喫茶アジフライ

四宮 あか

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オカルトボーイ 寺島 たくと

第3話 幽霊屋敷編

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 10持ってきた噂話も、もしもしおばさんを含めて残り一つとなっていた。
 お金が増える不思議なスーパーの話は面白かったが、レジ打ちを担当したおそらく新人はレジの金額が合わず大変な目にあったことだろうと思う程度で、後の話はしょせん子供が持ってくる話の域を出ていなかった。

 葉山のじいさんはすでに今日は面白い話は出ないと諦め気味で、残り少なくなったアイスブレンドをちびちびと飲む。
 寺島たくとはいつもとっておきを一番最初にだすのはお決まりである。
 今回は『もしもしおばさんの話』が彼のとっておきだったのだと思う。

 この街にいる子供に在宅確認をしたのか、他の家にもかかってきているが電話にその時間出れる人物がいなかったのかその真相はわからない。
 さて私もそろそろ普通のオレンジクリームを作りますかと席を立ったとき寺島たくとは最後の噂話を話し出した。


「この街に幽霊屋敷って子供たちに呼ばれてる家があるの知ってるか?」
「しのぶちゃん知ってる?」
 葉山のじいさんはすでに投げやりな感じでこちらに話題を振る。
 私は私ですでにキッチンのほうに向かい、オレンジジュースを絞るべくどのオレンジにするかを籠の中に入ったオレンジの中から吟味していた。
「いえ、知りませんね」
「あの、ほらこの街のちょっと外れの三丁目の角のゴミ捨て場の近くに立ってる2階建てで庭もちょっとある家だよ!」
「あぁ~。分譲のとこの」
 私にはわからなかったけれど、葉山のじいさんにはその具体的な場所がわかったようだ。

 オレンジを手に取るのをやめて、ここらの地図を手にした私はしょせん子供の噂と思いながらもその中に紛れ込むほんの少しの本物の可能性にかけて地図を開いて見せる。

「ほら、ここだよここ。10年前まではこの辺はまだ畑や田んぼで家なんか一つも立ってなかったんだよ。それがここ10年でポンポンといくつか家がたったうちの一つだな。そういや、この家の周りはまだ家が数件しか立ってなくて、ちょうどこの家の両隣りも後ろもまだ建設されてない更地なんだよ」
「出るんだって。厳密に言うとこの家の周りか……。俺は実際にみたわけじゃないんだけど。出るらしいんだよ女の幽霊がさ」
「あそこ、地区が浅い家ばかりだし、周りにうっそうと木が生い茂ってるってこともないし、街灯も町内会がきちんと設置してるのに子供たちの間で本当にそんな話になってるのかい?」
「夜中に女の人のどなり声が聞こえるんだ」

「あぁ~。今日はハーゲンはなしだな」
 明らかに察した顔を葉山のじいさんはしたあとハーゲンのなしを告げた。
「どういうことですか?」
 私がどうしてかと聞き返すと、『子供の前で話していいのかな。まぁ、この辺住んでれば有名だしいいか~』と
何とも軽い感じで話をし始めた。


「家を買った後にどうも旦那さん浮気したのがばれたみたいなんだよね。それで、結構な頻度で派手目な夫婦喧嘩があったらしいんだよ」
「なるほど。ということは」
「幽霊屋敷の話は浮気に対しての夫婦喧嘩を聞いた人がいたで完結かな」
 葉山のじいさんはそういって締めくくる。


 私は再びキッチンにたち、オレンジを絞り一リットル398円の特売のアイスをカポンとした。
「450円。普通のオレンジクリームです」
「クソクソクソクソ」
 そう言いながらも、寺島 たくとは悔しげにオレンジクリームを流し込んだ。



 寺島 たくとが再びやってきたのは3日後のことだった。
 天気は晴れにも関わらず、その表情には怯えがあった。
 さて、沢山ある偽物の中からようやく本物を彼は引き当てたようだ。
「姉ちゃん……相談したいことがあるんだ。あっ、でもお金はこの前オレンジクリーム飲むのに使っちゃったから200円くらいしかないんだけど」
「あら、今日は面白い話じゃないの?」
「うん、俺呪われたかもしれない」
 その目には涙が浮かんだ。


 さて、本業の始まりである。


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