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星降る夜を見上げている場合ではない
第23話 私の知っていたミリー
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ミリーは、悪役令嬢レーナの二人いる取り巻きの一人。
しっかりして責任感の強いほうがアンナで、おっとりして、時々失言をしてしまうほうがミリーだった。
ふんわりとした癖っ毛のある青い髪に、いつもにこにこと笑顔を浮かべる女の子だった。
私が二人に何かを頼むと、二人で議論するけれど、大抵アンナが意見を出して、それをうまくサポートするのがミリーという感じだった。
でも、今日のミリーは違った。
自分一人ではなく、レミナリア伯爵家の代表としての発言をしたのだ。
ラスティーが現れてからも、いつもは間に入るのは大抵アンナなのに、私の前に毅然とした顔で立ちはだかったのは――ミリーだった。
「ミリー」
アンナが小さな声でいつものようにミリーをたしなめるように名前を呼んだ。
けれど、ミリーはアンナのほうを振り返ることなく、そちらに結構ですと言わんばかりに片手をあげてアンナの言葉を制止した。
「まぁ、これはラスティ様ごきげんよう。ところで、失礼なこと……とは一体どのようなことでしょう?」
ミリーは私に背を向けるとおっとりとしたいつもでそつなく挨拶をすると、思いっきりすっとぼけたのだ。
まさかの大胆な行動に私は驚いて思わずアンナをみた、アンナのほうもミリーがこのような態度を取ると思わなかったようで少し動揺しているようだった。
「私の家が主催のパーティーに招待した客を勝手に返すことがレミナリア家ではまかりとおると……」
「帰られるのは私ではなく、公爵家のレーナさまです。幸いアンバーの貴族ばかりを集めたレーナさまの血縁関係であるラスティー様の家が主催のパーティーですし体調の悪さを押してまでレーナさまがパーティーに参加される理由がないと判断いたしました」
ミリーは声を荒げるわけもなく、いつもの調子で話すけれど。
今回のパーティーに私が呼ばれただろう理由を他の貴族たちは口に出さないだけでわかっているようで、遠巻きにこちらの様子をうかがっているのがわかる。
「今宵はレーナに参加してもらう理由がある」
「理由? レーナさまの体調の悪さを押してまで優先される事項ではないのではないでしょうか?」
いつものやわらかなトーンでミリーはそういって首をかしげるが、いつものその態度を今ここでやるのは完全にラスティーを挑発しているようにしか見えない。
「伯爵家ごときが生意気な口を、お前の父はどこだ?」
ラスティーも声を荒げることはなく、痛いところをついてくる。私達は子供だ、ミリーがこう言ったとしても、身分的にミリーの父親が来ればミリーの思いなど関係なしに地位の高いものに頭を下げるはめになるのは明白だった。
どうしよう、どうしたら。私がなんとかしないとと一歩前に踏み出そうとするのを、ジークが軽く腕を引いて引きとめる。
私が止めなきゃ……って引きとめたジークのほうを見つめるけれど、ジークはミリーのほうを見据えたまま小声でこう言った。
「今、君が動けば。自分の立場を顧みず、君のために矢面に立っている友人の気遣いがすべて無駄になる」
じゃぁ、ミリーはどうなるっていうの。割り切れって言うの……でもここで私が動いたら、ジークの言うとおりミリーが自分の立場を顧みず動いたことが台無しになるとしたら――動けない。
「私の父になんのようでしょうか?」
明らかに空気がやばいのに、ミリーは不思議そうに聞き返すのだ。
「子供である貴殿が身分をわきまえないことは仕方ないが、大人は責任を取らないといけない」
「まぁ、大人が子供に領主戦を挑むことは恥じないのに、マナーにはうるさいのですねとここにいらっしゃる常識的な大人たちは思ってもマナーだから口をつぐんでいるのですね」
完全な煽りである。これって、いつものうっかりの失言にしたら失言過ぎないかな……と思って『これ大丈夫なの?』とジークとアンナを見つめるけど。
二人ともミリーがこのような失礼な発言をあえてご本人の前で今カマスと思っていなかったようで、固まっている。
ミリーも普段はアンナの陰でおっとり、たまに失言をうっかりしてるキャラだったけれど、レーナの命令でヒロインをしっかりと虐める取り巻きキャラクターだったのだと認識する。
けれど、今日の相手は、平民のヒロインではない。
次期領主になるかもしれない相手なのだ。
「子供でも許される発言ではないぞ」
「父を呼んでも無駄です。私は公爵様から直々にレーナ様を守るようにとの命を受けております。レーナ様を守るために動く際は、私個人としてでなく、一時的に家の代表として動けるのでございます」
内容なだけに、私達を見守る貴族の方々が注目しているのがわかる。室内からも人がちらほらと出てきて、ミリーとラスティーの行方を見守っている。
「レミナリア家を代表して言います。14歳の学校に行き始めたばかりの少年に恥も知らず領主戦を挑み、私のお仕えするレーナ様のお部屋に許可なく訪問するような教養と恥の概念がない方を次期領主にするわけにはいきません。レミナリア家はたとえあなたがフォルト様に勝利したとしても、あなたを支持いたしません」
しっかりして責任感の強いほうがアンナで、おっとりして、時々失言をしてしまうほうがミリーだった。
ふんわりとした癖っ毛のある青い髪に、いつもにこにこと笑顔を浮かべる女の子だった。
私が二人に何かを頼むと、二人で議論するけれど、大抵アンナが意見を出して、それをうまくサポートするのがミリーという感じだった。
でも、今日のミリーは違った。
自分一人ではなく、レミナリア伯爵家の代表としての発言をしたのだ。
ラスティーが現れてからも、いつもは間に入るのは大抵アンナなのに、私の前に毅然とした顔で立ちはだかったのは――ミリーだった。
「ミリー」
アンナが小さな声でいつものようにミリーをたしなめるように名前を呼んだ。
けれど、ミリーはアンナのほうを振り返ることなく、そちらに結構ですと言わんばかりに片手をあげてアンナの言葉を制止した。
「まぁ、これはラスティ様ごきげんよう。ところで、失礼なこと……とは一体どのようなことでしょう?」
ミリーは私に背を向けるとおっとりとしたいつもでそつなく挨拶をすると、思いっきりすっとぼけたのだ。
まさかの大胆な行動に私は驚いて思わずアンナをみた、アンナのほうもミリーがこのような態度を取ると思わなかったようで少し動揺しているようだった。
「私の家が主催のパーティーに招待した客を勝手に返すことがレミナリア家ではまかりとおると……」
「帰られるのは私ではなく、公爵家のレーナさまです。幸いアンバーの貴族ばかりを集めたレーナさまの血縁関係であるラスティー様の家が主催のパーティーですし体調の悪さを押してまでレーナさまがパーティーに参加される理由がないと判断いたしました」
ミリーは声を荒げるわけもなく、いつもの調子で話すけれど。
今回のパーティーに私が呼ばれただろう理由を他の貴族たちは口に出さないだけでわかっているようで、遠巻きにこちらの様子をうかがっているのがわかる。
「今宵はレーナに参加してもらう理由がある」
「理由? レーナさまの体調の悪さを押してまで優先される事項ではないのではないでしょうか?」
いつものやわらかなトーンでミリーはそういって首をかしげるが、いつものその態度を今ここでやるのは完全にラスティーを挑発しているようにしか見えない。
「伯爵家ごときが生意気な口を、お前の父はどこだ?」
ラスティーも声を荒げることはなく、痛いところをついてくる。私達は子供だ、ミリーがこう言ったとしても、身分的にミリーの父親が来ればミリーの思いなど関係なしに地位の高いものに頭を下げるはめになるのは明白だった。
どうしよう、どうしたら。私がなんとかしないとと一歩前に踏み出そうとするのを、ジークが軽く腕を引いて引きとめる。
私が止めなきゃ……って引きとめたジークのほうを見つめるけれど、ジークはミリーのほうを見据えたまま小声でこう言った。
「今、君が動けば。自分の立場を顧みず、君のために矢面に立っている友人の気遣いがすべて無駄になる」
じゃぁ、ミリーはどうなるっていうの。割り切れって言うの……でもここで私が動いたら、ジークの言うとおりミリーが自分の立場を顧みず動いたことが台無しになるとしたら――動けない。
「私の父になんのようでしょうか?」
明らかに空気がやばいのに、ミリーは不思議そうに聞き返すのだ。
「子供である貴殿が身分をわきまえないことは仕方ないが、大人は責任を取らないといけない」
「まぁ、大人が子供に領主戦を挑むことは恥じないのに、マナーにはうるさいのですねとここにいらっしゃる常識的な大人たちは思ってもマナーだから口をつぐんでいるのですね」
完全な煽りである。これって、いつものうっかりの失言にしたら失言過ぎないかな……と思って『これ大丈夫なの?』とジークとアンナを見つめるけど。
二人ともミリーがこのような失礼な発言をあえてご本人の前で今カマスと思っていなかったようで、固まっている。
ミリーも普段はアンナの陰でおっとり、たまに失言をうっかりしてるキャラだったけれど、レーナの命令でヒロインをしっかりと虐める取り巻きキャラクターだったのだと認識する。
けれど、今日の相手は、平民のヒロインではない。
次期領主になるかもしれない相手なのだ。
「子供でも許される発言ではないぞ」
「父を呼んでも無駄です。私は公爵様から直々にレーナ様を守るようにとの命を受けております。レーナ様を守るために動く際は、私個人としてでなく、一時的に家の代表として動けるのでございます」
内容なだけに、私達を見守る貴族の方々が注目しているのがわかる。室内からも人がちらほらと出てきて、ミリーとラスティーの行方を見守っている。
「レミナリア家を代表して言います。14歳の学校に行き始めたばかりの少年に恥も知らず領主戦を挑み、私のお仕えするレーナ様のお部屋に許可なく訪問するような教養と恥の概念がない方を次期領主にするわけにはいきません。レミナリア家はたとえあなたがフォルト様に勝利したとしても、あなたを支持いたしません」
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