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星降る夜を見上げている場合ではない

第34話 出せっこない

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 扉が開いて最初に飛び込んできたのはリオンだった。
 すぐに状況をみて、何が起ったか察したのだろう。リオンがため息をついた。
 遅れることわずか、シオンとジークも私の部屋へとやってきた。
 二人ともリオンと同じく、この何が起ったのか解ったようで、シオンがムッとした顔でフォルトに詰め寄った。
 フォルトは、立ち上がるとシオンのほうを向いた。
 ジークはかなり驚いているようだった。言葉こそ発していなかったけれど、信じられないものを見る目でフォルトを見つめていたが、シオンがフォルトに詰め寄りだしたのに気が付いて二人の間に割って入った。

「ジーク様邪魔しないで」
 静止しようとするジークの手をシオンは払いのけキッとジークを睨んだ。
「話合いなら距離を詰めなくてもできるはずだよ」
 シオンからぶつけられた感情をあっさりと流して、落ち着こうとなだめにかかるジーク。


 一言も発さないフォルト。
 やっと状況が呑み込めてきた私は、口を開いた。
「フォルト……どうして?」
「これが、必要だと思ったからだ」
 フォルトは、淡々とそういった。
「必要じゃないでしょ。領主を目指すなら上に主を作ってどうすんのさ!」
 声にかぶせるようにシオンがフォルトに思っていたことをぶつけた。
「シオン、とりあえず今は二人に話をさせるべきで、私たちが割り込むべきではない」
 それを、ジークがシオンの腕を軽く引きたしなめる。


 不満そうな顔でジークの静止を受け入れシオンが下を向いた。
 二人で話すべきだと、ジークが憤るシオンを引かせてくれたけれど。私は一体何を話せばいいのかと口ごもる。
「レーナ嬢。俺はどうしても勝ちたい。驚かせてしまったと思う。ただ、これ以上に俺のことを信頼してもらえる術が他になかった」


 フォルトは一拍おいて、はっきりと言った。
「――魔剣があるならば俺に下賜してほしい」
 あぁ、大事な話はする場所も選ばないといけないことを、私は今ほど実感したことはない。
 フォルトならば、立ち聞きするはずがない。なんとなくそう思っていたのだ。
 ジークもしっかり止めればいいものをと、ジークがしっかりフォルトを見張ってないからと自分たちのことを棚に上げて、ジークを睨むけれど。
 自業自得だと言わんばかりにジークに冷たく見つめられた。



 どうすればいい? と私はリオンに目配せをした。
 だって、つい先ほどリオンとシオンと私の3人で、フォルトのことを考えるならば魔剣の主というリスクを背をわないほうがいいという結論を出したばかりだったからだ。

 魔剣のことは死蔵している主の私よりも。実際に取り出せて振るうことができるリオンのほうが解っている。
 だから、今まで口出しせず私たちの話を聞いていたリオンに話を振った。


「盟約を結んでしまいましたし。何かがあればフォルト様は何よりもレーナ様を優先させざるを得ないでしょうし……かまいませんよ」
「ちょっと!」
 リオンは魔剣を下賜することに反対しなかった。シオンが話が違うとリオンに声を上げる。


「血の盟約を結べる相手はただ一人。ですから、魔剣を渡してフォルト様が負けたとしても、フォルト様を盟約で従わせるようなことはこれでできません。それに、主であるレーナ様が優先となるので、敵に回るようなことは、盟約の力でできません。それに、レーナ様が命令すれば、フォルト様はどんな状況であってもレーナ様に魔剣を返さざるを得ませんから。さて、いつまでもご令嬢の寝室に男が4人もいるわけにはいかないでしょう」
 そして、ぱんぱんと手を鳴らすとドアを開けた。

 不満そうな顔で、シオンは部屋を後にした。その後に、ジークとフォルトが何か小声で話しながら退出した。

「さて、レーナ様もいきましょう」
 リオンにそう促されて、部屋を後にしようとする。
 リオンの横を通る際に、リオンは私に耳打ちをした。


「フォルト様は魔剣を手にしても振るえません」
 私は思わず声が出そうになったのを口元を抑えリオンを見上げた。
 リオンの長い髪がさらりとなびいて、リオンは私に悪い顔で笑った。

 すでにシオンはリビングに降り立ったようで、のど乾いた~とメイドを呼んでるし。
 さっきの空気はどこへやら、ジークとフォルトにも飲み物何か飲むとか聞いている。


「魔剣はフォルト様に渡します。そして私は魔剣を使った戦い方をフォルト様に教えますが、魔剣の取り出し方は教えません。魔剣は体内から取り出せないと振るえない。魔剣の回収はことが終わってから致しましょう。多少予定とは異なりましたが、問題ございません。ご心配なされませんよう」
 そういって、リオンはメガネの位置を直した。
 フォルトが血の盟約を結んでくるとは私は思っていなかった、だけど大人のリオンのほうがずっと上手だった。

 パクパクとしている私に、リオンは悪い悪い顔で微笑んだ。
「さて、遅くなりますと怪しまれます。我々も何か飲み物をいただきましょうレーナ様」




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