類に目を通していた。ふと窓の外に目をやれば、暗い空が広がり雪もちらほらと舞い降りてくる。
「雪になりそうですね」
書記官が何でもないような顔で言うが、ジョルジュは経験したことがない不安が胸をよぎって仕方が無い。
こういう時は何か悪いことがおこりがちなのだ。
嫌な胸騒ぎを感じたジョルジュは、それが杞憂であることを望みがなら現実に意識を向けようと努めた。
明後日にはジュリアが帰ってくる。待ち遠しい思いと一刻も早く彼女に会いたくて、はやる気持ちを抑えることも難しい。
「もうすぐマクナム様がお戻りになりますね」
「ああ、早く帰ってこないかと落ち着かない」
「大丈夫ですよ。殿下と行動を共にしている者達は騎士団の中でも精鋭中の精鋭ですからね」
「それでも心配なのだよ」
うっすらと眉を顰めて、憂い顔をする主を、書記官は滅多に見ない領主の顔をまじまじと見てしまった。一体、何を心配することがあるのだろうか。マクナム様は絶対に意気揚々と無事で戻られるのに決まっているのに。
そんな自分の杞憂を自分でも笑い飛ばせず、ジョルジュも苦労した。
─ 一体、何を憂うことがあるのか。
それでも胸の不安は一向に消えてはくれない。そんな自分をばかばかしいと思い、ジョルジュは首を振って、つまらない杞憂を振り払おうと試みた。
もうすぐ彼女を自分の腕の中に抱きしめられるというのに。
遠征に行かせなければよかった。無理やりにでも屋敷に彼女を止めて毎日のように彼女の耳元で愛を囁き、甘い時を過ごしておけばよかった。これが最後のミッションだから、とジュリアがジョルジュを熱心に説得するのに負けてしまった自分を悔やんだ。
それでも、許してしまったことは仕方が無い。彼女が戻ってきたら、二度と自分の手元から離れてしまわないように、幾重にも縛り付けておかなければ。
「何か、問題でもありましたでしょうか?」
領地の目録を前に手を止めた領主に、書記官が怪訝な顔をして聞く。
「・・・いや、特段、問題はない」
「では、次の領地へと進みましょう」
「ああ」
ジョルジュは窓の外にもう一度視線を向けた。
「明日は雪になるのでしょうか?」
「いや。ちらほらと雪は降るようだが大雪にはならないそうだよ」
「それでもかなり寒いようですね」
「ジュリアの旅程に影響が出なければいいが・・・」
部屋の中では、暖炉の薪がぱちりと火の粉を飛ばしてはぜた。
そんな二人の会話を肯定するかのように、窓の外では凍えるような風がひゅうと吹き、粉雪が少し舞い降りてきた。
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