悪役令嬢はヒロインを虐めている場合ではない

四宮 あか

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王子様から逃げている場合ではない

第6話 やらせねーよ

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 本来予定していなかったことだけれども、アンナとミリーの指揮のもと面接は始まった。

 アンナとミリーの予想通り、面接に来る人の目的は私の派閥に入ることで特定の人と仲良くなることが目的の人や。
 学年では高位貴族が自身の派閥を作らずに、私の派閥に偏ったことで、社交界での思惑を通すためにがやってきていることが分かった。


 だけど、ジークの言葉を借りるに。このように押しかけて物事を通そうとした段階で、私たちの派閥になど入れるはずもないということだった。
 形だけの面接は身分が高い順で淡々と終わっていく。

 最後のほうにようやく、エドガーが紹介した人物が現れた。
 学園内で生きやすくなるために、派閥に名前だけおいてほしい人たち。
 一人は、ヒロインであるマリアだった。

 ここは予想通り。私はエドガーとマリアがあんまりにも、恋にかすりもしないものだから、もっと親しくどうにかならないかと奮闘したのだ。
 私がマリアを虐めなくても、第二の悪役令嬢が現れマリアを虐めることに関しては、少々私も気にかけていた。それに、なんだかんだでエドガーがマリアを紹介する程度には仲良くなっていることでほっとする。
 とりあえず、二人の恋路は一歩前進といったところかしら。
 私の身の安全を考えると、早めにヒロインには誰とくっつくか決めていただきたいところ……


 もう一人は、エドガーと同じ領地の出身で、騎士を目指している男子生徒だった。後ろ盾にするにはエドガーだと弱いといったところだろうか。
 エドガーの紹介した人物については、まぁ、名前だけ派閥においておくくらいなら別にいいとは思うのだけれど。


 ジーク、フォルト、シオンはエドガーから紹介した人物から漏れたのかもという線がまだ、払拭しきれず難色を示していたのもそうだし。
 多くの貴族の方たちにごめんなさいと断る面接で、平民だけが受かったとなると妬みの対象になるのではとアンナがいうので、二人は保留でほとぼりが少し冷めてからどうするかまた考えることになりそうと、愛想笑いをしすぎて引きつり疲れた頬の筋肉を手でほぐす。


「レーナさま、次が最後の方となります」
「ミリーありがとう。それでは入ってもらって」
 お茶を一口飲んで、疲れには甘いものとプチケーキを口に含む。とりあえずこれで終了~って時に事件は起こったのだ。



 現れた人物が、第二王子リジェットだったからだ。
 完全に油断していたため、思わず口に含んだものを吹き出しそうになったけれど。グッと耐えた。

 顔が引きつるのを、必死でごまかす。
「面接の機会をいただきありがとうございます。リジェットと申します」
「どうぞ、おかけになって」
 私がそう声をかけると、会釈してリジェットが椅子に座った。



 まさか、ここで隠しキャラが正面突破してくるとは思わないじゃない……
「それでは、お話はレーナ様に変わり。私アンナ・スペンサーが進めていきます。まず、この派閥になぜ入りたいのでしょうか?」
「身の安全の保障でございます」
 リジェットのその答えに、この人物もエドガーから紹介された平民たち同様、何らかの理由があって生きにくいから高位貴族が多く所有している派閥の虎の威を借りたいのだろうと皆は判断したようだけれど私は違う。


 第二王子だと知っていて、彼の言葉を受け止めると意味は全く変わってくる。
 レーナ家、アーヴァインはジーク曰く王家の忠犬らしいし。
 その私が代表している派閥に王子がくるってことは、王子として守れと言われているのだろうかなどと深読みが始まってしまう。
 だって、第二王子暗殺事件を止めた主要メンバーがまさに、この派閥に偏っているのだもの。


「身の安全の保障ということですが、私はそうとは思えないんですよ」
 ミリーははっきりとそういった。
「なぜそう思われるのでしょうか?」
「時間をいただいた際に、こちらとしても変な方をいれるわけにはいきませんので。軽く調査をさせていただきました。ですが、他の身の安全を主張した方と違い。あなたは特に人間関係でトラブルを起こしておりませんし。むしろ、高位貴族のいる派閥に入ることで、新たなもめごとになるのでは?」
 ミリーがこれまで通り、相手の素行などから、この派閥にはふさわしくないのでは? とお断りのほうへと持っていく。

 


 すると、目の前のリジェットが沈黙した。
 そして、戸惑っているようにメガネに触れたが、私はそれをみてヤバいと思った。

 もし、よくいるぼやーんとした生徒に見せている魔道具を外して、私は第二王子なんです! とカミングアウトをされたらたまったもんじゃないのである。


 私は空気をよまず立ち上がった。
 やらせねーよという気持ちでいっぱいだった。
「レーナ様?」
 突然立ち上がった私にどうしたの? と言わんばかりにシオンが怪訝な顔をした。


「派閥は基本一つしか入れませんのよ」
「はい、存じ上げております」
「私は身分に比べて魔力が伴っておりませんの」
 もう何としてもリジェットを断るしかないモードに私は入った。
「「レーナ様!?」」
 そのようなことは平民にまで打ち明ける必要はないと言わんばかりに、私の名前を呼びアンナとミリーは慌てる。

「身の安全の保障が目的とのことですが、私はあなたの身の安全を守る力は物理的にありません。私の派閥に入ってくださった方は、私が個人的に仲良くしており。どちらかというと、の身の安全を守るために派閥に入ってもらっておりますの。ですから、そのような目的ではうちの派閥に入れるわけにはいかないのです。ごめんなさいね。アンナ、ミリー。帰っていただいて」
「はい!」
 声をかけると、手馴れたようにアンナとミリーが私の両サイドから立ち上がりリジェットの両脇に手をいれずるずると引きずり出す。


「待ってください、話しを最後まで」
「シオン、悪いんだけれど。彼を退出させて」
「は~い。かしこまりました」
 血の盟約で強く念じたわけではないけれど、めったにシオンを下僕らしく使わない私が指示を出したことでシオンがサッと動いた。


「ご主人様がそういってるんで。派閥は他にもいろいろあるし、別のところに入れることを心より祈っております」
 身体強化したことで、アンナとミリーとは違いすんなりとリジェットが扉の向こうに押し出され、実にあっさりと扉がしまった。


 扉が閉まり、私はため息をついて席に着いた。
「で、どういうこと?」
 厄介者払いが終わり、シオンが珍しくシオンを使った私に理由を問い詰める。


 どうしよう、第二王子はあいつだと言ってしまおうかしら。でも、魔道具で姿を偽っているわけで、信頼しているとはいえ、今回の派閥の情報が漏れた犯人を疑う様なことが、王子様が誰かということでなるとまずいし。
「入れる理由がない。それだけよ」と私は話をぶった切った。




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