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コミカライズ2巻記念
レーナが眠ったその後で②
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「それでは、ミリー説明を……」
「はい、アンナ。今回の捕縛対象となる3名は現在寮の1階の自室にいることが確認がとれております。隣接した部屋の生徒によりますと……」
平民が多く利用する寮の1階は一部屋のサイズが小さく、扉の閉会音が聞こえるそうで。
どうやら、隣接する部屋にいる生徒からの情報で今回の捕縛対象は連日夜になると部屋を後にするということが分かったそうだ。
寮内の生徒を非難させれば、当然目立つし相手に感づかれて逃げられてしまうかもしれない。
連日夜になれば寮を後にしてくれるなら、これ幸い。
寮から出た後での捕縛を行おうということにまとまった。
「寮に残る生徒の安全は本当に大丈夫だろうか?」
俺が今回の作戦で一番引っかかるところだった。
あきらかな悪意をもって学園に潜入した教会の人間を逃がすことは危険だ、だがどんな被害があるかを考えると、本当に避難させなくても平気なのかがよぎる。
「平民の出ということもあり、魔力量が少なく大きな被害を起こす力はそもそもないと思われますが……。念のため魔法に長けた先輩方に控えてもらい、かつ魔道具でフォローをしていきます」
「万が一のけが人が出た際は、僕が」
俺の不安は、アンナ嬢とシオンによって薄れた。
「皆様、窓の外で合図が」
窓の外を見ていたメイドの一人が、先輩方の合図があったことを告げる。
いよいよということで、俺も含め皆の顔が緊張にこわばる。
俺たちは一年だし、大捕り物は先輩方に任せてサポートにまわる予定だがそれでも緊張するものはする。
「皆様のお力でどうか……止めてください」
シオンがそういって頭を深く下げた。
『第二王子暗殺計画』まるで小説にあるような出来事を止める。
シオンは教会の神官で、いくらこのことをリークしたとはいえ、その後何を問われるかわからない。
それでも、シオンは選んだ。
教会ではなく、レーナ嬢を……
「俺たちは1年だ。無理して危ない場所に挑む必要はない。それだけは念頭に置いておいてくれ。……行こう」
俺がそう声をかけると、皆がうなずき。
俺たちは灯りを持たず寮を後にした。
――――――――――――――――――
王立魔法学園では、深夜の警備の目をかいくぐり教室の1室に3人の生徒の影があった。
夜だというのに人目を避けるように灯りもつけないその光景は異様だ。
「見つかったか?」
「いや、手がかりすらない……」
「グスタフさまはなんて?」
朱封蝋での要請。
それは封を開ける前から、直系による重要な連絡が入っていることがお約束の代物だった。
そこに書かれていたこと、のちに使者がおくられ今回の計画の全容を聞かされたがいまだに絵空事だったことが。
夜人目を忍ぶように灯りもつけずに寮を後にした対象人物をみて、現場には緊張がはしった。
そして学年も違い、学園生活でこれまで一切の接点もなかっただろう生徒が教室に集まり。
そしてなれたように状況報告をする会話を耳にして、もうこれは遊びではなく事実なのだと今回の戦略に参加したすべての生徒が認めざるを得なかった。
戦闘訓練はそれなりにした。
だがそれだけで、実践経験があるものがこの場にどれだけいるだろうか。
脇を最高学年で固めたとはいえ、今回要請があったのは、成績のいいすべての生徒ではなく。
ことがことゆえに、話が外に漏れないことを考えられた人選。
さらに、学園に滞在していたのに。誰一人としてこれまで知らなかった学園の秘密通路の存在がより一層。
どれほどの異常事態と対面しているのかを裏づけた。
誰が先陣を切るのか……
数では絶対の有利を誇っているはずなのに、飛び出す勇気が出る者は誰もおらず、皆顔を見合わせた。
相手は教会の人間。普段の成績については知っている生徒もいるが、今回とんでもないことを企てていた人物……
実戦経験の少なさが、一歩前に進むことを躊躇させる。
そんな時、先陣を切ったのが。
髪の色こそ違うが、教会の神官という異例の経歴で学園に入ってきた人物――シオンだった。
満月で月あかりがあり普段より明るいとはいえ、灯りのついていない建物の中は暗い。
でも、そんな中を臆することなく普段通りの足取りで歩いていく。
そして一拍の間をおいて、身体強化を使ったのだろう。
灯りがおぼつかない中にも関わらず、その身体が一気にスピードをあげ3人をとらえる。
身体が柔らかくしなり、背後にまわりこんだ一人に強烈な蹴りをお見舞いすると、衝撃で蹴られた人物は吹っ飛び、テーブルに鈍い音を立ててぶつかる。
「シオン、お前……!?」
「あれ? 僕はよく知らないのに、そっちは僕のこと知ってるんだ」
そんな二人の会話が終わるのを待つなんてこと、実践では通用するはずもなく。
顔を見合わせ合図し、3人を捕縛するために一斉に生徒がかけた。
大きな音が当然たち、音からしてすでにここは方位されているとわかったのだろう。
蹴られうずくまる生徒を残して、なんと2人の生徒は窓をやぶって、外へと駆け出した。
追いかけっこの始まりだった。
「はい、アンナ。今回の捕縛対象となる3名は現在寮の1階の自室にいることが確認がとれております。隣接した部屋の生徒によりますと……」
平民が多く利用する寮の1階は一部屋のサイズが小さく、扉の閉会音が聞こえるそうで。
どうやら、隣接する部屋にいる生徒からの情報で今回の捕縛対象は連日夜になると部屋を後にするということが分かったそうだ。
寮内の生徒を非難させれば、当然目立つし相手に感づかれて逃げられてしまうかもしれない。
連日夜になれば寮を後にしてくれるなら、これ幸い。
寮から出た後での捕縛を行おうということにまとまった。
「寮に残る生徒の安全は本当に大丈夫だろうか?」
俺が今回の作戦で一番引っかかるところだった。
あきらかな悪意をもって学園に潜入した教会の人間を逃がすことは危険だ、だがどんな被害があるかを考えると、本当に避難させなくても平気なのかがよぎる。
「平民の出ということもあり、魔力量が少なく大きな被害を起こす力はそもそもないと思われますが……。念のため魔法に長けた先輩方に控えてもらい、かつ魔道具でフォローをしていきます」
「万が一のけが人が出た際は、僕が」
俺の不安は、アンナ嬢とシオンによって薄れた。
「皆様、窓の外で合図が」
窓の外を見ていたメイドの一人が、先輩方の合図があったことを告げる。
いよいよということで、俺も含め皆の顔が緊張にこわばる。
俺たちは一年だし、大捕り物は先輩方に任せてサポートにまわる予定だがそれでも緊張するものはする。
「皆様のお力でどうか……止めてください」
シオンがそういって頭を深く下げた。
『第二王子暗殺計画』まるで小説にあるような出来事を止める。
シオンは教会の神官で、いくらこのことをリークしたとはいえ、その後何を問われるかわからない。
それでも、シオンは選んだ。
教会ではなく、レーナ嬢を……
「俺たちは1年だ。無理して危ない場所に挑む必要はない。それだけは念頭に置いておいてくれ。……行こう」
俺がそう声をかけると、皆がうなずき。
俺たちは灯りを持たず寮を後にした。
――――――――――――――――――
王立魔法学園では、深夜の警備の目をかいくぐり教室の1室に3人の生徒の影があった。
夜だというのに人目を避けるように灯りもつけないその光景は異様だ。
「見つかったか?」
「いや、手がかりすらない……」
「グスタフさまはなんて?」
朱封蝋での要請。
それは封を開ける前から、直系による重要な連絡が入っていることがお約束の代物だった。
そこに書かれていたこと、のちに使者がおくられ今回の計画の全容を聞かされたがいまだに絵空事だったことが。
夜人目を忍ぶように灯りもつけずに寮を後にした対象人物をみて、現場には緊張がはしった。
そして学年も違い、学園生活でこれまで一切の接点もなかっただろう生徒が教室に集まり。
そしてなれたように状況報告をする会話を耳にして、もうこれは遊びではなく事実なのだと今回の戦略に参加したすべての生徒が認めざるを得なかった。
戦闘訓練はそれなりにした。
だがそれだけで、実践経験があるものがこの場にどれだけいるだろうか。
脇を最高学年で固めたとはいえ、今回要請があったのは、成績のいいすべての生徒ではなく。
ことがことゆえに、話が外に漏れないことを考えられた人選。
さらに、学園に滞在していたのに。誰一人としてこれまで知らなかった学園の秘密通路の存在がより一層。
どれほどの異常事態と対面しているのかを裏づけた。
誰が先陣を切るのか……
数では絶対の有利を誇っているはずなのに、飛び出す勇気が出る者は誰もおらず、皆顔を見合わせた。
相手は教会の人間。普段の成績については知っている生徒もいるが、今回とんでもないことを企てていた人物……
実戦経験の少なさが、一歩前に進むことを躊躇させる。
そんな時、先陣を切ったのが。
髪の色こそ違うが、教会の神官という異例の経歴で学園に入ってきた人物――シオンだった。
満月で月あかりがあり普段より明るいとはいえ、灯りのついていない建物の中は暗い。
でも、そんな中を臆することなく普段通りの足取りで歩いていく。
そして一拍の間をおいて、身体強化を使ったのだろう。
灯りがおぼつかない中にも関わらず、その身体が一気にスピードをあげ3人をとらえる。
身体が柔らかくしなり、背後にまわりこんだ一人に強烈な蹴りをお見舞いすると、衝撃で蹴られた人物は吹っ飛び、テーブルに鈍い音を立ててぶつかる。
「シオン、お前……!?」
「あれ? 僕はよく知らないのに、そっちは僕のこと知ってるんだ」
そんな二人の会話が終わるのを待つなんてこと、実践では通用するはずもなく。
顔を見合わせ合図し、3人を捕縛するために一斉に生徒がかけた。
大きな音が当然たち、音からしてすでにここは方位されているとわかったのだろう。
蹴られうずくまる生徒を残して、なんと2人の生徒は窓をやぶって、外へと駆け出した。
追いかけっこの始まりだった。
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