106 / 171
星降る夜を見上げている場合ではない
第7話 探検
しおりを挟む
他に行くあてのない私たちは、ジークのホテルへと向かった。
さて、ジークのアンバーでの住まいはどんなところなのかしらと思っていたけれど、スケールをなめていた。
遠めでもわかる大きな建物はなんと学園の寮よりも高い8階建てだった。
8階ぶち抜きの吹き抜け、窓も当然私の部屋の比ではない特注品の大きさだ。
エントランスは、すべての椅子や中央にある噴水もずらせてダンスホールになるらしいし。
建物の中に川が流れていて小舟が……
スケールが想像していたホテルと違った。
「おかえりなさいませ、レーナ様。お部屋は8階のゲストルームをご準備いたしました。身の回りに必要なものは、1時間後に外商がやってきますので、そこでお求めいただけたらと思います。不足品や質問がございましたら。部屋の外に、メイドが待機しておりますので、お気軽にお申し付けくださいませ。ジーク様ご案内はいかがいたしましょう?」
ものすごくいい笑顔で、スタッフが私に対応する。
もう文句のつけようもない……
「私が案内するから必要ない。ありがとう」
ジークが手慣れた感じで、カギを受け取り進む後ろをついていく。
それにしても8階か……階段つらいのよねと思ったけれど、それはいらない心配だった。
なんとホテルにはエレベーターがあったのだ。
雷の魔石を使ったものらしい、8階までひいこら歩かなくてもすむじゃないの。
しかも、カギを何に使うのかと思えば、それは部屋の鍵ではなく、エレベーターの中で使うものだった。
鍵穴にカギをいれると、8階のボタンが現れた。
「なんですのこれ!?」
「最上階はクラエス家のプライベートのエリアだからね。客が入れないようにしているんだ」
「なるほど……、これカギをなくしたらどうなりますの?」
私はついてない、luckyペンダントがついているけど、ついてない。
カギをなくす可能性は0ではない。
「リオンが設置した医務室の施錠を君は破っただろう。あれより簡単に開錠ができると思うから、レーナなら大丈夫だ。カギは基本フロントに預けてホテルを後にしてもらうことになるが。それはこの鍵がホテルの敷地外に持ち出されると溶けてなくなるのさ。作り方は悪用の問題があるから話すことはできないが、氷の魔力を応用している」
以前の誤解が全く溶けていないことにがくぜんとした。
「ジーク様、まだいろいろと誤解があるようですが……」
チーン
「ついたよ、こっちだ」
あわてて私はエレベーターを降りる。
メイドが一人立っていて、私とジークに深々と頭を下げる。
「正面がゲストルーム、左側が私の父と母のエリア。右側が私のエリア」
ゲストルームはわかる、でも『エリア』ってなんだよと気になってしまう。
私がお世話になるゲストルームの扉の前に椅子と机があるし、今挨拶をしているメイドは普段ここに控えているのかもしれない。
というか、外観をみるかぎり、8階がこんな感じでざっくり3分割だと、エリアの部分に私の家相当の部屋数なんかがあるのではないかと気になってくる。
クライスト領のジークの部屋は、正直質素だった。
あぁ、気になる。ものすごい人さまの部屋が気になる……。
去年は主に私の部屋がたまり場になってあまりみんなの家に行けていない。
「質問はあるかい?」
「ジーク様のエリアがとっても気になりますわ。探検しても?」
アンバーの自分家に着いた時も、自分の部屋を探検した。建物の中に何があるのかわくわくする。
「あぁ、かまわないよ。君、すまないが外商が来るまでに戻ってこなかったら、私の部屋に外商を案内して」
こうして、私はジークのお部屋の探索を行うことになった。
廊下には、素敵なガラスの花瓶などがならび、クライスト領でみたジークの家とは大違いだ。
ついつい、絵画だの置物だのじろじろと見てしまう。
「とても失礼な質問をしてもよろしいでしょうか?」
「その質問自体がすでに失礼だね」
にっこりと愛想笑いでジークが言う。
「クライスト領の家では、質素な印象でしたのでなぜかなぁ……と」
「魔子がいたからね。あの環境で特に冬場に屋敷の手入れをできる人数は限られていた」
「なるほど……」
金はなかったわけではないのか。
「ところでレーナ……」
「はい、ジーク様」
広いリビングねぇ、こっちは書庫。なら、あっちはどうなっているのかしら? それよりも何部屋くらいあるのかしら。
にっこりとジークが笑ってくる、これは何か不満があるのだと思う。
「まぁ、楽しいならいいが。もしかして、全部の部屋を見るつもりかい?」
「ジーク様がお嫌でなければ。何部屋あるのかどうしても気になってしまって……」
「前から言おうと思ったのだけれど、君の好奇心はほどほどにしておいたほうがいいと思う。……はぁ、好きにするといいよ」
ジークはさらに何か言いたそうだったけれど、ため息を一つついて私の探索を認めたので私は人さまの部屋をあっちこっち探検する。
さて、ジークのアンバーでの住まいはどんなところなのかしらと思っていたけれど、スケールをなめていた。
遠めでもわかる大きな建物はなんと学園の寮よりも高い8階建てだった。
8階ぶち抜きの吹き抜け、窓も当然私の部屋の比ではない特注品の大きさだ。
エントランスは、すべての椅子や中央にある噴水もずらせてダンスホールになるらしいし。
建物の中に川が流れていて小舟が……
スケールが想像していたホテルと違った。
「おかえりなさいませ、レーナ様。お部屋は8階のゲストルームをご準備いたしました。身の回りに必要なものは、1時間後に外商がやってきますので、そこでお求めいただけたらと思います。不足品や質問がございましたら。部屋の外に、メイドが待機しておりますので、お気軽にお申し付けくださいませ。ジーク様ご案内はいかがいたしましょう?」
ものすごくいい笑顔で、スタッフが私に対応する。
もう文句のつけようもない……
「私が案内するから必要ない。ありがとう」
ジークが手慣れた感じで、カギを受け取り進む後ろをついていく。
それにしても8階か……階段つらいのよねと思ったけれど、それはいらない心配だった。
なんとホテルにはエレベーターがあったのだ。
雷の魔石を使ったものらしい、8階までひいこら歩かなくてもすむじゃないの。
しかも、カギを何に使うのかと思えば、それは部屋の鍵ではなく、エレベーターの中で使うものだった。
鍵穴にカギをいれると、8階のボタンが現れた。
「なんですのこれ!?」
「最上階はクラエス家のプライベートのエリアだからね。客が入れないようにしているんだ」
「なるほど……、これカギをなくしたらどうなりますの?」
私はついてない、luckyペンダントがついているけど、ついてない。
カギをなくす可能性は0ではない。
「リオンが設置した医務室の施錠を君は破っただろう。あれより簡単に開錠ができると思うから、レーナなら大丈夫だ。カギは基本フロントに預けてホテルを後にしてもらうことになるが。それはこの鍵がホテルの敷地外に持ち出されると溶けてなくなるのさ。作り方は悪用の問題があるから話すことはできないが、氷の魔力を応用している」
以前の誤解が全く溶けていないことにがくぜんとした。
「ジーク様、まだいろいろと誤解があるようですが……」
チーン
「ついたよ、こっちだ」
あわてて私はエレベーターを降りる。
メイドが一人立っていて、私とジークに深々と頭を下げる。
「正面がゲストルーム、左側が私の父と母のエリア。右側が私のエリア」
ゲストルームはわかる、でも『エリア』ってなんだよと気になってしまう。
私がお世話になるゲストルームの扉の前に椅子と机があるし、今挨拶をしているメイドは普段ここに控えているのかもしれない。
というか、外観をみるかぎり、8階がこんな感じでざっくり3分割だと、エリアの部分に私の家相当の部屋数なんかがあるのではないかと気になってくる。
クライスト領のジークの部屋は、正直質素だった。
あぁ、気になる。ものすごい人さまの部屋が気になる……。
去年は主に私の部屋がたまり場になってあまりみんなの家に行けていない。
「質問はあるかい?」
「ジーク様のエリアがとっても気になりますわ。探検しても?」
アンバーの自分家に着いた時も、自分の部屋を探検した。建物の中に何があるのかわくわくする。
「あぁ、かまわないよ。君、すまないが外商が来るまでに戻ってこなかったら、私の部屋に外商を案内して」
こうして、私はジークのお部屋の探索を行うことになった。
廊下には、素敵なガラスの花瓶などがならび、クライスト領でみたジークの家とは大違いだ。
ついつい、絵画だの置物だのじろじろと見てしまう。
「とても失礼な質問をしてもよろしいでしょうか?」
「その質問自体がすでに失礼だね」
にっこりと愛想笑いでジークが言う。
「クライスト領の家では、質素な印象でしたのでなぜかなぁ……と」
「魔子がいたからね。あの環境で特に冬場に屋敷の手入れをできる人数は限られていた」
「なるほど……」
金はなかったわけではないのか。
「ところでレーナ……」
「はい、ジーク様」
広いリビングねぇ、こっちは書庫。なら、あっちはどうなっているのかしら? それよりも何部屋くらいあるのかしら。
にっこりとジークが笑ってくる、これは何か不満があるのだと思う。
「まぁ、楽しいならいいが。もしかして、全部の部屋を見るつもりかい?」
「ジーク様がお嫌でなければ。何部屋あるのかどうしても気になってしまって……」
「前から言おうと思ったのだけれど、君の好奇心はほどほどにしておいたほうがいいと思う。……はぁ、好きにするといいよ」
ジークはさらに何か言いたそうだったけれど、ため息を一つついて私の探索を認めたので私は人さまの部屋をあっちこっち探検する。
149
お気に入りに追加
13,596
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜
白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。
舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。
王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。
「ヒナコのノートを汚したな!」
「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」
小説家になろう様でも投稿しています。
婚約破棄?王子様の婚約者は私ではなく檻の中にいますよ?
荷居人(にいと)
恋愛
「貴様とは婚約破棄だ!」
そうかっこつけ王子に言われたのは私でした。しかし、そう言われるのは想定済み……というより、前世の記憶で知ってましたのですでに婚約者は代えてあります。
「殿下、お言葉ですが、貴方の婚約者は私の妹であって私ではありませんよ?」
「妹……?何を言うかと思えば貴様にいるのは兄ひとりだろう!」
「いいえ?実は父が養女にした妹がいるのです。今は檻の中ですから殿下が知らないのも無理はありません」
「は?」
さあ、初めての感動のご対面の日です。婚約破棄するなら勝手にどうぞ?妹は今日のために頑張ってきましたからね、気持ちが変わるかもしれませんし。
荷居人の婚約破棄シリーズ第八弾!今回もギャグ寄りです。個性な作品を目指して今回も完結向けて頑張ります!
第七弾まで完結済み(番外編は生涯連載中)!荷居人タグで検索!どれも繋がりのない短編集となります。
表紙に特に意味はありません。お疲れの方、猫で癒されてねというだけです。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。