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王子様から逃げている場合ではない

第14話 ヒロインぼっち

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「私は騎士の家系の子と気が合っておりまして。領地が同じものや、近しい領地で顔を以前から知っていた面々と組んでおります」
 騎士家系出身のエドガーは同じ境遇の子のほうが気が合うのだろうけど。
 同じ領地や近しい領地ですって……


 気があうと言っていることを考えると。
 天気の話をしちゃうヒロインであるマリアとはパーティー組んでないんじゃ。

「あの、マリア様は誰と組んだのかなぁ……だなんて」
 私は待ってみた、エドガーがマリアは自分たちのパーティーにいるのだということを。
 しかし私の願いはむなしくエドガーはあっさりとこういった。

「光魔法は人気ですから。かなりの人が声をかけにいって人垣ができていたと思うのですが、結局誰と一緒かまではちょっと……」
 組み合わけをする際に、声をかけにいった生徒が何人かいたようでどうやらそのどこかに入ったのだと思うってことだったんだけど。
 


 どうなってんのよ、攻略対象者の好感度たち……
 確か、一定以上好感度がある攻略対象者の中で一番仲のいい人といい感じに同じパーティーになったはずなんだけれど。


 ヒロイン誰ともパーティー組んでないってことはないよ……ね?
 恋愛ゲームだから、パーティー組める程度の好感度は誰かしら毎回あったし。
 このパターンだとどうなるんだろう……



 そんな私の予想は悪いことに限って見事に的中した。
 いつも通り社交室で授業が終わるのを待っていると、神妙な面持ちでアンナとミリーがやってきた。
「二人ともどうかしまして?」
「あー」
 アンナがなんて答えたらいいか言葉を選ぶのを遮るようにミリーははっきりこういった。
「授業でけが人が出たんですよ。レーナさまはここで休まれていて正解でした!」
「ミリー!?」
 ミリーらしく、状況報告の後に私がもし授業にでていたら、私が怪我をしただろうという失言を挟みつつ告げられたことは衝撃だった。


 怪我人はゲームではきいたことなかったけれど。
 メインストーリーに関係がないところで怪我する人は誰かしらいてもおかしくないわけでと私なりに納得をしようとするがアンナが詳細を話す。
「実戦練習をかねてマルローネ先生が捕獲してきた下位の魔物を倒す授業だったのですが。そこで、複数の生徒が怪我をいたしました」
「えぇ!? 二人共怪我は?」
「私たちは無事です、アンナがこうドーンとやって、後のみんなで徐々にという感じで普通に狩って終わりました」
 私作戦通り、アンナがドーンとぶちかまし、ミリー、フォルト、ジーク、シオンでその後をいい感じにしたようだ。


「私たちは、ちょうどこのメンバーで対抗戦の練習をしておりましたから。連携に問題は特になかったのですが。やはり初めてチームを組んで下位とはいえ魔物を倒す授業は厳しいと感じた生徒も多くいたようで」
 アンナは私に失礼にならないように言葉を選んでいるのだと思うけれど。
 他のパーティーでは、やっぱりチームで連携をということに慣れてない差がでたのではないかと締めくくった。


「それぞれのクラスの生徒がまじりあうようにパーティーを組んでいるのに、3組もけが人が出るだなんて、やっぱり授業のやり方に問題があるんだと私は思いますよ!」
 ミリーの言うとおりだ。
 それだけ複数人のけが人がでることがあれば、ゲームで多少は話題になったはず。
 私が授業に参加しなかったり、攻略対象ががっつり固まったパーティーは実際に私のパーティーのせいでできてしまっているけれど。
 そこまでの被害が出るような授業が初の実戦練習として選ばれるのは何かしらの問題があるのではなんてことが浮かんでくる。


 あっ!? ヒロイン。
「マ、マリアさんは。マリアさんは無事?」
「怪我をされた生徒の中にはいらっしゃらなかったかと……、ねぇミリー?」
「えぇ、怪我人の中にはいなかったと……」
 アンナとミリーが顔を見合わせる。

 ヒロイン補正なのか、マリアが怪我をすることはなかったようだけれど。
 マリアは無事でも、第二王子のリジェットはどうなったんだろう。
 リジェットは身分を隠して学園にいる隠しキャラだけれど。
 身分の高さと魔力量なんかは基本比例するようだから。死ぬようなことはないと思うけれど……
 
 なんだかゲームになかった展開に大丈夫なの? という感情が強く出てきて。
 私の不安や心配は残念なことに現実になる。


 生徒が複数人怪我をした日から数日後。
 今度こそはさらに万全の体制を期して行われる授業にもかかわらず……
 再び先生があわてて駆け抜けていく音が聞こえた。

 しばらくして社交室に入ってきたのは、お迎えのアンナとミリーではなくシオンだった。
「レーナ様! お茶菓子ある?」
「えぇ、いつものところに」
 イライラとした様子で、シオンはお茶菓子の並ぶテーブルの前の椅子に陣取ると、パクパクとお茶菓子を食べ始める。


 その様子になんだか押された私は、少し冷めているけれどティーポットに残ったお茶を新しいカップに注いでシオンに差し出した。
「今日も先生方が走っていったようだけれど。何かあったの?」
「怪我人がまた出たの。それも前回より多く。治癒師だから早く直せとか言われてもさ。限度があるでしょう。戦場じゃあるまいし」
 治癒師は貴重。
 けが人が出れば、シオンが順当に駆り出されけが人のしりぬぐいをパーティー以外の分も当然する羽目になったようだけれど。
 問題はその数らしい。



「一体どうなってるの?」
 明らかに何かがおかしい。
 でも何があってこうなっているのかの検討がつかない。
 私の知らない何かが間違いなく起こっているのだと思う。

「そんなのこっちが聞きたいよ。前回の授業もそうだけど。僕ほど慣れて治療できる治癒師は学園にはリオンくらい。魔物が原因でできた怪我の治癒には、通常の怪我とは違い多くの魔力を持っていかれるし。魔物に対しての知識もいる。魔力にも限界があるから、怪我したら治癒師にほいほい丸投げすればOKじゃなし。こんなことが何度も繰り返されるようなら、僕も社交室でさぼるしかなくなる……」
 授業の負傷者をさっと直せのようなことは短いスパンでほいほいやられたらたまったもんじゃないようだ。


 魔力は食事で回復するのだろうかと思うくらい、いい食べっぷりのシオンを私は見つめた。


 2度にわたる、初歩の授業中の複数人の生徒の怪我に学園内の雰囲気は以前とは変わっていた。
 

 
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