95 / 171
短編
ジークへのプレゼント
しおりを挟む
2話の後プレゼントを押し付けられたジーク。
何か失礼なことをしたのだろうか? と考え直すが、やり取りを思い返してみたがあれほど怒らせるようなことをしたとは思えなくて困惑する。
突然不機嫌になり、会話を中断し『部屋に帰れ』と、私の背中をこれでもかと押すような会話だっただろうか……。
一体何だとドアの前で茫然としてると再び扉が開けられて、今度こそ何なんだ? と思えば、半ば強引に何か袋を押し付けられ。レーナは再び扉をバタンと音を立てて閉めて嵐のように去って行った。
とりあえず、理由はわからないが気分を害して不機嫌になったのはわかる。部屋に押し込んだのも今日はこれ以上会いに来ないでという意味だということもわかる。
でも、私が今押し付けられたレーナの言動とは結び付かない可愛らしいラッピングをされた袋は何なのか途方に暮れていたが。
メイドの一人が先ほどのやり取りには全く触れずに、「プレゼント、レーナ様ご用意されていたのですね」と言ったことで渡してなかったと言っていた私への誕生日プレゼントなのかとようやく押し付けられた物の正体がわかった。
メイドがお預かりいたしますとプレゼントをもって下がった。
レーナからのプレゼントの封を私が開けないのはいつものことだった。私もいつからかそれが当たり前だったから、レーナからの誕生日プレゼントは同時期に届くプレゼントの山の中にいつも埋もれてしまっていた。
◆◇◆◇
目を開けたとき、視界に入ったのは見慣れた天井だった。
やわらかなベッドと不快感のないからだ、従者が風呂私をつっこんだのだろう。
窓からみた日の高さであれからずいぶんと時間が経過したことがわかる。
何があった?
最後私は何をみた、思い出せ。
レーナを水路に残してきてしまっている。水路内は崩壊箇所が多く合流するには別のところから入ったほうが賢明だろう。
とりあえず地下水路の地図を手に入れてそれで……。
名前を呼ばれたのだ。
「ジーク様、少しよろしいですか?」と。
シオンだ、そこで記憶が途切れている……、従者も散々私が再度水路に入ろうとするのを止めていた。
タイミングがよすぎるところで記憶が途切れているところをみるとそういうことなのだろう。
やられた……。
レーナは私の婚約者ではない。そして、レーナを何としても生かしておきたい理由がもうクライスト領にはない。
レーナは確かにクライスト領の恩人ではある、だがクライストは長年魔子のせいで、優秀な魔力の使い手の大半を短命で失ってきた。
私はクラエス家の直系で、だからこそ死というリスクがある場に関わらぬように、従者により今回のことから手を引かせるためにシオンに頼んだというところだろう。
憤ったところで時間は戻らない。
レーナの無事は起きた私に従者から告げられた。怪我はなく夜通し動かれたそうなので今は部屋でお休みになっておりますと告げられた。
いつもであれば、レーナが部屋に戻り次第すぐに私に報告され、だから顔を出しに行くかそれが嫌なら見舞う言葉を手紙にしろすぐにと言われたずっと、ずっとそうだった。婚約を解消したことで、一気に周りがそれを言わなくなり婚約者でない距離を保たせる。
彼女がこれまで通り傍にいても、大きな一線が目の前に引かれたことをようやく実感した。
時間がたってから治癒された胸が痛み私もベッドに横になったときサイドテーブルに置かれていた可愛らしくラッピングされた袋が目に入った。
そう言えば開けていなかった。
誕生日は毎年憂鬱だった、歳を一つ重ねればそれだけクライストでの地獄の日々にまた一歩近づくと思っていたから。
形ばかりとはいえ沢山もらうプレゼントはいつもメイドや従者が私から受け取り一か所に詰められ。しばらくして処分するようにと告げると、中身のリストを作ってくれていた。
だけど、今年のレーナからのプレゼントをもらったのは時期が異なっていたし、私が処分するように言わなかったからずっとここに置かれていたのか。
もう、歳を重ねても怖くはない。だから、小さい時以来のプレゼントの封を開けた。
中から出てきたのはシンプルな銀のしおりと、万年筆だった。
確か、パーティーの時プレゼントをクロークに預けっぱなしだったとか言っていた。そうか、その頃から決めていたのか……。
確か、レーナへの誕生日プレゼントしてメイドが見つくろったのが銀細工の美しいしおりだったと言っていた気がする。
誕生日に贈られた物と同じ種類のものをプレゼントに贈り返すのはタブーである。
食べ物や花ならば違うが。物の場合は同じものを贈るという言葉は別の意味をもつ。
『貴方の気持ちはお受けできません』という断り文句になるからだ。
「そうか、そんな早くから君はもう決めていたのか」
隅に飾りがはいった銀のしおりの表面を指でなでた。
君といると、いつの間にか猫を被るのを忘れてしまうほど、思っていることをあけすけにぶつけるようになったのはいつからだろうか。
友くらいにはなれるかなと思ったが……ハッキリと振られてしまったな。
レーナがこの世界のタブーであることを知らずジークに同じものを贈り返したことをジークは知る由もなかった。
何か失礼なことをしたのだろうか? と考え直すが、やり取りを思い返してみたがあれほど怒らせるようなことをしたとは思えなくて困惑する。
突然不機嫌になり、会話を中断し『部屋に帰れ』と、私の背中をこれでもかと押すような会話だっただろうか……。
一体何だとドアの前で茫然としてると再び扉が開けられて、今度こそ何なんだ? と思えば、半ば強引に何か袋を押し付けられ。レーナは再び扉をバタンと音を立てて閉めて嵐のように去って行った。
とりあえず、理由はわからないが気分を害して不機嫌になったのはわかる。部屋に押し込んだのも今日はこれ以上会いに来ないでという意味だということもわかる。
でも、私が今押し付けられたレーナの言動とは結び付かない可愛らしいラッピングをされた袋は何なのか途方に暮れていたが。
メイドの一人が先ほどのやり取りには全く触れずに、「プレゼント、レーナ様ご用意されていたのですね」と言ったことで渡してなかったと言っていた私への誕生日プレゼントなのかとようやく押し付けられた物の正体がわかった。
メイドがお預かりいたしますとプレゼントをもって下がった。
レーナからのプレゼントの封を私が開けないのはいつものことだった。私もいつからかそれが当たり前だったから、レーナからの誕生日プレゼントは同時期に届くプレゼントの山の中にいつも埋もれてしまっていた。
◆◇◆◇
目を開けたとき、視界に入ったのは見慣れた天井だった。
やわらかなベッドと不快感のないからだ、従者が風呂私をつっこんだのだろう。
窓からみた日の高さであれからずいぶんと時間が経過したことがわかる。
何があった?
最後私は何をみた、思い出せ。
レーナを水路に残してきてしまっている。水路内は崩壊箇所が多く合流するには別のところから入ったほうが賢明だろう。
とりあえず地下水路の地図を手に入れてそれで……。
名前を呼ばれたのだ。
「ジーク様、少しよろしいですか?」と。
シオンだ、そこで記憶が途切れている……、従者も散々私が再度水路に入ろうとするのを止めていた。
タイミングがよすぎるところで記憶が途切れているところをみるとそういうことなのだろう。
やられた……。
レーナは私の婚約者ではない。そして、レーナを何としても生かしておきたい理由がもうクライスト領にはない。
レーナは確かにクライスト領の恩人ではある、だがクライストは長年魔子のせいで、優秀な魔力の使い手の大半を短命で失ってきた。
私はクラエス家の直系で、だからこそ死というリスクがある場に関わらぬように、従者により今回のことから手を引かせるためにシオンに頼んだというところだろう。
憤ったところで時間は戻らない。
レーナの無事は起きた私に従者から告げられた。怪我はなく夜通し動かれたそうなので今は部屋でお休みになっておりますと告げられた。
いつもであれば、レーナが部屋に戻り次第すぐに私に報告され、だから顔を出しに行くかそれが嫌なら見舞う言葉を手紙にしろすぐにと言われたずっと、ずっとそうだった。婚約を解消したことで、一気に周りがそれを言わなくなり婚約者でない距離を保たせる。
彼女がこれまで通り傍にいても、大きな一線が目の前に引かれたことをようやく実感した。
時間がたってから治癒された胸が痛み私もベッドに横になったときサイドテーブルに置かれていた可愛らしくラッピングされた袋が目に入った。
そう言えば開けていなかった。
誕生日は毎年憂鬱だった、歳を一つ重ねればそれだけクライストでの地獄の日々にまた一歩近づくと思っていたから。
形ばかりとはいえ沢山もらうプレゼントはいつもメイドや従者が私から受け取り一か所に詰められ。しばらくして処分するようにと告げると、中身のリストを作ってくれていた。
だけど、今年のレーナからのプレゼントをもらったのは時期が異なっていたし、私が処分するように言わなかったからずっとここに置かれていたのか。
もう、歳を重ねても怖くはない。だから、小さい時以来のプレゼントの封を開けた。
中から出てきたのはシンプルな銀のしおりと、万年筆だった。
確か、パーティーの時プレゼントをクロークに預けっぱなしだったとか言っていた。そうか、その頃から決めていたのか……。
確か、レーナへの誕生日プレゼントしてメイドが見つくろったのが銀細工の美しいしおりだったと言っていた気がする。
誕生日に贈られた物と同じ種類のものをプレゼントに贈り返すのはタブーである。
食べ物や花ならば違うが。物の場合は同じものを贈るという言葉は別の意味をもつ。
『貴方の気持ちはお受けできません』という断り文句になるからだ。
「そうか、そんな早くから君はもう決めていたのか」
隅に飾りがはいった銀のしおりの表面を指でなでた。
君といると、いつの間にか猫を被るのを忘れてしまうほど、思っていることをあけすけにぶつけるようになったのはいつからだろうか。
友くらいにはなれるかなと思ったが……ハッキリと振られてしまったな。
レーナがこの世界のタブーであることを知らずジークに同じものを贈り返したことをジークは知る由もなかった。
129
お気に入りに追加
13,572
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。