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私たちと市街地
第21話 名のある所へ
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見つからないで……胸元で手をぎゅっと握って私は目をつぶった。
私の周囲を歩く音がする。
ここから逃げたほうがいいのはわかる、だけど人間の私は逃げ切れるのか。
人間同士でも足の早いほうではない。
どうしたらいいんだろう。
私がシュカから離れたせいだと何度思っても、もう遅い。
今更ながら、弱い私が人間に不相応な力を得てしまったのだと実感する。
『しずく』
その時だ、シュカに呼ばれた気がした。
しかし、あたりを見回してもシュカはいない。
うろうろと私を探す得体のしれない者だけがいる。
都合のいい空耳だと知ってがっかりする。
どれくらいの時間がたったのだろう。
得体のしれない恐怖がそこにあることで、すごく時間の流れが遅く感じる。
お願い、私に気づかずここから去ってと願うのに、あいつは一向に諦めない。
「ほうれ……ほうれ……私に畏れて逃げれまい」
私がここにいることには確証があるようで、不気味な歌を歌い私を探す。
身体をなるべく小さくして、神社の植木にぴったりと張り付く。
誰か、他に人でもいから来てくれればと思うけれど、私達が妖怪探しをしていたのは、放課後だ。
夕暮れの迫る神社にやってくる人物などそうそういないことが私でもわかってしまう。
いつまで、この恐ろしいかくれんぼをしてればいいの。
ガタガタと震える体を必死に抑える。
シュカごめんなさい。助けて。
私が助けを求めたのはシュカだった。
「おる……おる……絶対に……」
ずるずると何か引きずる音がする。
「なぜ見えぬ……なぜ見えぬ……弱い身体に不相応な力……」
その言葉であいつが探しているのは私で間違いないと確信してしまう。
「おーい、こちらへ出ておいで。話をしよう」
急にあいつの声からノイズが切れてなめらかな人が話すような言葉になる。
そんなことを言われても、それでほいほい出ていくなんでこと流石に私は子供だけれどしない。
「お菓子を上げよう。それとも、金か男か? 私にかかれば思うがままよ」
そんなこと言われてついて行くわけがない。
学校の防犯訓練でも、お菓子をあげるとか言われても知らない人について言ったら駄目と口を酸っぱくして何度も言われている。
保育所の子だって、昨今はそんなベタなのに騙されたりなどしない。
「お前の心には、隙間がある。つらいんだろう? 苦しいんだろう? 叶わないんだろう? だから私は呼ばれたんだよ。出ておいで、大丈夫。怖くはない、ほんの少し眠るだけ、そうすればすべてがお前の望むがまま」
そんなことあるはずない。
心の隙間……私の叶わない願いは……シュカのことを……そんな風に頭によぎったその時だ。
「しずく、どこにいる?」
シュカの声だった。
その声が聞こえるとあの不気味な声がピタリとやんだ。
シュカだ! 来てくれた。
私はここ、ここにいるの。
声には出せないけれどそう心の中でつぶやいたその時だった。
「み……見つけ申した……見つけ申した……」
ばっと振り返ると、私の後ろにそいつがいた。
ざんばら頭に、ぎょろりとした大きな目。
身体は子供ほど小柄なのに、顔に深いしわがあり、老人のようで、ずるずると引きずる音の正体は、そいつが方手に持っていた枕だった。
ゆっくりとそいつの手が私の頭に伸びてきて。
「ひっ」
と息をのむ。
尻餅をついた状態で制服のスカートが汚れることも気にせず必死に手を前に伸ばし少しでも距離を取ろうと後ずさる。
「みみみみ……見つけ申した……見つけ申した……心の隙間埋めてやろう……埋めてやろう」
「シュ、シュカあぁぁああ」
大声で私はシュカを呼んだ。
その時だ。
「とう!」
私とぶきみなそいつの間にシュカがとび蹴りのポーズで割り込んできた。
「くちおしや……くちおしや……」
シュカの蹴りはあたらなくて、ザザーッとシュカは地面に滑り込むが、その勢いのまま器用に両手を地面についてバク転をしてシュカは体勢を整え。
「おーし、俺が相手だって……あれ」
そう言ったその先には、もうさっきの不気味な奴は消えていなかった。
さっきまでの張り詰めた空気がとけて、さわさわと木々が揺れる音、日が暮れて鳥たちが鳴きながら帰る声が一気に聞こえ始める。
「逃げ足速すぎない? っとしずく、ごめん待たせた」
あたりをきょろきょろと見まわして、取り逃がしたことを悟ったシュカはそういうと、ニカッと笑って尻餅をついたままの私に手を差し出してきた。
ホッとした私はシュカの手を握った。
握ったシュカの手が暖かくてほっとする、シュカは「よっ」というと私の手を引っ張り起こすと、私のスカートについた土ぼこりをぱんぱんっと掃ってくれるけど、そこお尻!
「それは自分でやるから」
そういって自分でパンパンッとお尻の土ぼこりを払った。
「心配したんだけど。俺が来なかったらほーんと危なかったんだからね。俺の声が聞こえたことで安心して術を解いたんだろけど」
そういって私の眉間を押された。
そう言われても術とかなんのことかわからない。
「おい、ぬらりひょん。人間の童はいたか?」
しばらく会わなかったら、私の呼び方がしずくから、人間の童に戻ってしまった風月が現れて、その後ろからびくびくと辺りをうかがいながらゆっくりとやってくるちなみちゃん。
「おー、二人とも発見発見。ちょうど術をといて俺の名前呼んだからすぐにわかってセーフだったわ。二人には意味わかるよね?」
「やはりか、ろくろっ首が途中で絶対にこれ以上は進めないとごねたからまさかと思ったが……」
「うぅ……この辺りをずいぶんとうろうろしていたみたいですね。辺り一面にまだ嫌な感じが残ってます……」
そう言ってちなみちゃんはぶるっと震えた。
私の周囲を歩く音がする。
ここから逃げたほうがいいのはわかる、だけど人間の私は逃げ切れるのか。
人間同士でも足の早いほうではない。
どうしたらいいんだろう。
私がシュカから離れたせいだと何度思っても、もう遅い。
今更ながら、弱い私が人間に不相応な力を得てしまったのだと実感する。
『しずく』
その時だ、シュカに呼ばれた気がした。
しかし、あたりを見回してもシュカはいない。
うろうろと私を探す得体のしれない者だけがいる。
都合のいい空耳だと知ってがっかりする。
どれくらいの時間がたったのだろう。
得体のしれない恐怖がそこにあることで、すごく時間の流れが遅く感じる。
お願い、私に気づかずここから去ってと願うのに、あいつは一向に諦めない。
「ほうれ……ほうれ……私に畏れて逃げれまい」
私がここにいることには確証があるようで、不気味な歌を歌い私を探す。
身体をなるべく小さくして、神社の植木にぴったりと張り付く。
誰か、他に人でもいから来てくれればと思うけれど、私達が妖怪探しをしていたのは、放課後だ。
夕暮れの迫る神社にやってくる人物などそうそういないことが私でもわかってしまう。
いつまで、この恐ろしいかくれんぼをしてればいいの。
ガタガタと震える体を必死に抑える。
シュカごめんなさい。助けて。
私が助けを求めたのはシュカだった。
「おる……おる……絶対に……」
ずるずると何か引きずる音がする。
「なぜ見えぬ……なぜ見えぬ……弱い身体に不相応な力……」
その言葉であいつが探しているのは私で間違いないと確信してしまう。
「おーい、こちらへ出ておいで。話をしよう」
急にあいつの声からノイズが切れてなめらかな人が話すような言葉になる。
そんなことを言われても、それでほいほい出ていくなんでこと流石に私は子供だけれどしない。
「お菓子を上げよう。それとも、金か男か? 私にかかれば思うがままよ」
そんなこと言われてついて行くわけがない。
学校の防犯訓練でも、お菓子をあげるとか言われても知らない人について言ったら駄目と口を酸っぱくして何度も言われている。
保育所の子だって、昨今はそんなベタなのに騙されたりなどしない。
「お前の心には、隙間がある。つらいんだろう? 苦しいんだろう? 叶わないんだろう? だから私は呼ばれたんだよ。出ておいで、大丈夫。怖くはない、ほんの少し眠るだけ、そうすればすべてがお前の望むがまま」
そんなことあるはずない。
心の隙間……私の叶わない願いは……シュカのことを……そんな風に頭によぎったその時だ。
「しずく、どこにいる?」
シュカの声だった。
その声が聞こえるとあの不気味な声がピタリとやんだ。
シュカだ! 来てくれた。
私はここ、ここにいるの。
声には出せないけれどそう心の中でつぶやいたその時だった。
「み……見つけ申した……見つけ申した……」
ばっと振り返ると、私の後ろにそいつがいた。
ざんばら頭に、ぎょろりとした大きな目。
身体は子供ほど小柄なのに、顔に深いしわがあり、老人のようで、ずるずると引きずる音の正体は、そいつが方手に持っていた枕だった。
ゆっくりとそいつの手が私の頭に伸びてきて。
「ひっ」
と息をのむ。
尻餅をついた状態で制服のスカートが汚れることも気にせず必死に手を前に伸ばし少しでも距離を取ろうと後ずさる。
「みみみみ……見つけ申した……見つけ申した……心の隙間埋めてやろう……埋めてやろう」
「シュ、シュカあぁぁああ」
大声で私はシュカを呼んだ。
その時だ。
「とう!」
私とぶきみなそいつの間にシュカがとび蹴りのポーズで割り込んできた。
「くちおしや……くちおしや……」
シュカの蹴りはあたらなくて、ザザーッとシュカは地面に滑り込むが、その勢いのまま器用に両手を地面についてバク転をしてシュカは体勢を整え。
「おーし、俺が相手だって……あれ」
そう言ったその先には、もうさっきの不気味な奴は消えていなかった。
さっきまでの張り詰めた空気がとけて、さわさわと木々が揺れる音、日が暮れて鳥たちが鳴きながら帰る声が一気に聞こえ始める。
「逃げ足速すぎない? っとしずく、ごめん待たせた」
あたりをきょろきょろと見まわして、取り逃がしたことを悟ったシュカはそういうと、ニカッと笑って尻餅をついたままの私に手を差し出してきた。
ホッとした私はシュカの手を握った。
握ったシュカの手が暖かくてほっとする、シュカは「よっ」というと私の手を引っ張り起こすと、私のスカートについた土ぼこりをぱんぱんっと掃ってくれるけど、そこお尻!
「それは自分でやるから」
そういって自分でパンパンッとお尻の土ぼこりを払った。
「心配したんだけど。俺が来なかったらほーんと危なかったんだからね。俺の声が聞こえたことで安心して術を解いたんだろけど」
そういって私の眉間を押された。
そう言われても術とかなんのことかわからない。
「おい、ぬらりひょん。人間の童はいたか?」
しばらく会わなかったら、私の呼び方がしずくから、人間の童に戻ってしまった風月が現れて、その後ろからびくびくと辺りをうかがいながらゆっくりとやってくるちなみちゃん。
「おー、二人とも発見発見。ちょうど術をといて俺の名前呼んだからすぐにわかってセーフだったわ。二人には意味わかるよね?」
「やはりか、ろくろっ首が途中で絶対にこれ以上は進めないとごねたからまさかと思ったが……」
「うぅ……この辺りをずいぶんとうろうろしていたみたいですね。辺り一面にまだ嫌な感じが残ってます……」
そう言ってちなみちゃんはぶるっと震えた。
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