悪役令嬢はヒロインを虐めている場合ではない

四宮 あか

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人の恋路を応援している場合ではない

クソ

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 クソクソクソクソ。
 これ以上ないほど僕は苛立っていた。
「シオンすまない」
「いえいえ、ご無事でよかったですー」
 ジーク様からの謝罪にニッコリと笑って社交辞令で返す。

 治癒師の僕のミスだ。完全に確認不足だった。
 怪我がないかまず確認するのは初歩中の初歩だ、僕はそれを怠ったのだ。今この状況に陥ったのはそのツケである。


 ジーク様の肋骨が3本折れているのは手をかざしてみてすぐに分かった。
 このコンディションじゃおいそれと身体強化は使えなかったことだろう、いや使えるだろうけれど後々のことを考えると使わずに済むなら使わないほうがいい場面と言ったほうがいいかもしれない。

 他に回復できるメンバーはいない。だから本当に不本意だけど、レーナ様が下したシオンはジーク様につけという判断は4人で生き残るうえで間違ってない。


 ジーク様と二人での別行動はこれが初めてではない。でも安全だと判断しておいてきた前回と、この先何がでてくるかわからない状況で離れた今とでは全然違うのだ。

 崩落は続きどんどん足場がなくなり、後退するしかない。
 もう、合流が不可能だとわかる距離から恨めしげににらんだところでできることはない。フォルト様が抱えていたから巻き込まれて落ちたということは防げただろうけれどその安否があずかり知らないところで握られているのが何とも気に入らなかった。


 これからどうすればいいのか。
 肝心のレーナ様はちっとも強くもなければ、ただのついてない女のはずなのだ。
 なのに結局一番助けてほしいところで周りを巻き込んで動き、最終的に何とかしてしまう人なのだ。


 巻き込まれないようにと置いてきたのになぁ。
 どうしてここでまたこんなところで会っちゃうかな……。
 怪我の一つも絶対させたくなかったのに。


 合流が叶わない崩れた先をみて、柄にもなくどうかご無事でと神に祈った。
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