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星降る夜を見上げている場合ではない
第6話 可愛げがない
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海の上を通って実にあっさりと私達は私の家のプライベートビーチから公共のビーチにたどり着いてしまった。
海からやってきたことでやっぱり辺りがざわついていたけれど、海の上を歩いてきたのだから、魔力持ちであることが一目瞭然だったせいなのか遠巻きに私達を見てくる人はいても話しかけてくる人はいなかった。
「さて、攫ってしまったから……これからどうしようか? 君のところのメイド達は困っているかな?」
楽しそうにジークが抱えている私にそういって悪い笑顔を見せる。
「何をおっしゃいますやら。メイドとジーク様は打ち合わせはしていないかもしれませんが、うちのメイド側としてはジーク様に私が 攫われたことに感謝こそすれ怒ってなどいないと思いますよ」
残念でした、メイドが勢ぞろいで頭を下げてたんだもの。打ち合わせがあったにしろなかったにしろメイド達はジークが私を攫うことにあの場では非難の言葉を形式上口にしただけで本心は違うはずだ。
そうじゃなきゃ、あんな風にお嬢様を目の前で攫われたのに皆海岸に勢ぞろいして頭なんか深々と下げないだろうと思うし。
「……はぁ。つまらないな」
ひどくがっかりとした顔でそう言われてしまう。
「残念でしたねジーク様」
一枚上手になったことで、私はにんまりと笑う。
私をからかって遊ぶつもりだったのかもしれないけれどそうはいかないわよと。なぜかジーク相手だと、出し抜かれてはならない気がしてうまく回避できるとやったわっという気持ちになってしまうのは……本来のレーナとジークの関係性によるものかもしれない。
「レーナ、ニコル・マッカートのようなロマンチックな展開を好む君は、こんな風に見通せてしまうとしたら……。どこでそんな素敵な体験をするのだろうね?」
ジークが柔らかくいったことだけれど。
「グゥ」
私の心に突き刺さる。
確かに、お見通しですわ! しっておりましたわ! なんてやってたらわくわくドキドキの展開になどならない。
「さて、しばらくは私のホテルに滞在してもらうことにして……。アンバーでの観光を私としては楽しみたかったのだけれど。君が余計なことに首をつっこまないように見張らないといけないし……。もちろん、空気をよんで今回は大人しくしていてくれるね?」
首を突っ込んだ前科があるせいで、ジークの最後の念押しが笑顔なのに怖い。
「でも、あれは不可抗力というか、巻きこまれて仕方なくというか……」
「そうだね、巻きこまれに行かないように。さて……かき氷でも食べに行くことにしよう」
「まってください、私準備せず出てきたので持ち合わせが何も……」
「学園のカフェでは支払いを私に押し付けて上手く逃げていくのに、珍しく持ち合わせの心配などするんだね?」
「うっ……」
ジークをやり込めるついでにせこく会計も推しつけていた前科が今ここで。
「冗談だよ。シオンが私がホテルで降りる際に……『学費や学生生活に必要なお金としてどうしても必要なんでジーク様お願いしますね』と念押ししてきたんだ。周りに援助してもらわず自分で稼ぎたいようだし、本当に氷を削ってシロップをかけるだけの物が学費や生活費分まで売れるのか……まずは一度ちゃんと食べておこうと思っているんだが」
ジークがあまりにもまじめに、シオンの生活費の心配を普通にしていて笑いそうになる。自分でというか、明らかにジーク便乗商法で荒稼ぎを思いっきりする気ですよあいつと思ったけれど。ジークが普通に心配しているようなので黙っておく。
私の顔を覚えてないことでジークの印象は最悪だったけれど。今は親しくなった人物が死ぬかも知れなかったことを考えて私の顔を覚えたくなかったというジークの気持ちがちょっとわからないでもないし。
グスタフの時もジークは図書館の秘密の部屋に入る情報をえるためとはいえ、自分が貫かれてまで私の剣となったし。
常時私とは腹の探り合いでジャブのような会話をしているけれど。優しいところがあるのかもしれない。
そんなことよりも、一番大事なことは、私がここで下手なことを言ってジークがかき氷屋さん計画に協力しないとかき氷計画を私がパーにしてみろ。
シオンから大きな事業計画がぽしゃったことをどれほど当たられてしまうか……考えるも恐ろしい。
そんなこんなで流石にかき氷屋さんまで抱えてもらうのは恥ずかしすぎたので下ろしてもらって。アンバーではまだあまりない私の知っているかき氷屋さんに案内したのはいいのだけれど。
一番人気を食べて、値段をみたジークが本気で何杯売って学費を稼ぐのかまじめに考えだし、安易に引き受けてしまったけれどこの夏休み私はずっと氷を作ってるのだろうかとジークは呟いていたけれど。
シオン絶対ぼるつもりだろうから、そこまで毎日材料の氷を出すはめにはならないと思う。
「氷魔法の使い手なら、今はクライスト領で魔子の対応にあたらなくてよくなったので何人か日替わりで呼べそうだが……手配をしておいたほうがよさそうだな」
ジークはまじめに氷係を考えているようだったけれど。容姿がものすごく整ったジークが出した氷に皆大金を払うんだってことを知っていた私が応援要請を頼もうかと考えるジークをとめた。
「他の人をいれてしまうと、売上からやはり人件費を出さないといけないでしょうし。ジーク様が手配する氷魔法の使い手の方を一日拘束してしまうとかなりの給金を払わないといけなくなるでしょうし。そういうことも考えてシオンは私達だけでやりたいのではないでしょうか」
とそれらしいことをいってフォローする。
ジークの氷だから大金を払うつもりが、途中で違う人物に交代されてはぼったくられたと苦情が来る可能性が高いのだもの。
「食べる量の氷を出すくらいなら簡単だが流石に一日中拘束されるのは……。第一に私が作る氷はおいしいのだろうか? これまでそもそも食べてみようなどと考えたことがなかった」
ジークはそう言うと右の掌に野球ボール大の氷を簡単に作る。
「このお店にお願いして実際に今食べてみたらどうです?」
軽い気持ちだった。
店員を呼びとめて、お金少し出すのでこの人の出す氷でかき氷作って食べたいのと言っただけだったのだ。
かき氷器のサイズに合わせてジークが両手で持てるほどの氷を簡単に作る。
「正方形じゃないとだめなんだろうか。形など特に意識したことがなかったからな」
などといいつつ、真剣な顔でジークが氷を実際に作る。普通に正方形の氷をなんなく作れてしまうあたりスペックが高いと思う。
しばらくするとシロップが掛けられてフルーツが載せられたジークの氷のかき氷がでてきた。
「見た目は普通のかき氷だし、味は……先ほど食べたかき氷とかわらないな。でも、私が出せば氷代は元手がかからないから」
ジークが儲けについて考えていると店長がやってきて私達に話しかけてきた。
「すみません、残っている氷は削って売ってしまってもかまわないでしょうか?」 おずおずと店長さんがそう言ってきた。
私の勘がなんとなくそれはやめておけと告げる。
「あぁ、別にかまわ「駄目です! ジーク様すみませんが、先ほどの氷消してきてくださいます?」
かまわないと言いかけるジークにかぶせる。私がそういうとジークが厨房に向かって手を伸ばす距離があるけれど、自分が出したものは多少距離があっても消せるようだったんだけれど……。
周りの席にも次々と運ばれてきてアレ? 皆さんかき氷もう食べていたよね……とおもっていた氷も消えた。
「きゃぁ、氷が……」
「ちょっと、どういうことなの高いお金を払ったのに」
この店長はやり手だったようだ。
「私は自分の出した氷しか消していない」
目の前にあるかき氷は消えてないから、目の前のやつ以外を消したつもりだったんだと思う。
氷が消えて周りがざわついたので、ジークは自分で出したのしか消してないといってるけれど。私はその理由がすぐにわかって。
「ジーク様、金おいてずらかりますよ」
私が慌ててそういうと、ジークがポケットから多めに硬貨をテーブルに乗せるのを確認して。
「ごちそうさまでした」
そう告げて、ジークの手を引いて走った。
「待ってくれ、給金なら十分払うから」
店長のその声が聞こえると、ジークも店長が何をしたのかわかったようで、私を抱えると身体強化して走り出した。
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「さて、攫ってしまったから……これからどうしようか? 君のところのメイド達は困っているかな?」
楽しそうにジークが抱えている私にそういって悪い笑顔を見せる。
「何をおっしゃいますやら。メイドとジーク様は打ち合わせはしていないかもしれませんが、うちのメイド側としてはジーク様に私が 攫われたことに感謝こそすれ怒ってなどいないと思いますよ」
残念でした、メイドが勢ぞろいで頭を下げてたんだもの。打ち合わせがあったにしろなかったにしろメイド達はジークが私を攫うことにあの場では非難の言葉を形式上口にしただけで本心は違うはずだ。
そうじゃなきゃ、あんな風にお嬢様を目の前で攫われたのに皆海岸に勢ぞろいして頭なんか深々と下げないだろうと思うし。
「……はぁ。つまらないな」
ひどくがっかりとした顔でそう言われてしまう。
「残念でしたねジーク様」
一枚上手になったことで、私はにんまりと笑う。
私をからかって遊ぶつもりだったのかもしれないけれどそうはいかないわよと。なぜかジーク相手だと、出し抜かれてはならない気がしてうまく回避できるとやったわっという気持ちになってしまうのは……本来のレーナとジークの関係性によるものかもしれない。
「レーナ、ニコル・マッカートのようなロマンチックな展開を好む君は、こんな風に見通せてしまうとしたら……。どこでそんな素敵な体験をするのだろうね?」
ジークが柔らかくいったことだけれど。
「グゥ」
私の心に突き刺さる。
確かに、お見通しですわ! しっておりましたわ! なんてやってたらわくわくドキドキの展開になどならない。
「さて、しばらくは私のホテルに滞在してもらうことにして……。アンバーでの観光を私としては楽しみたかったのだけれど。君が余計なことに首をつっこまないように見張らないといけないし……。もちろん、空気をよんで今回は大人しくしていてくれるね?」
首を突っ込んだ前科があるせいで、ジークの最後の念押しが笑顔なのに怖い。
「でも、あれは不可抗力というか、巻きこまれて仕方なくというか……」
「そうだね、巻きこまれに行かないように。さて……かき氷でも食べに行くことにしよう」
「まってください、私準備せず出てきたので持ち合わせが何も……」
「学園のカフェでは支払いを私に押し付けて上手く逃げていくのに、珍しく持ち合わせの心配などするんだね?」
「うっ……」
ジークをやり込めるついでにせこく会計も推しつけていた前科が今ここで。
「冗談だよ。シオンが私がホテルで降りる際に……『学費や学生生活に必要なお金としてどうしても必要なんでジーク様お願いしますね』と念押ししてきたんだ。周りに援助してもらわず自分で稼ぎたいようだし、本当に氷を削ってシロップをかけるだけの物が学費や生活費分まで売れるのか……まずは一度ちゃんと食べておこうと思っているんだが」
ジークがあまりにもまじめに、シオンの生活費の心配を普通にしていて笑いそうになる。自分でというか、明らかにジーク便乗商法で荒稼ぎを思いっきりする気ですよあいつと思ったけれど。ジークが普通に心配しているようなので黙っておく。
私の顔を覚えてないことでジークの印象は最悪だったけれど。今は親しくなった人物が死ぬかも知れなかったことを考えて私の顔を覚えたくなかったというジークの気持ちがちょっとわからないでもないし。
グスタフの時もジークは図書館の秘密の部屋に入る情報をえるためとはいえ、自分が貫かれてまで私の剣となったし。
常時私とは腹の探り合いでジャブのような会話をしているけれど。優しいところがあるのかもしれない。
そんなことよりも、一番大事なことは、私がここで下手なことを言ってジークがかき氷屋さん計画に協力しないとかき氷計画を私がパーにしてみろ。
シオンから大きな事業計画がぽしゃったことをどれほど当たられてしまうか……考えるも恐ろしい。
そんなこんなで流石にかき氷屋さんまで抱えてもらうのは恥ずかしすぎたので下ろしてもらって。アンバーではまだあまりない私の知っているかき氷屋さんに案内したのはいいのだけれど。
一番人気を食べて、値段をみたジークが本気で何杯売って学費を稼ぐのかまじめに考えだし、安易に引き受けてしまったけれどこの夏休み私はずっと氷を作ってるのだろうかとジークは呟いていたけれど。
シオン絶対ぼるつもりだろうから、そこまで毎日材料の氷を出すはめにはならないと思う。
「氷魔法の使い手なら、今はクライスト領で魔子の対応にあたらなくてよくなったので何人か日替わりで呼べそうだが……手配をしておいたほうがよさそうだな」
ジークはまじめに氷係を考えているようだったけれど。容姿がものすごく整ったジークが出した氷に皆大金を払うんだってことを知っていた私が応援要請を頼もうかと考えるジークをとめた。
「他の人をいれてしまうと、売上からやはり人件費を出さないといけないでしょうし。ジーク様が手配する氷魔法の使い手の方を一日拘束してしまうとかなりの給金を払わないといけなくなるでしょうし。そういうことも考えてシオンは私達だけでやりたいのではないでしょうか」
とそれらしいことをいってフォローする。
ジークの氷だから大金を払うつもりが、途中で違う人物に交代されてはぼったくられたと苦情が来る可能性が高いのだもの。
「食べる量の氷を出すくらいなら簡単だが流石に一日中拘束されるのは……。第一に私が作る氷はおいしいのだろうか? これまでそもそも食べてみようなどと考えたことがなかった」
ジークはそう言うと右の掌に野球ボール大の氷を簡単に作る。
「このお店にお願いして実際に今食べてみたらどうです?」
軽い気持ちだった。
店員を呼びとめて、お金少し出すのでこの人の出す氷でかき氷作って食べたいのと言っただけだったのだ。
かき氷器のサイズに合わせてジークが両手で持てるほどの氷を簡単に作る。
「正方形じゃないとだめなんだろうか。形など特に意識したことがなかったからな」
などといいつつ、真剣な顔でジークが氷を実際に作る。普通に正方形の氷をなんなく作れてしまうあたりスペックが高いと思う。
しばらくするとシロップが掛けられてフルーツが載せられたジークの氷のかき氷がでてきた。
「見た目は普通のかき氷だし、味は……先ほど食べたかき氷とかわらないな。でも、私が出せば氷代は元手がかからないから」
ジークが儲けについて考えていると店長がやってきて私達に話しかけてきた。
「すみません、残っている氷は削って売ってしまってもかまわないでしょうか?」 おずおずと店長さんがそう言ってきた。
私の勘がなんとなくそれはやめておけと告げる。
「あぁ、別にかまわ「駄目です! ジーク様すみませんが、先ほどの氷消してきてくださいます?」
かまわないと言いかけるジークにかぶせる。私がそういうとジークが厨房に向かって手を伸ばす距離があるけれど、自分が出したものは多少距離があっても消せるようだったんだけれど……。
周りの席にも次々と運ばれてきてアレ? 皆さんかき氷もう食べていたよね……とおもっていた氷も消えた。
「きゃぁ、氷が……」
「ちょっと、どういうことなの高いお金を払ったのに」
この店長はやり手だったようだ。
「私は自分の出した氷しか消していない」
目の前にあるかき氷は消えてないから、目の前のやつ以外を消したつもりだったんだと思う。
氷が消えて周りがざわついたので、ジークは自分で出したのしか消してないといってるけれど。私はその理由がすぐにわかって。
「ジーク様、金おいてずらかりますよ」
私が慌ててそういうと、ジークがポケットから多めに硬貨をテーブルに乗せるのを確認して。
「ごちそうさまでした」
そう告げて、ジークの手を引いて走った。
「待ってくれ、給金なら十分払うから」
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