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短編
面白くない
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本編でバレンタインスルーなのでif話。リオン編
一口で口に収まるほどの小さい粒となったチョコレートをレーナ様は特に気にいられたようでいろいろ試している。
チョコレートケーキではなく、チョコだけをそれはもう、毎日毎日毎日。
「ねぇ、リオン。リオンは料理が上手でしょう。チョコレートはつくらないの?」
医務室で気まぐれに開催されるお茶会で何気なくふられた会話。
レーナ様をはじめとしてご学友までワクワクとした眼差しで見つめられて、カップにお茶を足そうとした姿勢のまま固まってしまったのだ。
「いえ、チョコレートケーキでしたら粉末を利用して作ったことはありますが、今食べられているようなものは……」
わくわくとした瞳から光が失われた。
「そう、残念だわ」
そういって、入れ直したアツアツのお茶にふうふうと息をかけてレーナ様は飲み始める。
「そうでしたのね。チョコレートはなかなかの値段がしますから。気にしないで」
私から完全に興味を失って、私が作ったクッキーに今日も手をつけずに、レーナ様はミリー様が持ってきたアーモンドの入ったチョコレートに手を伸ばした。
アンナ様がいつものように、興味がそれてしまって話をぶったぎったレーナ様のフォローとしてそう言った。
なんだろうこの得体の知れない感情は。
たかが菓子の一つだ。俺の作ったクッキーはレーナ様は本日は手をつけずに、チョコレートばかり食べているけれど。アンナ様とミリー様はいつも通り2つほどつまんでいる。
面白くない。
面白くないのだ。
主が俺が作った菓子に一つも手を伸ばさないことがものすごく面白くないのだ。
それほどまでに、目の前に並ぶチョコレートはおいしいのかと思うけれど、コレ一粒がいくらするのか考えると怖くて、『一つ拝借してみても』などとは口が裂けても言えない。
本日4粒目のチョコレート、今度は中にフルーツや野菜のジュレが入っている物らしいにレーナ様は手を伸ばす。
アンナ様やミリー様がレーナ様にお勧めするのをきいて、一粒も食べていないのにチョコレートに詳しくなってきた。
チョコレートはおそらくチョコレートケーキの比ではないほど甘いのだろう。その証拠に、俺が作る甘いものにはレーナ様は手を伸ばさないが、塩をきかせたアーモンドを炒った物なんかにはよく手を伸ばされている。
今日こそはチョコレートよりも私が作ったものに手をつけられるのではと、あれこれ作ってみたものの惨敗。女子生徒の話によると、レーナ様が一口で召し上がるチョコレートはものすごく高カロリーらしく。おそらくだが、カロリー計算をしているため、私の物に手を出さないに違いない。
作ったものを口にしてほしい。
おいしいと言ってほしい。
どうして今日も手を伸ばしてくださらないのか……。
レーナ様に恋心などは先に言っておくが微塵もない。だけど今完全に自分を支配してる感情がチョコレートに対しての嫉妬だということはわかる。
「あっ、レーナさま。そちらはレーナさまの苦手なビターなものでございます」
ミリー様の制止は少し遅く、レーナ様がビターなチョコレートを手に取ってしまった。
「えっ、あら。でも手に取ってしまったわ……」
高カロリーだが、手に触れた物を戻すわけにはいかないから、口に合わずともあのチョコレートを食べるのだ。
おいしいと思って食べるものではない、口に合わないのに私の菓子よりもそのチョコレートを口に含むにちがいないのだ。
ペーパーナプキンに結局包んでレーナ様は苦手な味のチョコレートに手をつけなかった。
お茶会は終わり、3人が医務室を後にした。
テーブルに並んだ、アフタヌーンティーセットを解体して洗う作業がこれから俺を待っている。
その時だ、医務室の扉が開けられレーナ様が戻ってきた。
「いかがいたしましたか?」
また厄介事ではと身構えるのはこの主がほんとうに次々と厄介な出来事を持ってくるせいだ。
「私が手に取ったものだけれどそれでもよければ食べていいですわよ。私はもっと甘味の強いものがこのみですから。ずっと物欲しそうに見ていたでしょう?」
ペパーナプキンからでてきたのは光沢の美しいチョコレートだ。
くれると言われても、これ一粒がいくらするかを考えるととてもではないが受け取れない。
「ほら、アンナとミリーを待たせてますの」
一向に受け取らなかったものだからしびれをきらした主がチョコレートを親指と人差し指で掴み此方に差し出してくるが。
受け取っていいものかどうか、悩んでいると。融点が低いようでチョコレートがレーナ様の体温で溶ける。
ビターとのことだが中にはシロップが入っていたようで、とけだしたチョコレートからシロップが溢れる。
「もう、リオンが早く食べないから!!」
レーナ様の口からそう声が溢れた。
叱責の言葉を受けると頭がじんじんとするのはなぜだろう。主が困っているのを何とかしなければと体が盟約により最善の動きを行う。
シロップが垂れないように下ろされた手元に膝をおり顔を近付けチョコレートを口に含む。
滑らかなチョコレートが口にいれるとほどけるかのようにとろける。
気がつけば汚れてしまわれた手に必死に舌を這わせて親指の付け根から手首までを丹念に舐めあげる。
甘いのはチョコレートのせいなのか。舌を這わせるのがたまらないのはレーナ様がチョコレートをあれほど食べ続けるのだからチョコレートには中毒性があるのだろうか。
もっと。
もっと、もっと、もっと。
とうにチョコレートがなくなった指を口に含んだその時、頬が叩かれた。
痛みよりも先に、先程ので指を噛んでしまってないか? が先に頭に浮かぶあたり俺はどうかしている。
一口で口に収まるほどの小さい粒となったチョコレートをレーナ様は特に気にいられたようでいろいろ試している。
チョコレートケーキではなく、チョコだけをそれはもう、毎日毎日毎日。
「ねぇ、リオン。リオンは料理が上手でしょう。チョコレートはつくらないの?」
医務室で気まぐれに開催されるお茶会で何気なくふられた会話。
レーナ様をはじめとしてご学友までワクワクとした眼差しで見つめられて、カップにお茶を足そうとした姿勢のまま固まってしまったのだ。
「いえ、チョコレートケーキでしたら粉末を利用して作ったことはありますが、今食べられているようなものは……」
わくわくとした瞳から光が失われた。
「そう、残念だわ」
そういって、入れ直したアツアツのお茶にふうふうと息をかけてレーナ様は飲み始める。
「そうでしたのね。チョコレートはなかなかの値段がしますから。気にしないで」
私から完全に興味を失って、私が作ったクッキーに今日も手をつけずに、レーナ様はミリー様が持ってきたアーモンドの入ったチョコレートに手を伸ばした。
アンナ様がいつものように、興味がそれてしまって話をぶったぎったレーナ様のフォローとしてそう言った。
なんだろうこの得体の知れない感情は。
たかが菓子の一つだ。俺の作ったクッキーはレーナ様は本日は手をつけずに、チョコレートばかり食べているけれど。アンナ様とミリー様はいつも通り2つほどつまんでいる。
面白くない。
面白くないのだ。
主が俺が作った菓子に一つも手を伸ばさないことがものすごく面白くないのだ。
それほどまでに、目の前に並ぶチョコレートはおいしいのかと思うけれど、コレ一粒がいくらするのか考えると怖くて、『一つ拝借してみても』などとは口が裂けても言えない。
本日4粒目のチョコレート、今度は中にフルーツや野菜のジュレが入っている物らしいにレーナ様は手を伸ばす。
アンナ様やミリー様がレーナ様にお勧めするのをきいて、一粒も食べていないのにチョコレートに詳しくなってきた。
チョコレートはおそらくチョコレートケーキの比ではないほど甘いのだろう。その証拠に、俺が作る甘いものにはレーナ様は手を伸ばさないが、塩をきかせたアーモンドを炒った物なんかにはよく手を伸ばされている。
今日こそはチョコレートよりも私が作ったものに手をつけられるのではと、あれこれ作ってみたものの惨敗。女子生徒の話によると、レーナ様が一口で召し上がるチョコレートはものすごく高カロリーらしく。おそらくだが、カロリー計算をしているため、私の物に手を出さないに違いない。
作ったものを口にしてほしい。
おいしいと言ってほしい。
どうして今日も手を伸ばしてくださらないのか……。
レーナ様に恋心などは先に言っておくが微塵もない。だけど今完全に自分を支配してる感情がチョコレートに対しての嫉妬だということはわかる。
「あっ、レーナさま。そちらはレーナさまの苦手なビターなものでございます」
ミリー様の制止は少し遅く、レーナ様がビターなチョコレートを手に取ってしまった。
「えっ、あら。でも手に取ってしまったわ……」
高カロリーだが、手に触れた物を戻すわけにはいかないから、口に合わずともあのチョコレートを食べるのだ。
おいしいと思って食べるものではない、口に合わないのに私の菓子よりもそのチョコレートを口に含むにちがいないのだ。
ペーパーナプキンに結局包んでレーナ様は苦手な味のチョコレートに手をつけなかった。
お茶会は終わり、3人が医務室を後にした。
テーブルに並んだ、アフタヌーンティーセットを解体して洗う作業がこれから俺を待っている。
その時だ、医務室の扉が開けられレーナ様が戻ってきた。
「いかがいたしましたか?」
また厄介事ではと身構えるのはこの主がほんとうに次々と厄介な出来事を持ってくるせいだ。
「私が手に取ったものだけれどそれでもよければ食べていいですわよ。私はもっと甘味の強いものがこのみですから。ずっと物欲しそうに見ていたでしょう?」
ペパーナプキンからでてきたのは光沢の美しいチョコレートだ。
くれると言われても、これ一粒がいくらするかを考えるととてもではないが受け取れない。
「ほら、アンナとミリーを待たせてますの」
一向に受け取らなかったものだからしびれをきらした主がチョコレートを親指と人差し指で掴み此方に差し出してくるが。
受け取っていいものかどうか、悩んでいると。融点が低いようでチョコレートがレーナ様の体温で溶ける。
ビターとのことだが中にはシロップが入っていたようで、とけだしたチョコレートからシロップが溢れる。
「もう、リオンが早く食べないから!!」
レーナ様の口からそう声が溢れた。
叱責の言葉を受けると頭がじんじんとするのはなぜだろう。主が困っているのを何とかしなければと体が盟約により最善の動きを行う。
シロップが垂れないように下ろされた手元に膝をおり顔を近付けチョコレートを口に含む。
滑らかなチョコレートが口にいれるとほどけるかのようにとろける。
気がつけば汚れてしまわれた手に必死に舌を這わせて親指の付け根から手首までを丹念に舐めあげる。
甘いのはチョコレートのせいなのか。舌を這わせるのがたまらないのはレーナ様がチョコレートをあれほど食べ続けるのだからチョコレートには中毒性があるのだろうか。
もっと。
もっと、もっと、もっと。
とうにチョコレートがなくなった指を口に含んだその時、頬が叩かれた。
痛みよりも先に、先程ので指を噛んでしまってないか? が先に頭に浮かぶあたり俺はどうかしている。
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