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人の恋路を応援している場合ではない
第31話 ロマンチック
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水路内をうろうろしたことがあるけれど、今回はなにか得たいの知れないことが起きていることで不安な気持ちになる。
ジークは指摘してこないが私はお化け屋敷を歩くようにずいぶんとノロノロと歩いていた。
ジークは怖くないのだろうか……チラリと様子を伺うけれど私とは違いビビってはいないみたい。
正直なところ手を繋ぐの? と思ったけれど今や握らせていただけることがありがたくなってきている。
鼻はすっかりなれてしまって、異臭は感じない。
スライムは全て倒してあるので出てくる心配はない。
水が流れる音だけがする。
「ねぇ、苦しくはない?」
私がそういうとジークはさっとハンカチで私の口を覆ってきた。
「んーんんんん! 違ーーーう」
口許のハンカチをひっぺがして抗議した。
「ガスでも貯まっているのかと思った。こんな時に紛らわしい」
「折れてるかもって言っていたから痛みや苦しかったりしないのかなと思ったの」
「私の怪我は大丈夫だ。ただ、出口が見つからないのは問題だ……逃げれないように土魔法で出入り口を潰したのかもしれない」
「あっ、私が魔力を使えばシオンかリオンが迎えに来てくれるかも」
そういえば、そんなGPS のような便利機能がついているのでした。
「何かあったときに手を引いて走るくらいは出来ても、今の私では君を抱き上げて運ぶことは出来ないから止めてくれ」
そうでした、折れているかもしれないのでした。
「ジーク様」
怖さを紛らわせるために話しかける。
「なんだいレーナ」
「手を繋ぎ二人きりで歩くなんてまるで恋愛小説のようですわね」
水路の淡い明かりに照らされたジークはスチルのようであった。
「臭くなければね」
その一言で全ては台無しになる。
彼と二人きりで手を繋いで歩く、水路の淡い灯りに照らされた彼に見惚れてしまうのではないかと思ったが、でも今いる場所は臭かったことを思いだし冷静になったという文ができてしまった。
「どうして、そのようなムードが一言で台無しになることを言うのですか」
「残念ながら真実だレーナ。鼻が麻痺した今はわからないが、着用している服は処分されるだろうし。私たちもそうとう臭うことだろう」
私本体も臭いが染み付いて臭いだと……。
「あーもう、今ので完全に全部台無しになりました」
「それは失礼」
「ジーク様は私がこのようにウキウキと楽しんでいるときに水をさすのはお止めください」
「万が一さらに盛り上がってキスの一つでもしたとしよう。水路から出て臭いを指摘されてみろ。一気に思い出す度に微妙な思い出になる……」
反論の余地もない。手を繋いで、キスをして、その時ふっとそういえばあの時臭かったんだったというのがチラついてしまうだろう。
以前アンバーでランタンを見上げたことを思い出した。
海を氷らせて足場を作り、海のど真ん中に立つジークに抱えられて見た景色は美しかった。
空だけではなく、水面も見事だった。そういえばあの時はキスをしたのだった。
クライストにいた魔子こともあり、私との婚約を破棄されないために小説に寄せたのだろうか。
それにしても、確かに思い返してみるとロマンチックだったしかでてこない。
「おみそれいたしました……」
思わず私はジークに頭を下げた。
「何に!?」
「ジーク様のことを誤解しておりました。私は目先のことに踊らされていました。後から思い返してみたときまで考えが及んでいませんでした。思い返せばマリアンヌとスチュアートも」
小説を思い出した。
「……あぁ、ニコル・マッカートの小説のヒロインと相手役か」
すぐにニコル・マッカートの小説と気づく辺りジークも本当は現実的な感想を言ってくるけれどフィクションとして楽しんでいるのかもしれない。
「マリアとエドガーをいい雰囲気だと思い込もうとしておりました。でも、悪役令嬢がスチルに入り込んだり。ロマンチックではないセリフを言ってないということはロマンチックではないのです」
「何が言いたいのか全くわからないのだが、なぜそんなにエドガーとマリアの仲が深まるのを望むんだい? 人様の恋愛を小説のように楽しみたいならもっと眺めていて適任がいるだろうに。そもそも君とエドガーとマリアではほとんど接点らしいものもなかったんじゃないか」
ジークに指摘されて私自身あまりにも執着しすぎたことに気がついた。
ゲームをプレイしているのでこちらの世界ではマリアは私の婚約者にちょっかいかけんじゃないわよ! と呼びだしたくらいの接点だったし。
エドガーに至ってはレーナとの接点はこれまで一切なかった。
私のすぐ傍には、凛とした美しさといいおっぱいのアンナとほわっとした癒し系で可愛らしいけど胸もあるミリーがいた。
3人でこれまで恋話やイケメン情報についても沢山話してきたのだ。
私の一番身近にいる二人に婚約者がいないことも私は知っていた。
なのに私が執着したのは、友人であるアンナでもミリーでもなく。
このゲームのヒロインであるマリアと攻略対象者の一人エドガーの恋の行方だった。
「あれ……。私なんでマリア様とエドガー様だったのでしょうか?」
疑問に思い始めると、私が自分の意思ではない強い意志のせいで勝手に執着して動いていたような気がしてホンの少しだけゾクリとした。
「それは私が君に質問したんだが……」
あきれ顔で見つめられてしまう。
ジークは指摘してこないが私はお化け屋敷を歩くようにずいぶんとノロノロと歩いていた。
ジークは怖くないのだろうか……チラリと様子を伺うけれど私とは違いビビってはいないみたい。
正直なところ手を繋ぐの? と思ったけれど今や握らせていただけることがありがたくなってきている。
鼻はすっかりなれてしまって、異臭は感じない。
スライムは全て倒してあるので出てくる心配はない。
水が流れる音だけがする。
「ねぇ、苦しくはない?」
私がそういうとジークはさっとハンカチで私の口を覆ってきた。
「んーんんんん! 違ーーーう」
口許のハンカチをひっぺがして抗議した。
「ガスでも貯まっているのかと思った。こんな時に紛らわしい」
「折れてるかもって言っていたから痛みや苦しかったりしないのかなと思ったの」
「私の怪我は大丈夫だ。ただ、出口が見つからないのは問題だ……逃げれないように土魔法で出入り口を潰したのかもしれない」
「あっ、私が魔力を使えばシオンかリオンが迎えに来てくれるかも」
そういえば、そんなGPS のような便利機能がついているのでした。
「何かあったときに手を引いて走るくらいは出来ても、今の私では君を抱き上げて運ぶことは出来ないから止めてくれ」
そうでした、折れているかもしれないのでした。
「ジーク様」
怖さを紛らわせるために話しかける。
「なんだいレーナ」
「手を繋ぎ二人きりで歩くなんてまるで恋愛小説のようですわね」
水路の淡い明かりに照らされたジークはスチルのようであった。
「臭くなければね」
その一言で全ては台無しになる。
彼と二人きりで手を繋いで歩く、水路の淡い灯りに照らされた彼に見惚れてしまうのではないかと思ったが、でも今いる場所は臭かったことを思いだし冷静になったという文ができてしまった。
「どうして、そのようなムードが一言で台無しになることを言うのですか」
「残念ながら真実だレーナ。鼻が麻痺した今はわからないが、着用している服は処分されるだろうし。私たちもそうとう臭うことだろう」
私本体も臭いが染み付いて臭いだと……。
「あーもう、今ので完全に全部台無しになりました」
「それは失礼」
「ジーク様は私がこのようにウキウキと楽しんでいるときに水をさすのはお止めください」
「万が一さらに盛り上がってキスの一つでもしたとしよう。水路から出て臭いを指摘されてみろ。一気に思い出す度に微妙な思い出になる……」
反論の余地もない。手を繋いで、キスをして、その時ふっとそういえばあの時臭かったんだったというのがチラついてしまうだろう。
以前アンバーでランタンを見上げたことを思い出した。
海を氷らせて足場を作り、海のど真ん中に立つジークに抱えられて見た景色は美しかった。
空だけではなく、水面も見事だった。そういえばあの時はキスをしたのだった。
クライストにいた魔子こともあり、私との婚約を破棄されないために小説に寄せたのだろうか。
それにしても、確かに思い返してみるとロマンチックだったしかでてこない。
「おみそれいたしました……」
思わず私はジークに頭を下げた。
「何に!?」
「ジーク様のことを誤解しておりました。私は目先のことに踊らされていました。後から思い返してみたときまで考えが及んでいませんでした。思い返せばマリアンヌとスチュアートも」
小説を思い出した。
「……あぁ、ニコル・マッカートの小説のヒロインと相手役か」
すぐにニコル・マッカートの小説と気づく辺りジークも本当は現実的な感想を言ってくるけれどフィクションとして楽しんでいるのかもしれない。
「マリアとエドガーをいい雰囲気だと思い込もうとしておりました。でも、悪役令嬢がスチルに入り込んだり。ロマンチックではないセリフを言ってないということはロマンチックではないのです」
「何が言いたいのか全くわからないのだが、なぜそんなにエドガーとマリアの仲が深まるのを望むんだい? 人様の恋愛を小説のように楽しみたいならもっと眺めていて適任がいるだろうに。そもそも君とエドガーとマリアではほとんど接点らしいものもなかったんじゃないか」
ジークに指摘されて私自身あまりにも執着しすぎたことに気がついた。
ゲームをプレイしているのでこちらの世界ではマリアは私の婚約者にちょっかいかけんじゃないわよ! と呼びだしたくらいの接点だったし。
エドガーに至ってはレーナとの接点はこれまで一切なかった。
私のすぐ傍には、凛とした美しさといいおっぱいのアンナとほわっとした癒し系で可愛らしいけど胸もあるミリーがいた。
3人でこれまで恋話やイケメン情報についても沢山話してきたのだ。
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なのに私が執着したのは、友人であるアンナでもミリーでもなく。
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「あれ……。私なんでマリア様とエドガー様だったのでしょうか?」
疑問に思い始めると、私が自分の意思ではない強い意志のせいで勝手に執着して動いていたような気がしてホンの少しだけゾクリとした。
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